生きる上で欠かせない「食」。何をどう食べるかで脳の寿命が変わることが、さまざまな研究により分かってきました。認知症にならず健康な脳を保つために、毎日の食生活を見直してみましょう。脳科学者で分子生物学者の西 剛志(にし・たけゆき)先生に「脳寿命が短くなる理由」を教えてもらいました。
必要なのは正しい知識と正しい食べ方でした!
脳を働かせるために大切な「糖」。
しかし摂り方を誤ってしまうと、逆に認知症のリスクが高まることが分かってきています。
「大切なのは糖を摂らないようにすることではなく、適度に適切に摂るということ。実は糖尿病患者とその予備軍の人は、正常の人と比べて4・6倍も認知症のリスクが高まるといわれています。血糖値が急激に変化する『血糖値スパイク』を防ぎ、脳の海馬や大脳皮質の機能を維持するために、食べるべきもの・そうでないものを見極め、食生活を整えましょう。また、読書の習慣やコミュニケーションも大切です」(西先生)
食後の血糖値の上昇がゆるやかな食事が、脳寿命を延ばします!
脳寿命を延ばすためには、下で説明するような「悪循環な食生活」を改善し、血糖値をゆるやかに上昇させる食事を摂る必要があります。
まずはどんな食生活が脳にダメージを与えるのか、見てみましょう。
脳寿命が短くなる理由はコレ!
血糖値が上がりやすい食事を続けてしまうと、脳に思わぬ影響が。
糖尿病になっていないからと安心せず、未来を見据えて食生活を考えましょう。
1.加齢により脳内にゴミがたまりやすくなる
脳にとってのゴミのような存在の「アミロイドβ(ベータ)」が、加齢によって分解や排出がうまくいかなくなり、脳内にたまりやすくなる。
2.高GI食品を食べる
ご飯やパン、ラーメン、じゃがいも、大福など、糖質が多く血糖値が上がりやすい食べ物ばかりを好んで食べてしまう。
3.血糖値が急に高まり「血糖値スパイク」に
血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分泌され、その後血糖値が急降下します。この現象を「血糖値スパイク」といいます。
4.脳のゴミを掃除する酵素が、インスリンの分解に使われる
脳内のゴミを掃除する酵素は、実はインスリンを分解する酵素と同じ。「血糖値スパイク」
が起こると、酵素が全てインスリンの分解に使われてしまう。
5.脳が掃除されず、汚れたままになる
漢字が書けなくなった、名前が出てこない、同じ本を2冊買ってしまう...こんなことが増えたら要注意
本来なら取り除かれるはずのゴミが、掃除されずにどんどんたまり、常に汚れている状態が続き脳の機能が低下する。
6.アルツハイマー型認知症のリスクが上昇!
ゴミが脳に悪影響を及ぼす結果に。つまり「血糖値スパイク」を防げば、脳内で記憶を司る海馬や大脳皮質を健康に維持できるんです!
取材・文/和栗 恵 撮影/米山典子 イラスト/カトウミナエ