「1日30分」も歯磨きするの!? お口の中を清潔に保つ「歯科医療業界の常識」

「歯の状態」が全身の健康状態を左右する? そんな歯の重要性を説くのが、歯科医師のほりうちけいすけさん。そこで、著書『歯の寿命を延ばせば健康寿命も延びる』(ワニブックス)から、体の健康維持につながる「歯を大事にするための知恵」を連載形式でお届けします。

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歯磨きの目的

変な話ですが、家の中でゴキブリを見かけたとします。

あなたはそのゴキブリを退治すると思うのですが、根本的な問題は「ゴキブリが生息しやすい環境」のはずです。

出てきたゴキブリ1匹だけ処分したとしても環境を変えなかったら、当然、どこかでゴキブリは発生・増殖しています。

ゴキブリを見るのがイヤなのであれば、ゴキブリが寄りつきたがらない環境に整える必要があります。

お口の中も同じことです。

虫歯菌・歯周病菌が生息・増殖しにくい環境を作ることが最も重要であり、この目的を果たす手段が歯磨きです。

歯には侵入してきた細菌に対して戦うアイテムが備わっていません。

ですから、いったん、歯の中に細菌が侵入してしまったら、細菌は歯の中で増殖しながら、容赦なく歯を侵食し続けるのです。

普段から歯の周囲には「歯に侵入しよう」と待ち構えている細菌がうようよしています。

この待機している細菌を減らし、歯の中に細菌の侵入を許さないことが、極めて重要なのです。

すなわちお口の中の虫歯菌や歯周病菌の数を減らしておく、言い換えると「清潔な状態を保つ」ために歯を磨くのです。

そうしないと、いつまでたっても同じことを繰り返しながら、どんどん歯が減っていくことになってしまいます。

歯には細くて深い溝が複雑に入り組んでいますし、歯と歯の間はとても狭い空隙(くうげき:すきま)です。

こういったところに汚れ歯垢や糖分が付着したままですと、虫歯になってしまいます。

また歯と歯肉の境目の汚れが歯肉炎の原因になり、さらにここから歯周病へと進んでいきます。

また口臭もこれらの細菌が出す代謝物質によるものであり、特に歯周病菌が出すメチルメルカプタンが最も強烈な口臭の原因物質なのです。

歯磨きの目的は細菌自体や、細菌の餌となるこれらの汚れを取ることです。

当たり前のようですが、多くの人はこの当たり前のことが目的を達するレベルまでできていないので虫歯や歯周病になってしまいます。

歯の硬さや長さ・唾液の性質・免疫力の差等によって、虫歯や歯周病のなりやすさは個人差がありますので、目的達成するための歯磨きレベルは人それぞれではあるのですが、基本的なことは同じことです。

1日1回は15分歯ブラシを持ちましょう

意外に思うかもしれませんが、たった3分で虫歯や歯周病を予防できるレベルの清掃ができるはずはありません。

何もしないよりは多少ましでしょうが、充分きれいにするには3分では短すぎです。

歯磨きは、雑にしようと思えばいくらでも雑にできますが、目的を果たすためには、それなりの時間と労力がかかります。

私自身、1日1回は最低15分、長ければ20分歯ブラシを持っています。

プロの私自身がですよ。

素人のみなさんが、これ以下の時間で満足できる清掃ができるはずはありません。

「歯磨きのためだけにそんな長い時間を使うことができない」し、継続できないと思われる方もいるかもしれません。

それは、歯磨きを「洗面所で立って行うもの」と思い込んでいるからではないでしょうか?

みなさんは信じられないかもしれませんが、私自身、歯磨きを洗面所で行うことはありません。

洗面所には最初に歯ブラシを取りに行くのと、最後に口をゆすぎに行くだけです。

歯磨き自体は座って何かしながら(新聞や本を読みながら・パソコンに向かいながら)行います。

我が家では家族の誰もが洗面所で歯磨きをしません。

歯科関係者の多くがそうではないでしょうか。

洗面所で立って磨いていると、3分でも長い、ましてや水を出しながらでしたら、水道代がもったいないので多くの場合は1分そこそこしか時間を使わないでしょう。

そんな短時間で複雑な形状の歯の汚れがきれいに落ちるはずがありません。

自分自身の場合、朝は食後に新聞を読みながら5~8分くらい、昼は本を読みながら10分くらい、夜はパソコンを開けながらやはり15分くらい歯ブラシをくわえています。

気づいたら20分くらいくわえていることもあります。

トータル1日に30分程度を歯磨きの時間に費やしているわけです。

いくら歯が大事だといって30分も洗面所に立っているわけにはいきませんよね。

ただ、たまには時間が少し短いとき、1日2回だけのとき、まれに1日1回だけの日もあります。

比較的ルーズな性格ですから、完璧に実行するのは不可能だと割り切っています。

家族の朝昼の様子は知りませんが、夜観察していますと、家内はタブレットを見ながらまたはダイエット体操をしながら、子供達はスマホを触りながら、あるいはテレビを見ながら10分以上の歯磨きをするのが日常です。

歯ブラシを取りに行くときと、最後口をゆすぐときだけ洗面所を使います。

結局のところ総計1日30~40分くらいを歯磨きの時間にあてていることになります。

普通に人にとっては異常に思えるでしょうが、これが歯科医療従事者では常識なのです。

それだけの時間と労力を使っているのです。

原則、最低1日1回は時間をかけて、何かしながら歯磨きをする習慣を身につけることが要点です。

女性の方であれば、冬場はお風呂につかりながらゆっくり磨くのもお勧めです。

今大事にすべきはお口の中「歯の寿命を延ばせば健康寿命も延びる」記事リストはこちら!

089-H1-rakusuruhuku.jpg歯科医の常識から歯磨き法まで、5章にわたって「歯」の全てを網羅しています

 

ほりうちけいすけ

歯科医師・医学博士。1986年、広島大学歯学部卒業、奈良県立医科大学口腔外科研修医に。1988年、滋賀医科大学麻酔科研修。1990年、奈良県立医科大学病理学助手。1995年、歯科医院を開設する。2017年より一般社団法人奈良県歯科医師会理事に。公益社団法人日本歯科医師会歯科医療IT化検討委員会委員。

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『歯の寿命を延ばせば健康寿命も延びる』

(ほりうちけいすけ/ワニブックス)

虫歯や歯周病などの“お口トラブル”が動脈硬化や糖尿病、認知症といった重い病気を引き起こすかも!? 病気につながる口内の状態や歯を残すための歯磨き法など、歯を健康に保つためのメソッドがまとめられています。歯を守って、健康な体と生活を手に入れよう。

※この記事は『歯の寿命を延ばせば健康寿命も延びる』(ほりうちけいすけ/ワニブックス)からの抜粋です。
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