日帰りでできて保険適用の最新治療。下肢静脈瘤が治る「グルー治療」とは?/下肢静脈瘤の治し方

「足に謎のボコボコができる」「青い血管がウネウネする」など下半身の見た目に大きく影響してしまう「下肢静脈瘤」。足の静脈の弁が壊れて起こる病気ですが、推定患者数は1000万人以上とされ、とても多くの方が悩んでいます。そこで、血管の病気に詳しい医師・広川雅之先生の著書『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』(毎日が発見)より、「下肢静脈瘤のセルフケアと最新治療」を連載形式でご紹介します。

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下肢静脈瘤の根本的な治療は
大きく分けて3種類

セルフケアで症状が改善しなかった方や、毎日、足のだるさやむくみ、こむら返りに悩まされていて早く解消したい方、また進行してうっ滞性皮膚炎を起こした方には根本的な治療を行います。

治療法は、血管内治療、硬化療法、手術の3種類です。

現在もっとも標準的な治療は血管内治療です。

患者さんの体への負担が小さく、日帰りで行うことができます。

のちほど詳しく紹介しますが、血管内治療には、血管を焼いて固める血管内焼灼術と、血管を接着させてふさぐグルー治療があります。

硬化療法は、静脈に薬剤を注入して固める治療法です。

比較的軽症の静脈瘤に対して行われます。

また、血管内治療の術後や再発した場合などにも行われます。

手術には、高位結紮術とストリッピング手術の2種類があります。

高位結紮術は、足の付け根を切開して血管をしばり、血液の逆流をせき止める方法です。

日帰りで行えるというメリットがありますが、再発が多く、最近ではあまり行われません。

ストリッピング手術は昔の標準的治療で、100年以上前から行われています。

血液が逆流している静脈を、器具で引き抜いて取り去る手術です。

入院が必要な場合があり、血管内治療に比べて若干、体への負担が大きくなりますが、治療する静脈が太い場合や曲がりくねっている場合に行われます。

下肢静脈瘤の治療数とその内訳

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上の表は、厚生労働省が発表した日本における下肢静脈瘤の治療数とその内訳です。

