目の周りを押すのはダメ! 再生医療、遺伝子治療など新たな「緑内障」の治療法も登場

緑内障は見える範囲が狭くなる病気。ただし、少しぐらい視野が欠けていても自分では気が付かないのが厄介なところ。しかも進行していくと、失明の危険さえあります。今回は、二本松眼科病院 副院長の平松 類(ひらまつ・るい)先生に、「緑内障の最新知識」について教えてもらいました。

【前回】視野の欠けは気付きにくい? 眼圧検査だけではNG!? 緑内障の最新知識/緑内障の最新知識

【最初から読む】ご飯粒がお茶碗に残る...それは「視野」が欠け始めているのかも? 「緑内障」のリスクとチェック方法

最新知識1】レーシック後は眼圧が下がりやすい

「緑内障は眼圧を測定して診断しますが、レーシック手術を受けた人の角膜は削って変形しているため、眼圧が低めに出て、正確な測定が難しくなります。正確な眼圧測定ができないと、緑内障の発症が見逃されてしまいます」(平松先生)。

眼圧検査や緑内障検査の際は、事前にレーシック手術済みであることを医師に伝えるようにします。

また、レーシック手術を受けたことのある人は、定期的に検査を受けることも大切です。

最新知識2】血流を良くすると目も良くなる

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体を動かすことは、目の健康にも役立つと平松先生。

「目にも無数の血管が通っています。血流を良くすることは目の病気の予防になります。週に3回、30分ほど軽い有酸素運動を行うといいでしょう。疲れ目の解消や眼圧の調整には、蒸しタオルで目を温めるのもいい」。

下の体操も血流アップに効果的。

「立ち上がったら体をねじる」「30分本を読んだら肩を回す」など、自分なりのルールを作って取り入れてみてはいかがでしょう。

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両肩に手をのせ、ひじ先で空中に大きく円を描くように腕を回す。前回し、後ろ回しを各10回。1日何セットでもOK 。

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足を軽く開いて立ち、両腕と両手の力を抜く。でんでん太鼓のように体を右へ、左へとねじり、手をぶらぶらさせる。

《外出先では》
両手を10回ほどこすり合わせて温め、手をカップ状にします。その手で、閉じた目を優しく包み込むように覆います。30秒~1分程度。

最新知識3】目の周りを押すのはダメ

目の血行を良くすることは目の健康維持に役立ちますが、目の周りのマッサージには注意が必要です。

「目の周りを強い力で押すと、眼圧が上がる原因になります。気持ちが良いかもしれませんが、力を入れて押すのは絶対にやめてください。目や顔、頭に刺激を与える際は、優しくなでる程度にしておきましょう」(平松先生)。

首から下のマッサージでは、眼圧が上がる心配はありません。

最新知識4】ほうれん草はたっぷりと。糖質、塩分は控えめに

「ほうれん草に含まれるルテインという成分は、目のダメージを防ぐのに効果的です」と、平松先生。

ルテインには抗酸化作用があり、目の細胞の酸化を防いでくれます。

ほうれん草なら1日2株を目安に摂取を。

ルテインは定期的に摂ると、次第に体に蓄積されていきます。

2週間ほど毎日食べ続けるとある程度の量がたまるので、その後は2~3日おきで十分。

「食生活では他に、塩分と糖質の摂り過ぎに注意をしてください」

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ルテインは油に溶けやすい性質をもちます。ほうれん草炒めやナムルにして油と一緒に摂るのがおすすめ。

[ルテインの豊富な食材]
・小松菜
・ケール
・モロヘイヤ
・ゴーヤ など

最新知識5】ゆったり呼吸で目もリラックス

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体の力を抜いて、ゆったりとした呼吸をすることも緑内障の予防や進行を遅らせることに有効です。

「目をつむって、吐く息と吸う息に気持ちを集中させます。すると、自律神経の一つである副交感神経が優位になって、眼圧の低下が期待できます」(平松先生)。

ゆったりとした呼吸は、1日5分を目標に、1分でもかまいません。

寝る前に布団の上でなど、行う時間を決めておきましょう。

毎日続けることが大切です。

最新知識6】再生医療、遺伝子治療 新たな治療法も!

新薬の開発をはじめ、新たな治療法も研究が進んでいます。

他の目の病気ではありますが、iPS細胞などの再生医療は、国内でもすでに実際の患者に使われています。

海外では、アデノウイルス(※)に遺伝子を入れたものを目に注射することで病気が改善するという遺伝子治療も行われています。

他にも、見えない人が見えるようになる投影メガネやコンタクトといった器具も。

近い将来、緑内障は治る病気になる可能性があります。

※アデノウイルスとは、目や腸、呼吸器などに感染症を起こす原因ウイルス。目では結膜炎を引き起こします。

取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/秋葉あきこ

 

<教えてくれた人>
二本松眼科病院 副院長
平松 類(ひらまつ・るい)先生
眼科専門医・医学博士。インターネット動画共有サービス・YouTube「眼科医平松類チャンネル」で目の情報を多数公開。『緑内障の最新治療 これで失明は防げる』(時事通信社)ほか、著書多数。

この記事は『毎日が発見』2021年11月号に掲載の情報です。

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