命に関わる場合も。急性じんましんで特に注意したい「アナフィラキシー反応」とは

かゆみや、チクチクした痛みを伴うことが多い「じんましん」。皮膚の一部が突然赤く、くっきりと盛り上がり、しばらくすると跡形もなく消えてしまう病気ですが、予防や治療の観点から、注意しておきたいこともあるんです。今回は、東京医科大学病院 皮膚科 准教授の伊藤友章(いとう・とものぶ)先生に、急性じんましんで特に注意したいアナフィラキシー反応や、じんましんの予防方法について教えていただきました。

前回の記事:原因不明で、6週間以上続くことも。「じんましん」の基礎知識

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食物アレルギーなどのショック反応にも注意

食事をした後にじんましんが出るなど、食物アレルギーのように原因がはっきりしている急性じんましんでは、アナフィラキシー反応に注意が必要です。

最初にじんましんが生じ、2回目に同じ食物などを口にしたときに、全身が赤くなるような症状や呼吸困難など、命に関わるショック反応を引き起こすことがあります。

これをアナフィラキシーショックといいます。

そのため、1回目のときにきちんと検査を受けて、予防策を立てることが重要になります。

「急性のじんましんの診断には、問診が大切です。発症前2時間程度のことを思い出してください。急性のじんましんは、原因となる食べ物や金属、衣類などに触れてから2時間程度で、じんましんの症状が起こるのです」と伊藤先生は説明します。

アレルギーが疑われるときには、血液検査、皮膚に抗原をのせて針でつくプリックテストなどが行われ、原因を突き止めます。

結果として、食物アレルギーが判明した場合は、原因となる食べ物を避け、万が一のときの緊急対処として、アドレナリンの筋肉注射(商品名・エピペン)を常に携帯するのが基本となります。


こんな症状にも注意!アナフィラキシー反応

全身のじんましん以外に、呼吸困難や失神などの症状も引き起こされ、命に関わる場合があります。食物などのアレルギー反応を起こす原因に、2回目以降、食べたり触れたりしたときに起こるショック反応です。そのため、アレルギーと診断されてアナフィラキシー反応のリスクが高い人は、緊急補助治療薬の「アドレナリン注射薬」の携帯が不可欠です。下のイラストにあるように「皮膚・粘膜症状」に加えて「呼吸器症状」または「循環器症状」がある場合は、アナフィラキシーの可能性があります。

アナフィラキシー反応の主な症状は?

●皮膚・粘膜症状

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[皮膚症状]
・全身の発疹
・かゆみ、かきたくなるような不快感
・赤くなる
・浮腫

[粘膜症状]
・口唇、舌、口蓋垂(のどびこ)の腫れ

●呼吸器症状

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・呼吸困難
・気道狭窄
・ゼーゼー、 ヒューヒューする
・低酸素血症

●循環器症状

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・血圧低下
・意識障害


「ただし、急性じんましんの患者さんにも、アレルギーとは無関係に症状が出ることがあります。じんましんは、疲労や風邪のときにも発症しやすいのです」と伊藤先生。

今年はコロナ自粛のストレスに加え、8月の酷暑や秋の急な気温変動などで、体調を崩しやすい状況が続きました。

ちょっと気分転換のために旅行へ行って、思い切り羽を伸ばすはずが、逆に疲れがたまってしまうようなこともあるでしょう。

このようなときにも突然、じんましんを発症することがあるそうです。

「風邪や疲労が原因のじんましんは、一過性のものなのであまり心配することはありません。とはいえ、中には慢性じんましんや食物アレルギーが隠れていることもあります。つらいかゆみがあるといった症状のときには、近くの医療機関を受診することをおすすめします」

じんましんを引き起こす肥満細胞を根本的におとなしくさせる方法は、いまのところないそうです。

肥満細胞は「膨れた細胞」という意味で、体の肥満とは関係ありません。

小児に関しては、入院による根治的な治療も試みられていますが、大人の場合は、症状が出てしまったときに抑える対症療法が治療の柱になります。

「残念ながら、原因不明の慢性じんましんや、風邪や疲労に起因したじんましんには、予防法はありません。日頃からなるべくストレスをためず、体調管理を心がけることが、じんましんを遠ざけるのに役立ちます」と伊藤先生。

ストレス発散やリフレッシュを心がけ、困ったときには医療機関へ。

適切に対処することで、じんましんを封じ込めましょう!

じんましん予防をするなら&治療の流れ

【予防をするなら】

突発性じんましんの予防法はありませんが、特定の食品でじんましんが起こる場合は、その食品を避けるようにします。摩擦や圧迫などの刺激で繰り返し出る場合にも、それを避けるようにします。

薬剤
消炎鎮痛剤などの薬を飲んでじんましんが出ることもあります。服用後の症状は主治医に相談を。

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物理的刺激
衣類が接触した部分にじんましんができるなど、症状が出たときには物理的な刺激も避けましょう。

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食物
総菜や外食などで原因となる食物が入っていないか、食品表示のチェックなどを行いましょう。

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心と体のストレス
毎日、ちょっとした楽しみを見つけ、ストレス発散やリフレッシュを心がけましょう。

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運動や入浴後など汗をかいたときにじんましんが出て、慢性化する人がいるので注意が必要です。

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日光や寒冷刺激
太陽の光や冷たい空気などでも、じんましんは起こります。肌の露出を控えるなど対策を。

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【治療するなら】

医療機関(皮膚科)を受診し、医師に相談しましょう。患部を冷やしたり、市販のかゆみ止めを利用することはかゆみの軽減に役立ちます(ただし寒冷刺激でじんましんが出る場合には、悪化するため冷やさないでください)。

●主なじんましんの薬は?

[ 抗ヒスタミン薬 ]
じんましんは、肥満細胞から放出されるヒスタミンというかゆみの成分が関わります。その作用を抑えるのが抗ヒスタミン薬です。花粉症などのアレルギー症状に対しても広く使用されています。

[ 抗アレルギー薬 ]
1980年代に登場した第2世代の抗ヒスタミン薬や、眠気が生じにくい第3世代の抗ヒスタミン薬、炎症に関わるロイコトリエンを抑えるロイコトリエン受容体拮抗薬などの総称が抗アレルギー薬です。

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取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>
東京医科大学病院 皮膚科 准教授 
伊藤友章(いとう・とものぶ)先生
1998年東京医科大学卒業、同大学皮膚科学教室入局。順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター、米国国立衛生研究所などを経て、2020年より現職。

この記事は『毎日が発見』2020年11月号に掲載の情報です。

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