酒かすは、日本酒の原料である熟成させたもろみを圧縮し、酒を分離した後に残る固形物です。酒粕の始まりは奈良時代ごろといわれ、古くから親しまれてきました。医学博士の滝沢行雄先生によると、酒かすには、"体にいいこと"がたくさん詰まっていると言います。「百薬の長」といわれる日本酒と同様に、高血圧症から糖尿病、肌荒れに至るまで、さまざまな効能があるとされます。どんな予防を期待できるのか、滝沢先生に伺いました。
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◆アトピー性皮膚炎
最近欧米の研究では、γ−リノレン酸に抗炎症作用があり、アトピー性皮膚炎の症状を緩和させることが臨床結果から明らかになりました。酒かすには、γ−リノレン酸が含まれているため、有効性が期待されています。
◆肌荒れ
健やかな肌はアミノ酸が常に過不足なくあることで維持されます。酒かすのアミノ酸は表皮の温度を高め、毛穴を開き皮膚の保湿効果を発揮。ハリや潤いを保持するとされています。
◆物忘れ
物忘れ(健忘症)は、ぺプチドホルモンの不活性化が記憶や学習能力を低下させるといわれています。酒かすはぺプチドホルモンの不活性化を抑制する効果があるとされ、物忘れの予防ができると期待されています。
◆動脈硬化
動脈硬化は、酸素などを運ぶ動脈の壁に悪玉コレステロールが付着して血管壁が硬くなり、血液が流れにくくなることをいいます。酒かすはこの悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがあるとされています。
◆高血圧症
高血圧症は、血圧を高くするアンギオテンシン変換酵素の活性が強くなり過ぎるために起こるといわれています。酒かすにはアンギオテンシンを阻害する酵素ペプチドが含まれ、血圧降下に効果があるとされます。
◆糖尿病
インスリンの働きの低下で起こる糖尿病。体内にインスリンに抵抗するホルモンがバランスを取りながら存在します。酒かすはインスリンと同じ作用のホルモン抑制物質を含むため、糖の吸収を抑えるとされます。
◆肥満
通常、米など炭水化物は水に溶けてでんぷんになり、消化酵素で分解されてブドウ糖になって血液中へ。この血糖の上昇が肥満の一因です。酒かすはでんぷんの分解を抑え、血糖の急激な上昇を抑制し、脂肪を蓄積しにくくします。
◆便秘症
酒かすの食物繊維は不溶性繊維のため、腸内で水分を含み便の量を増やして腸の蠕動を促し、便秘解消に有効とされています。ちなみに酒かす100g中の食物繊維量約5gはご飯(白米)の約17倍に相当。
◆骨粗しょう症
年齢を重ねるとカテプシンLという酵素の分泌が増え、骨を弱くするといわれています。酒かすにはその働きを抑えるペプチドなどが3種も含まれているので、骨の分解を抑制し、骨を強くするといわれています。
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構成・文/中沢文子
滝澤行雄(たきざわ・ゆきお)さん
1932年生まれ。新潟大・大学院医学研究科卒。医学博士、秋田大学名誉教授。国立水俣病総合研究センター所長、水俣市助役を経て、現在、介護老人保健施設 ホスピア玉川 施設長。UNEP環境影響評価パネル委員。