健康寿命を延ばすためには、日々の運動が大事。実はいま、健康志向の中高年のあいだで、ひそかなブームになっている運動があります。それが「ヒップホップダンス」です。
ストリート系の若者が好むヒップホップですが、そのイメージに反して、ミドル・シニア世代が運動に取り入れやすい理由があります。ヒップホップダンスを踊っているシニアは、身体機能が改善されるという調査結果もあり、科学的にも注目されています。ヒップホップダンスと中高年の、意外な相性のよさを見ていきましょう。
自由なスタイルで踊れるのが人気の秘訣
「身体を動かしたいけど、いかにもシニア向けの体操プログラムは気が乗らない」「どうせなら、今どきの若々しい曲で踊りたい」。そんな元気いっぱいのミドル・シニア世代におすすめなのが、ヒップホップダンスです。実際、シニア向けの講座がキャンセル待ちになるなど、すでに中高年のあいだでも人気のある運動ジャンルになっています。
ヒップホップは、ほかのダンスミュージックに比べるとテンポが遅め。ほどほどの速さで「ノる」ことができます。そして、ビートと呼ばれる低音のリズムのおかげで、自然に身体を動かしやすくなっています。
さらに、ヒップホップ文化は、決まった型をなぞるよりも「自由に、自分らしく表現すること」が重視されています。若いころのように動けなくなっていても、いまの自分らしく踊れればいいというハードルの低さも、人気の理由となっているのです。
リズムに乗ることで敏捷性を高める効果も?
最近、ヒップホップダンスと高齢者の身体機能に関する論文が発表されました。それによると、毎週ヒップホップダンスをやっている高齢者(平均年齢69歳)は、身体機能の「敏捷性」に関連したスコアが極めて高く、中には20代並みの人もいることがわかりました。
敏捷性は、転びそうになったときにバランスをとったりと、「とっさの動き」を支える大事な能力です。これまでは、加齢による衰えが筋力よりも大きく、鍛えることが難しいとされてきました。この論文では、ふだんの生活にはない「ヒップホップのリズムに乗ろうとする動き」を繰り返すことで、敏捷性を司る神経が刺激され、機能が改善するのではないかと推測しています。
いつまでも心と身体の若々しさを保つためにも、ぜひヒップホップダンスに挑戦してみてはいかがでしょうか?
文/米沢優利子