「ここはどこですか?」って、いつもの送迎バスですけど・・・/認知症の人が見ている世界

自分がはっきりとわかる時間や輝いていた場所・時間に戻っていることがあります

見当識障害とは、人・時間・場所がどこかを認識しづらくなることをいいます。

今が「いつ」なのか、目の前にいる人が「誰」なのか、ここが「どこ」なのかという認識が苦手になってしまうので、本人はとても不安や恐怖を感じています。

私たちはあたりまえのように、自分がどこにいるのか、今は何年何月何日なのかを認識しています。

スマートフォンには、位置情報を認識する「GPS機能」や時計の機能が備わっていますが、実は、私たちの脳にも同じような機能が備わっています。

しかし、認知症になると、その機能が低下して自分がどこにいるのかわからなくなってしまうときがあります。

その原因として、自分を実年齢よりも若いと思い込み、昔の世界に戻っていることが考えられます。

男性の場合、働き盛りだった30~40代に戻るケースが多いようですが、これは、認知症による不安を解消するために、自分がはっきりわかる時代や、元気で充実していた古きよき時期に戻るのではないかと推測されています。

このマンガでも、ご本人はバス通勤していた現役時代に戻っているので、デイサービスの送迎バスを通勤のバスだと認識しています。

実際には介護ドライバーがバスの乗り降りを介助しようとしていますが、ご本人の世界では、突然、通勤バスの運転手に話しかけられた状態にあるのです。

「バスから降りましょう」と手を差し出されても、不安を感じて混乱してしまいます。

みなさんも、目が覚めたときに、自分がどこにいるのかがわからないと、不安になって混乱すると思います。

こうしたケースでは、優しく「ここはデイサービスですよ」と説明すれば正しく認識してくれる可能性もありますが、大切なのは、安心できるように笑顔で声をかけ、ご本人の状態をよく見て話を聞くことです。

そうすると、ご本人が「どこにいるのか」「いつの時代にいるのか」を想像できることがあります。

その世界に寄り添い、認知症の世界と非認知症の世界のギャップが少なくなるように接していくことが大切です。

対応のポイント

●まずは安心してもらうために笑顔で話を聞こう。

●本人のようすをよく見て、相手がどのような場所・時間にいるかを想像しよう。

●認知症の世界と非認知症の世界のギャップが少なくなるように接しよう。

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【次回】「初めまして!」って孫よ!? お母さんどうしたの?/認知症の人が見ている世界

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認知症ケアに携わってきた著者が、実際に接してきた中で気づいたケーススタディがマンガでわかりやすく解説されています

 

川畑智(かわばた・さとし)
理学療法士、熊本県認知症予防プログラム開発者、株式会社Re学代表。熊本県を拠点に、病院や施設における認知症予防や認知症ケアの実践に取り組む。

 

遠藤英俊(えんどう・ひでとし)
聖路加国際大学病院臨床教授、元国立長寿医療研究センター長。認知症や医療介護制度などを専門とし、国や地域の制度・施策にもかかわりが深い。

 

浅田アーサー(あさだ・あーさー)
マンガ家。

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『マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界』

(著:川畑智、監修:遠藤英俊、マンガ:浅田アーサー/文響社)

認知症って、何もかもがわからなくなるわけではないの? 認知症の人が見ている世界を知り、「なぜ?」を解決できると、介護はもっとラクに。認知症ケアの第一人者がひも解いた、マンガでわかる介護メソッドです。

※この記事は『マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界』(著:川畑智、監修:遠藤英俊、マンガ:浅田アーサー/文響社)からの抜粋です。
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