「じんましん」って聞いたことがある人は多いと思いますが、では実際どのような病気が、ご存じでしょうか? 実は、6週間以上も症状が治らずに続いてしまう、原因不明の慢性じんましんの患者さんが多いんだそうです。そこで、東京医科大学病院 皮膚科 准教授の伊藤友章(いとう・とものぶ)先生に「じんましんの基礎知識」について教えていただきました。
6週間以上も続く原因不明のじんましん
かゆみを伴う湿疹には、いろいろな種類があります。
中でも、虫刺されのようにプクッと肌が膨れ、強いかゆみを伴う「じんましん」は、食べ物や薬品、衣類や金属、寒暖差や激しい運動などに反応して起こる症状と考えるのが一般的です。
皮膚の一部が突然赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡形もなく消えてしまう病気。
かゆみを伴うことが多く、チクチクとした痛みに似た感じや焼けるような感じを伴うこともある。
ただし、原因不明で生じることもあります。
【じんましん(蕁麻疹)とは?】
かゆみに関わるヒスタミンなどの物質を蓄えている肥満細胞は、血管のすぐ近くに存在しています。
何らかの刺激でヒスタミンなどが放出され、血管が膨れて血漿が漏れ出すことで肌を押し上げます。
「じんましんには、一過性ですぐに治る急性じんましんと、治ったり発症したりを繰り返す慢性じんましんがあります。東京医科大学病院皮膚科でいちばん多いのは、6週間以上も症状が治らずに続いてしまう、原因不明の慢性じんましんの患者さんです」と伊藤友章先生は話します。
例えば、じんましんの症状が出て、自宅近くのクリニックを受診したとします。
通常、急性のじんましんに対しては、抗アレルギー薬が処方されます。
抗アレルギー薬にはいくつもの種類があり、よく知られているのは、花粉症で服用する「フェキソフェナジン(商品名・アレグラ)」や「エピナスチン(商品名・アレジオン)」などの抗ヒスタミン薬です。
薬の服用でじんましんが治まればよいのですが、なかなか良くならず、良くなったかと思ったらまた再発。
このような症状を繰り返すのが、原因不明の慢性じんましんの患者さんのパターンといえます。
「じんましんには、ヒスタミンなどの物質をため込んだ肥満細胞が関わります。原因不明のじんましんの場合、ご自身の免疫、すなわち自己抗体が肥満細胞を攻撃するのではないかというのが、仮説として有力になっています」と伊藤先生は説明します。
肥満細胞は、花粉や食べ物などの抗原が体内に入ってきたときに、それに反応してヒスタミンなどのアレルギーに関わる物質を放出します。
じんましんも、ヒスタミンなどが放出された結果、血管から漏れ出た血漿成分で皮膚が盛り上がり、炎症を起こしてかゆみにつながります。
この肥満細胞を自己抗体が攻撃することで、慢性じんましんにつながると考えられるのです。
「原因不明の慢性じんましんの患者さんは、症状に応じた治療が必要になるため、皮膚科専門医のいる医療機関を早めに受診しましょう」と伊藤先生はアドバイスします。
【じんましんができやすいところ】
全身の皮膚のどこにでも症状は出ますが、太腿や腹部など、皮膚の柔らかいところに発症しやすい傾向があるようです。通常、じんましんの症状は数時間から1日程度で消えます。
【じんましんの主な種類】
突発性
●急性じんましん
主な特徴:一度だけ現れるか、繰り返し起きても1カ月以内に治るもの
主な原因:細菌、ウイルス感染などが原因となっていることが多い
●慢性じんましん
主な特徴:繰り返し症状が現れ、発症して1カ月以上経過したもの
主な原因:原因が特定できないことが多い
刺激誘発性
●物理性じんましん
主な特徴:原因の特定がある程度可能
主な原因:こすったりする機械的擦過や圧迫、寒冷、温熱、日光、振動などといった物理的刺激
●コリン性じんましん
主な特徴:一つ一つの膨疹(皮膚の膨らみ)の大きさが1~4㎜程度と小さい
主な原因:入浴や運動などで汗をかくと現れる(チクチクした痛み、灼熱感を伴なう)
●アレルギー性じんましん
主な特徴:アレルゲンに結合するIgEという血漿たんぱくが関与する
主な原因:食べ物や薬剤、昆虫などに含まれる特定物質(アレルゲン)に反応して起こる
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史