平成30年度で約75%が血管内焼灼術、さらにそのうち約74%が外来(日帰り)での治療となっています。

血管内治療には、血管を「焼く」または「くっつける」治療法がある

血管内治療は、静脈の中にカテーテルという細い管を入れて、血管の内側から治療を行う方法です。

治療の目的は、静脈をふさいで、壊れた弁による血液の逆流を止めることです。

静脈を焼いてふさぐ「血管内焼灼術」と、焼かないでふさぐ「NTNT治療(グルー治療)」があります。

血管内焼灼術は、血管を内側から焼いてふさぐ方法で、レーザーで焼く「レーザー治療」と、カテーテルに電流を流して焼く「高周波(ラジオ)治療」の2種類があります。

レーザー治療と高周波治療の治療効果は同じですので、どちらでも受診した医療機関で採用している方法でかまいません。

手術ではなく、細いカテーテルを入れる小さな穴を開けるだけなので、傷跡がほとんど残りません。

下肢静脈瘤の根本治療でありながら、痛みや皮下出血などの合併症が非常に少なく、患者さんの体への負担が少ないので、現在、標準的な治療法になっています。

入院の必要がなく、日帰りできる点も患者さんにとってメリットです。

治療後すぐに歩くことができますし、事務仕事や家事労働であれば翌日には通常の生活に戻ることもできます。

シャワーも可能です。

ただ、妊娠中の人や局所麻酔のアレルギーがある人、過去にエコノミークラス症候群を発症したことがある人などには適さないので注意が必要です。

もうひとつのNTNT治療とは、熱を使わずに血管をふさぐ治療法です。

従来の下肢静脈瘤の治療を根本から変える、画期的な治療法と期待され、欧米では普及が進んでいます。

グルー治療とは英語で糊(接着剤)を意味するglueから来ていて、NTNT治療のひとつです。

2019年12月に日本で健康保険が適用されました。

グルー治療で使用される接着剤は、シアノアクリレート系接着剤で、市販の瞬間接着剤とほぼ同じ成分です。

シアノアクリレート系接着剤の医療への応用は、ベトナム戦争の頃から50年以上の歴史があり、発がん性などの安全性は確立しています。

現在では、動脈の病気や皮膚の接着などに広く使われています。

血管内焼灼術に比べてグルー治療の優れている点は、局所麻酔が1カ所でよく、治療後の弾性ストッキングをはく必要がなく、治療後の生活の制限がほとんどないことです。

また、血管内焼灼術では、熱によって静脈周囲の神経が障害されて皮膚の感覚が鈍る場合がありましたが、熱を使わないグルー治療ではその心配がありません。

そのため、これまでは血管内焼灼術では治療がむずかしかったひざ下の大伏在静脈や、足首近くの小伏在静脈の治療が安全にできるようになりました。

また、グルー治療であれば治療当日からシャワーも可能です。

体を動かす仕事にもその日のうちに戻れるため、多忙な人に向いている治療法です。

下肢静脈瘤は、仕事や家事を長期間休めない忙しい人ほど症状が強く、重症化しやすいので、短期間に治療が終わるのは多くの人にとってメリットがあるといえるでしょう。

血管内治療のスケジュール

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最新の血管内治療~グルー治療とは~

グルー治療は、熱を使わずに、瞬間接着剤で血管をふさぐ治療法です。

2019年に日本で健康保険が適用となり、低侵襲治療(患者さんの体への負担が少ない治療)として普及しつつあります。

ひざの下に1カ所局所麻酔を行い、エコーで観察しながら静脈に細い針を刺します。

針から細いカテーテルを入れて、足の付け根まで進めます。

カテーテルにグルー(医療用の瞬間接着剤)を注入するためのディスペンサーガンをつなげて、静脈内にグルーを押し出します。

ディスペンサーガンを1回引くと、接着剤が0.1ml押し出されるしくみになっています。

カテーテルの先端が深部静脈から5cm離れた位置にあることをエコーで確認したら、ディスペンサーガンの引き金を引き、1cm間隔で2カ所に接着剤を注入します。

同時にエコープローブというエコー機器の患者さんの体に当てる部分と手で皮膚の上から3分間圧迫します(下図参照)。

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その後は3cmごとの接着剤注入と30秒間の圧迫を繰り返し、カテーテルの挿入部から5cm手前で最後の注入をしてカテーテルを抜けば終了です。

弾性包帯を巻く必要はなく、絆創膏を貼るだけです。

使用する接着剤の量は、平均で1~2mlと、ごく少量です。

グルー治療が優れている点はいくつかあります。

まずは血管内焼灼術のように、広い範囲に局所麻酔を行う必要がないこと。

また、術後に弾性ストッキングを着用する必要もなく、運動や生活の制限がほとんどないのもメリットです。

治療当日から軽い運動をしたりお酒を飲んだり、仕事に戻ったりもできるなど、患者さんの負担が少なくてすむのです。

次に、合併症の心配が少ないことです。

血管内焼灼術の場合、静脈のまわりへの熱の影響で、神経障害が起こることがあります。

グルー治療は熱を使わないので、静脈のまわりへの影響がほとんどありません。

グルー治療の合併症としては、治療後1~2週間後に治療した部位の皮膚に赤みや腫れの出る静脈炎を起こす人がいて、痛みやかゆみがともなうことがあります。

原因は体内に異物が入ったことによる反応で、通常1~2週間で自然におさまります。

ただし、ごく一部の静脈炎は遅延型アレルギーによる場合があります。

重篤な場合はステロイド薬の内服や、注入したグルーの切除が必要になります。

そのため、接着剤や接着剤の分解産物であるホルムアルデヒドのアレルギーのある人はグルー治療の対象外となります。

まつ毛エクステンションに使用する接着剤でアレルギーを起こした人や、シックハウス症候群、化学物質過敏症の人がそうです。

また、グルー治療は高額な治療機器が必要ないことから、トレーニングを受けた医師がいれば、レーザーや高周波治療装置を持っていない医療機関でも治療を行うことができます。

これまでは血管内治療が行える医療機関は大都市に限られていましたが、グルー治療であれば、全国どこでも治療を受けられるようになるのです。

【まとめ読み】『下肢静脈瘤の治し方』記事リスト

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命にかかわる病気? 血栓がとぶ? 手術しないと治らない? など下肢静脈瘤への疑問が解決します。

 

広川雅之(ひろかわ・まさゆき)
1962年、神奈川県生まれ。お茶の水血管外科クリニック院長、東京医科歯科大学血管外科講師、医学博士、外科専門医、脈管専門医。高知医科大学卒業後、ジョーンズホプキンス大学医学部留学、東京医科歯科大学血管外科助手などを経て現職。東京医科歯科大学血管外科で静脈の病気を専門として診療を行い、内視鏡的筋膜下穿通枝切離術(99年)、日帰りストリッピング手術(2000年)、血管内レーザー治療(02年)など、下肢静脈瘤の新しい治療法の研究・開発を行っている。

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『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』

(広川雅之/毎日が発見)

長年、下肢静脈瘤を治療してきた名医が、治し方をやさしく解説します。すべての患者に薦めるという「1分体操」をカラー写真で分かりやすく紹介。保険治療となった日帰りの「最新手術法」も詳しく掲載しています。

※この記事は『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』(広川雅之/毎日が発見) からの抜粋です。
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