酒かすは、日本酒の原料である熟成させたもろみを圧縮し、酒を分離した後に残る固形物です。酒粕の始まりは奈良時代ごろといわれ、古くから親しまれてきました。医学博士の滝沢行雄先生によると、酒かすには、"体にいいこと"がたくさん詰まっていると言います。酒かすは、通常5〜8%アルコールが残存しています。含まれている栄養成分は日本酒と同じですが、搾った後も発酵し、ずっと麴菌や酵母菌が育ち続けるため、日本酒以上の栄養効果が期待されるのです。
酒かすには、ビタミン類や脂質、糖質など、人間に不可欠な成分が豊富に含まれ、100種を超えます。中でも注目したいのが、たんぱく質の構成要素であるアミノ酸の働きです。なぜなら、毛髪、神経、皮膚などは全てアミノ酸の組み合わせでできているからです。酒かすには20種以上のアミノ酸が含まれています。食品の中では優れた含有率で、体にいいことが分かります。さらに私たちに不足しがちな食物繊維、ビタミン類、ミネラル類が豊富なのも特徴といえましょう。
これらの栄養成分は、高血圧症や便秘症、肌荒れといった症状にも効果があるとされています。私たちに「健康とキレイ」を与えてくれる根源になりそうです。
酒かすに含まれるおもな成分
◆アミノ酸
20種以上のアミノ酸を含みます。特に抗酸化作用があり、動脈硬化を起こした血中の悪玉コレステロールを除き、善玉コレステロールを増やすグルタミン酸を多く含みます。そのため動脈硬化を防ぎます。
◆不溶性食物繊維
酒かす中の食物繊維は水に溶けない不溶性繊維で、胃の中に長くとどまり満腹感が持続します。腸内で水分を含み、便の量を増量します。腸の蠕動を促し、便秘の解消が期待できます。
◆水溶性ビタミン
水溶性ビタミン(B1、B2、ナイアシン、B6、B12など)を含んでいます。ビタミンB1が不足すると糖代謝が不完全になり、ビリルビンなどが筋肉にたまることで、神経系を侵します。
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構成・文/中沢文子 撮影/邑口京一郎
滝澤行雄(たきざわ・ゆきお)さん
1932年生まれ。新潟大・大学院医学研究科卒。医学博士、秋田大学名誉教授。国立水俣病総合研究センター所長、水俣市助役を経て、現在、介護老人保健施設 ホスピア玉川 施設長。UNEP環境影響評価パネル委員。