緑内障は見える範囲が狭くなる病気。ただし、少しぐらい視野が欠けていても自分では気が付かないのが厄介なところ。しかも進行していくと、失明の危険さえあります。今回は、二本松眼科病院 副院長の平松 類(ひらまつ・るい)先生に、「緑内障の最新知識」について教えてもらいました。
【前回】ご飯粒がお茶碗に残る...それは「視野」が欠け始めているのかも? 「緑内障」のリスクとチェック方法
【最新知識1】眼圧は日々変わります
緑内障は、高くなった眼圧が視神経を圧迫するなどして、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。
「治療は、眼圧を下げることで神経のダメージを減らし、視野が欠けるのを少なくします。しかし眼圧は、朝と夜、季節、睡眠などちょっとした変化で上がったり、下がったりするもの。また、眼圧は個人差があります。ですから、この数値なら大丈夫とは言えません。むしろ視野と視神経の変化が重要です」(平松先生)。
《正常眼圧=平均眼圧です》
眼圧の正常値は10~21mmHg程度といわれますが、正常値を超えても全く問題ない人もいれば、正常値内でも視神経が弱いために視野が欠けてしまう人もいます。正常眼圧は、あくまでも平均値と覚えておきましょう。
眼圧とは、「目の中の圧力」、つまり「目の硬さ」のこと。通常は目の中で一定量の水(房水)が作られ、それと同じ量が目から流れ出ることで、眼圧は一定に保たれています。この房水が排出されにくくなり流れが滞ると、眼圧が高くなり、視神経が圧迫されます。
【最新知識2】視野の欠けは気付きにくい
一般的に視野とは、両目で見て普通に見える範囲のことです。
しかし、少しぐらい視野が欠けても全く自覚症状はありません。
視野がだいぶ欠けてきてようやく「なんだか見づらい」と思うのが普通です。
これは、脳が視野の欠けを補って気付かないようにしてくれるため。
便利ですが、緑内障の早期発見には大きな妨げです。
先の「緑内障チェックシート」や緑内障の高リスクに該当した人は、視野検査を受けてください。
【視野検査とは?】
片方の目で「目を動かさない状態で見えている範囲」を調べる検査です。視野に欠損がある場合は、欠損の位置や程度を調べます。
《緑内障による視野障害のイメージ 》
視野が欠けるというと、黒い影が垂れ込めてくるイメージの方もいるでしょうが、実際は何
も感じない人が大半。次第に霞かすみがかかったようにモヤモヤとして見えにくくなります。
【最新知識3】眼圧検査だけでは×
緑内障の疑いがあるかどうかを知るには、先の視野検査の他に眼圧検査が必須。
加えて視神経や網膜など目の奥の状態を見る眼底検査やOCT(光干渉断層撮影)検査を行います。
検査で視神経が減った場所があり、それにほぼ一致して視野の異常が見られる場合、緑内障と診断されます。
その他、緑内障の種類を決めるには、隅角を観察する隅角検査が役立ちます。
これらの検査は、緑内障以外の目の病気の発見にも効果的です。
眼底検査
眼底カメラや眼底鏡で眼底(目の奥)を観察し、異常の有無を調べる検査。眼底は、体の中で唯一、外から血管や神経を観察できる部位です。
OCT(光干渉断層撮影)検査
赤外線を利用して、網膜の断面を測定し、網膜の厚みや視神経の状態を計測します。表面から見ても分からない異常を発見できます。
隅角検査
隅角鏡という専用のコンタクトレンズを着用し、眼圧を調整する液体である房水の出口である隅角の閉塞や開放の状態を調べます。
【最新知識4】目薬は正しいさし方で!
「治療は眼圧を下げる目薬が基本。思うような効果が得られない場合は、レーザー治療や手術を検討します。しかし、95%の人が正しい目薬のつけ方を知りません」と、平松先生。
目薬のさし方で特に大切なのは「目を軽く閉じて、目頭と鼻すじの間を押さえること」。
こうすることで、目→鼻→口へと薬が流れ出るのを防ぎ、効果も高まります。
2種類以上さす場合は一つ目をさしてから5分以上あけるか、時間をずらして使います。
《目薬はこうしてさしましょう》
1.手を石けんでよく洗う。
2.下まぶたを指で軽くひっぱり、目薬を1滴落とす。
3.目を軽く閉じて、目頭と鼻すじの間を30秒~1分ほど押さえる。
4.目からあふれた分はティッシュで拭き取る。
[こんなさし方はNG]
・目薬をさしてから、パチパチと何度もまばたきをする
・目薬を2滴入れる
・目薬の容器を下まぶたにつけて薬をさす
【最新知識5】視力1.0未満は近視、リスク高
「遠くを見たときの視力が1・0未満の人は近視の危険あり。近視の人は緑内障のリスクが高まります」と、平松先生。
そこで、近視の進行を遅らせる方法を伺いました。
下にある目のストレッチでは、「遠くを見ること」で目のピントを合わせる機能を高めることが期待できます。
6m先を見るのが難しい場合は、2mほど先を見てもかまいません。
近視ではない人も、目を使ったらストレッチを行うと目の健康維持に役立ちます。
《近視の進行を遅らせる目のストレッチ》
顔から30cmくらい先(近く)と、6m以上先(遠く)を交互に繰り返し見ます。見る対象物は何でもかまいません。まずは近くを10秒ほど見てから、遠くを10秒ほど見ます。10回繰り返しましょう。
【最新知識6】高血圧と睡眠時無呼吸症候群もご注意
緑内障を進行させる要因には、高血圧や睡眠時無呼吸症候群もあります。
寝ているときにいびきをかいていると指摘されたことがある人は、睡眠外来のある病院を受診して、寝ているときの状態を確認してください。
睡眠時に呼吸が止まると、眼圧が上がります。
高血圧の人は、血圧管理も重要です。
あわせて、眼科専門医のいる病院で検査を受けましょう。
専門医がいる病院は日本眼科学会(※)のホームページなどで見つけられます。
《もしも緑内障と診断されたら》
「他の病気の治療薬を飲んでも良いか」を主治医に確認しておきましょう。緑内障には種類があり、閉塞隅角緑内障の場合、風邪薬や鎮痛薬、抗ヒスタミン剤などを飲むと急性緑内障発作などを起こすこともあります。その他の緑内障では、ほとんどの薬は問題なく使用できます。
※日本眼科学会のホームページは、https://www.nichigan.or.jp
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/秋葉あきこ