50代以降の女性に多い「良性発作性頭位めまい症」とは? 起床後と就寝前の「寝返り体操」でセルフケア

50代以降の女性に多いことから、加齢による女性ホルモンの低下が関係していると考えられている良性発作性頭位めまい症。自然治癒することも多いですが、再発する恐れもあるので、症状が現れたら早めに耳鼻科での受診を! 今回は、東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療科長/教授の小川恭生(おがわ・やすお)先生に「良性発作性頭位めまい症」についてお聞きしました。


主な要因
加齢によるエストロゲンの低下
睡眠時の頭の位置が低い

主な対処法
浮遊耳石置換法
薬物療法
運動療法

どうやって起こる?

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「良性発作性頭位めまい症」は、頭を動かしたときに突然起こる回転性のめまいです。

下に挙げた症状があり、耳に原因があるめまいのなかで最も多い病気です。

耳は外耳、中耳、内耳からなり、内耳にある「三半規管」と「耳石器」という平衡器官が体のバランスを保つ働きを司っています(上図参照)。


こんな特徴がある

□じっとしているときは、めまいが起こらない。
発症例:寝返りを打ったとき、目薬をさす・洗濯物を干すなど上を向いたとき、靴を履こうとして下を向いたとき、美容院や歯科で横になったときなど。

□目が回るような回転性の激しいめまいが多い。
(吐き気や嘔吐を伴うことも)

□平衡感覚が失われて、よろめくような感じがある。

□朝起きたときに症状が出ることが多い。
(寝ている間に三半規管に耳石が落ちる)

□数秒から2~3分程度で症状が治まる。
(20分から半日程度続くのは「メニエール病」、数時間から何日も続くのは「前庭神経炎」「めまいを伴う突発性難聴」の疑いがある)

□めまい発作を何度も繰り返す。

□2~4週間で自然治癒することがある。

□耳鳴りや難聴などの症状は起こらない。

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意識障害、頭痛、手足のしびれ、物が二重に見える
→脳梗塞や脳腫瘍などの疑いがあるので要注意!


耳石器には耳石がありますが、何らかの原因で耳石が耳石器から剥がれて三半規管の中に入り込むと、三半規管内のリンパ液の流れが乱れて、めまいが起きてしまうのです。

聴覚を司る「蝸牛」に障害は起きていないので、難聴や耳鳴りなどの症状は出ません。

耳石が剥がれる原因は分かっていませんが、50代以降の女性に多いことから、加齢による女性ホルモン(エストロゲン)の低下が関係していると考えられています。

カルシウムの代謝障害、耳石周辺組織の劣化、骨密度の低下、リンパ液の成分構成の変化等が影響していると思われます。

眼球の動きで診断
脳との関連には要注意

2~4週間で自然治癒することも多いですが、再発する恐れもあります。

症状が現れたら早めに耳鼻科(できればめまい相談医、下記「お役立ち情報」参照)を受診します。

診断は問診や聴力検査の他に「頭位眼振検査」や「頭位変換眼振検査」の結果に基づいて行われます。

頭を動かし、眼球の動きを調べる検査です。

頭がどの位置に向いたときに異常が起こるのかを確認します。

通常、目が左右に動く様子が分かる「フレンツェルめがね」を使用します。

意識障害、頭痛、手足がしびれるなどの症状を伴う場合は脳に原因がある恐れがあります。

脳神経外科などで判別することが重要です。

治療で最も有効なのは浮遊耳石置換法です。

頭や体を動かして、耳石を耳石器に戻す方法です。

三半規管のうち、どの半規管に入っているか確認した上で、医師の指導の下に行われます。

耳石が三半規管から出れば、発作は起きません。

薬物療法は症状を和らげるために補助的に行われます。

吐き気止め、抗不安薬、抗めまい薬などを使います。


「寝返り体操」でセルフケア

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(1)あおむけの姿勢→(2)頭部のみ右を向く→(3)あおむけに戻る→(4)頭部のみ左を向く→(5)あおむけに戻る
※起床後と就寝前に寝床で、それぞれ10 秒ずつ、3 往復行う。

予防のポイント

同じ方向で横向きに寝ない
いつも同じ向きで頭を横にして寝ていると、下側の耳の三半規管に耳石がたまりやすくなる。横向きに寝た姿勢でテレビを見続けたりすることも控える。

頭の位置を高くして寝る
寝るときに頭を少し高くすると、耳石が三半規管に入りにくくなる。枕を高くしたり、上半身に傾斜をつけたりする。


上図の運動療法は耳石を散らしたり、元の位置に戻す効果があります。

耳石を三半規管に落とさない生活習慣も大切です(「予防のポイント」参照)。

骨粗鬆症も原因の一つに考えられています。

再発を繰り返す場合は、一度整形外科で骨密度を測ることをお勧めします。

適切な治療で、めまいの症状は改善します。

取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子

 

<教えてくれた人>

東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療科長/教授
小川恭生(おがわ・やすお)先生

1995年東京医科大学医学部卒業。同大学病院耳鼻咽喉科臨床研修医の後、ドイツで耳石器機能検査研鑽を積む。東京医科大学耳鼻咽喉科学講座講師、准教授を経て2015年より現職。

この記事は『毎日が発見』2022年7月号に掲載の情報です。

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