現在、日本でめまいやふらつきでつらい思いをしている人はなんと約300万人、そのうち女性は男性の約2.5倍もいるとされています。激しいめまいに襲われるとベッドで安静にする方が多いですが、長年「めまい改善訓練」を患者に教えてきた医師・新井基洋先生によると、実は「寝ているだけではめまいは治らない」のだとか。先生によると、「めまい」や「ふらつき」の原因の9割は「内耳の不調」にあり、その「内耳の不調」を改善する訓練が必要だと言います。そこで今回は、新井先生の著書『全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方』(毎日が発見)より、自分でできる「めまい・ふらつきの改善方法」を連載形式でお届けします。
【前回】女性に多い「良性発作性頭位めまい症」を体操で改善/めまい・ふらつきの治し方
【最初から読む】めまい・ふらつきは寝ていては治らない! 克服の鍵は訓練にあり!?/めまい・ふらつきの治し方
■ストレス関与別めまい疾患
「前庭神経炎」
[起きやすい年齢]40~60歳くらいの男女
内耳から脳に情報を伝える前庭神経に障害が起きることで発症。
グルグルと目が回り、周りの景色が流れて見え、体感震度8とも言われるとても激しい症状です。
この回転性のめまいは3日間から1週間くらい続くことも。
立ったり歩いたりもできず、横になっても激しいめまいがあり、目を開けることができない人もいるほどです。
発症時は身動きが取れないことも多く、入院治療となります。
メニエール病と違って、耳鳴りや難聴は起こりませんが、ふらつきが後遺症で残り(=前庭神経炎後遺症)、訓練が効果的です。
前庭神経のトラブルとは
内耳から脳にバランスの情報を伝える前庭神経に異常が発生し、めまいを発症。実際に前庭神経に炎症があるのではなく、その症状がまるで炎症が起きたように激しいためこの病名に。風邪を引いたあとに発症することもあるのでウイルスが原因という説も。
■ストレス関与別めまい疾患
「ラムゼイ・ハント症候群」
[起きやすい年齢]50~70歳くらいの男女
めまい、耳鳴りや難聴だけでなく、顔面神経マヒがあるのがラムゼイ・ハント症候群の特徴です。
この病気にかかると、耳痛や頭痛に加えて、耳に発疹ができ、水ぶくれやかさぶたができます。
子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが顔面神経に潜んでいて、免疫力や体力が低下すると再活性化することが原因です。
早期治療が重要ですので、初期症状が出たらすぐに耳鼻咽喉科へ。
治療は薬物療法が基本。
痛みが長く続き、顔面神経マヒ、難聴、ふらつきが後遺症として残ることも。
ふらつきには訓練が効果的です。
■ストレス関与別めまい疾患
「めまいを伴う突発性難聴」
[起きやすい年齢]30~60歳くらいの男女
ある日突然、何の前ぶれもなく、片方の耳が聞こえにくくなります。
難聴、耳鳴り、耳のつまり、激しい回転性のめまい、吐き気を伴うことも。
回転性の大きなめまいは、普通は1回しか起こらないと言われています。
その後、聴力が落ちた側の内耳機能の低下に伴い、めまいやふらつきの後遺症が残る場合は訓練が有効です。
治療には時間が勝負。
なるべく早く、発病から2週間以内に耳鼻咽喉科で治療を受けましょう。
厚生労働省の報告によると、1/3の人は回復し、2/3の人に難聴が残り、難病指定も受けている病気です。
■ストレス関与別めまい疾患
「加齢性めまい」
[起きやすい年齢]60歳以上の男女
このふらつきは、左右両側の軽度の内耳機能の低下(慢性ふらつき)により、ふらつきや揺れるめまいが起こります。
さらに、加齢による小脳の機能の低下や、筋力の低下なども大きな要因に。
超高齢社会が生んだ病気のひとつです。
一般の病院では「原因不明」とされますから、めまい専門医の受診が必須です。
直立姿勢や平衡を維持するには、バランスをつかさどる小脳の機能が十分でなければ難しいのですが、小脳の働きの低下は50代から始まり、加齢とともに加速するため、めまい改善訓練が必要です。