最近は「睡眠ファースト」という言葉が流行っています。ようするに、きちんと寝ることは脳や体の機能を休め、日中のパフォーマンス向上につながるのだそうです。そこで、睡眠の専門家・白濱龍太郎さんの著書『ぐっすり眠れる×最高の目覚め×最強のパフォーマンス が1冊で手に入る 熟睡法ベスト101』(アスコム)より、「快眠へ導く生活習慣」や「睡眠の新常識」など質の高い眠りを作るためのヒントをご紹介します。
睡眠負債は、その週内で返済する
睡眠ファーストを意識した生活習慣を送ることが、なによりも理想的です。
しかし、現実問題として、残業で遅くまで仕事をし、帰宅後に食事や入浴など必要最低限の生活時間をすごすと睡眠時間がズレ込むこともあるでしょう。
また、会社の仲間との飲み会や得意先との接待で、「午前様」ということもあるかもしれません。
また、「遅くまで仕事をすること(徹夜を含む)」を、美徳のように思っている人もいます。
仕事を多数抱えている人、責任感の強い人ほど徹夜をしてしまいがちです。
一般的に人間に必要な1日の睡眠時間は、約6~7時間といわれます。
仕事がある平日なら、23時に眠りに入り朝6時に起床すれば7時間の睡眠を確保したことになります。
しかし、残業などでこの7時間という睡眠時間が減り、睡眠負債が発生したならば、その週のうちに返済するよう生活を調整しましょう。
では、どのように調整をするか?
例えば、前日1時間睡眠を削ってしまったら、翌日はちょっとでも早く帰り、不足した1時間の睡眠を取り戻すこと。
つまり、プラス1時間長く眠るのです。
これでプラスマイナスゼロになります。
同様に、週の前半で連続して睡眠時間が不足したら、週の後半にちょっとだけ長寝して調整します。
ただし、長くても2時間以内にしてください。
それ以上多く眠ると、今度は生活のリズムそのものが乱れてしまいます。
たまった睡眠不足の返済は、1週間のあいだに30~60分程度の範囲でゆっくり時間をかけてしていきましょう。
休憩時間の15分程度の昼寝も効果がありますので、積極的に取り入れてください。
睡眠負債は、できるだけその週内で返済するようにしてください。
長生きしたければ、眠り過ぎない
誰もが睡眠不足は健康に悪いと認識していることでしょう。
しかし、眠り過ぎについての認識は不足しているようで、「寝れば寝るほど健康になる」と考えるのは大きな間違いです。
眠り過ぎてしまったとき、目が覚めると頭痛がして頭がクラクラする二日酔いのような状態になった経験はないでしょうか。
これは「睡眠酩酊」とも呼ばれていて、時差ボケになったような状態です。
起きた時間が昼になっていても、脳は起きた時間を朝と認識してしまうので、体内時計のリズムが狂って現れる症状です。
頭痛だけでなく、長時間同じ姿勢でいるために血行不良になり、肩や背中のだるさを感じたり腰痛を起こしたりもします。
ちなみに、上のグラフは睡眠時間と死亡との関連を調べた研究です。
睡眠時間が10時間以上の長時間睡眠では、7時間の睡眠に比べて死亡リスクが増加していることがわかります。
男性は脳卒中で1・7倍、脳梗塞で1・6倍、循環器疾患で1・6倍になっています。
なお、女性も脳卒中で1・7倍、脳梗塞で2・4倍、循環器疾患で1・5倍になっています。
長時間睡眠と死亡との直接の因果関係は不明ですが、眠り過ぎはよくないことは間違いありません。
睡眠不足は、抜け毛やEDも呼び寄せる
睡眠不足がダイレクトに抜け毛の原因になるとはいえませんが、まったく無関係というわけでもありません。
慢性的な睡眠不足は、身体に疲労を蓄積させます。
身体が疲れていると、通常より筋肉が弛緩しやすくなり、舌根沈下をいざないます。
舌根沈下が起こると気道が狭くなり、いびきをかきやすくなります。
それを放っておくと睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性を高めます。
そして、睡眠時無呼吸症候群になると、AGA(男性型脱毛症)が進行するリスクを高めます。
AGAは命にかかわる病気ではないため、どうしても研究が後回しになり、睡眠時無呼吸症候群との因果関係はいまだはっきりと解明されていませんが、状況的にそのメカニズムを推測することはできます。
鍵を握っているのは、おそらく血行です。
睡眠時無呼吸症候群になると体内に酸素が取り込まれにくくなり、血の巡りが悪くなります。
すると、体内の細胞や組織の活性化が鈍るのと同時に、毛髪に十分な栄養素が届かなくなる。
さらに、血行不良は男性ホルモンのバランスの乱れをもたらします。
結果、髪の毛がどんどん弱っていき、最終的には抜けてしまうという図式が考えられるのです。
また、男性にとっては非常に困ったことに、睡眠時無呼吸症候群の患者がED(勃起不全)になる確率が高いことが、医学的な研究によってあきらかになっています。
こちらも原因は血行不良にあり。
無呼吸からくる酸素不足が低酸素血症を引き起こし、EDの進行をうながしてしまうのです。
しかも、一部のED治療薬を服用すると睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させてしまう可能性のある点がやっかいなところです。
快眠のための生活習慣や、睡眠の正しい知識などを全6章にわたって解説しています