ご存知ですか? めまいの9割は、体の平衡感覚を担う「内耳」の不調が原因なんです

「ぐるぐる」「ふわふわ」と起こるめまい。決して特別な症状ではなく、誰にでも起こり得るものです。めまいの原因を理解して、自分の症状に合った体操を行うことで改善することができます。横浜市立みなと赤十字病院 めまい・平衡神経科部長の新井基洋(あらい・もとひろ)先生に、めまいが起こる原因について教えていただきました。

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「内耳」に左右差が生じると体の平衡が保てずめまいに

年齢とともに「めまいで起き上がれない」「ふらついて外出が怖い」などと悩む人は多くなります。

「めまいが起こると『脳』の病気ではないかと心配する人がいます。

しかし、めまいで当院を受診した患者さんのうち、『脳』に関わるめまいは5%未満です。

残りの9割以上は『内耳』の不調が原因でした」と新井先生。

 この「内耳」には、下の図のように「三半規管」と「耳石器」があり、体の平衡を保っています。

「内耳は左右の耳に存在します。何らかの原因で左右どちらかの内耳に不具合が起きると、平衡機能に左右差が生じます。体のバランスが取りにくくなるため、めまいやふらつきが起こるのです」

めまいが起こる前には、左のような兆候が表れることがあります。

「めまいで病院に行く場合は耳鼻科を受診します。ただし、めまいと同時に『意識が遠のく』『ろれつが回らない』などの症状が出たら、脳梗塞や脳出血などの可能性があるため、すぐ脳神経外科を受診します」と新井先生。

体の平衡感覚は「内耳」が担っています

【耳石器】
耳石膜の上に付着した粒状の耳石が体の重力や傾きを感知します。

【三半規管】
半円形の3本の管。内部のリンパ液の流れで体の回転を察知します。

【脳】
耳石器や三半規管からの情報を電気刺激として受け取ります。

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耳の内部は外耳、中耳、内耳の三つに分かれています。左右の内耳にある「耳石器」と「三半規管」が正常に機能することにより、私たちはバランスよく立ったり歩くことができます。

気を付けたい! めまいの兆候

  • ふらつきを感じる
  • 後頭部を重く感じる
  • 耳が詰まった感じや耳鳴りがいつもより強い
  • 吐き気やむかつきがある
  • いつも以上に肩や首がこっている

取材・文/松澤ゆかり 撮影/齋藤ジン イラスト/ノグチ・ユミコ モデル/永谷佳奈

 

新井基洋(あらい・もとひろ)さん
横浜市立みなと赤十字病院 めまい・平衡神経科部長。北里大学医学部卒。日本めまい平衡医学会専門会員・評議員。著書は『9割のめまいは自分で治せる』(中経の文庫)など。

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9割のめまいは自分で治せる

(新井 基洋/KADOKAWA、中経出版

今回、めまいへの対処法を教えてくださった新井先生の著書。先生の長年の実績に裏付けられたリハビリ体操が12種類紹介され、自宅でもできるようにイラスト入りでわかりやすく解説されています。めまいに悩んでいる方々の不安や恐れといった心のケアやめまいと上手に付き合うコツなど、先生の指導内容のエッセンスが詰まった一冊です。

この記事は『毎日が発見』2020年5月号に掲載の情報です。
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