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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか?
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。
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前の記事「有名大卒お笑いタレントの漫才が面白くない理由は前頭葉の働きにある/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(22)」はこちら。
前例踏襲や思い込みをやめる
感情のコントロールを司る前頭葉は、前例踏襲の作業をやっている限りは働かないとされています。一方で、不確定なことや予測不能なものにトライしているとき、あるいは未知の体験を行うときに前頭葉が活発に動きます。新しい作業を行うと、慣れて次第にスピードが速く行えるようになっていきますが、次第に脳の働く場所は前頭葉から頭頂葉や側頭葉に移っていきます。
いわゆるルーティンワークを行うときには、頭頂葉や側頭葉を使っているのです。そのショートカットが起こることで、仕事は速くなりますが、前頭葉を動かさなくなります。ですから、前例にならって安住してしまうと前頭葉は働きません。
人間はややもすればラクをしたがる生き物です。不確定なことや予測不能な事柄に対処するとき、あるいは未知の体験を行うときには、ある程度の苦労を伴います。多少のストレスはかかるでしょうし、あまり長い時間、頭を使い続けると、頭の中も疲れてぐったりし、何も考えられないという状態になることがあります。
しかし、そうして頭を使ってこそ脳は活性化されるのですから、多少のストレスや脳の疲れは、脳の鍛錬になっているとも言えます。
今までと同じ作業を繰り返すことはワンパターンと皮肉られそうですが、時間の短縮になりますし、ストレスも少ないですから、ラクといえばラクです。
しかし、ラクであればあるほど脳は休んでいる状態ですから、衰えが促進されるというわけです。
前頭葉を働かせるために、あえて新しいことを体験することです。中高年になってくると、新しい経験をすることが減っていきます。仕事では新しいことと言えば、新しい部下が入ってくるということぐらいで、仕事の内容の目新しさは減少するでしょう(今は、必ずしもそうは言えないようですが)。
しかし、考えようによっては仕事の中で新しさを体験することはできます。たとえば、座ってやっていた会議を立って行ってみる、新しいデジタルツールを使ってみる、いつもの打ち合わせの場所を変えてみるといったことです。
それから、自分が賢いと思わないことも大切です。職場でベテランになっていけば、周囲には自分に意見してくれる人がだんだん少なくなっていきます。また、地位が上昇すればするほど周りは従順な人ばかりになっていきますので、ついつい自分は賢いと思ってしまいがちです。すると、勉強不足になりかねません。
どんなに有名大学を出た秀才でもその後の勉強を怠ったために、パッとしない人生を送っている人はたくさんいます。自分は賢くない、だから一生勉強するのだと思って新しいことに挑戦し続けられる人が、仕事でもプライベートでも充実しているのではないでしょうか。
勉強というと堅苦しいのですが、要は「それっておもしろい!」「もっと知りたい!」という好奇心を持ち続けることです。好奇心は刺激すればするほど高まります。まだ好奇心が残っているうちに、その芽を育てていくべきです。
次の記事「仕事一筋人間より"ラーメンに異常に詳しいサラリーマン"のほうがいい/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(24)」はこちら。
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。
『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』
(和田秀樹/KADOKAWA)感情の不調は"脳"で治す! 医師にしてベストセラー作家が教える、誰でもできる習慣術。「笑い」を解放することが前頭葉を刺激する、「"こだわり"にこだわらない」がポイント、競輪競馬やゴルフ、マラソンの向上心は脳にいいなど、脳科学や心理学の知見によって得られた「効果のある」「実践的な方法」を一挙に紹介!