「生理前に甘ものが食べたくなる」「急に天然パーマになった」など、体に起こる不思議な現象。そんな体の仕組みを科学的視点から解説する書籍『医者も驚いた!ざんねんな人体のしくみ』(工藤隆文/青春出版社)から、特に女性にまつわる人体のメカニズムをご紹介します。
なぜか、生理前に甘いものが食べたくなる...
女性は、初潮がきてから閉経までの長年にわたって、定期的に生理がやってくるというサイクルの中で生きています。
そのため女性には、男性には決してわからない、さまざまな苦労があるようです。
そのひとつが、生理前に起こる心身の不調。
月経前症候群とか、英語の略称で「PMS(プレ・メンストラル・シンドローム)」と呼ばれているものです。
実際、女性の中には、生理前になると、妙にイライラしたり、肩が凝ったり、肌が荒れたり、異様な眠気に襲われたりと、不快な諸症状に悩まされている人が少なくありません。
女性の体調は、主にエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンに大きな影響を受けています。
これらがそれぞれ周期的に分泌量を変えることで生理のサイクルも生まれているのですが、特に生理前になると、エストロゲンとプロゲステロンの分泌の増減が激しくなり、女性ホルモンのバランスが乱れます。
その結果、精神的にも身体的にもさまざまな不調が表れるのです。
そんなPMSによって引き起こされる現象のひとつに、「甘いものが食べたくなる」というものがあります。
甘いものを食べすぎれば、当然太りますし、それは美容と健康維持の面から考えれば決して良いことではありません。
しかし、そうとわかっていても食べてしまうほど、無性に食べたくなってしまうことがあるのです。
なぜこんなことが起きるのか、順を追って説明していきましょう。
私たちが甘いものを欲する理由のひとつに、血糖値の問題があります。
普段、人が食事をすると、食べ物に含まれていた糖分が分解されて血液の中に流れ出し、血糖値が急上昇します。
すると今度は、血糖値を下げる働きを持つホルモンのインスリンがすい臓から分泌され、上がりすぎた血糖値を下げ、バランスを保つようになっています。
ところが、排卵後から生理前にかけて、つまり、プロゲステロンの分泌量が上昇する時期はインスリンの効果が下がってしまうため、これを補おうとインスリンの分泌量が増えます。
その結果、逆に血糖値が下がりすぎてしまう傾向があるのです。
生理前に甘いものが食べたくなるのは、こうして下がりすぎた血糖値を上げようとして、身体が自然と糖分を求めてしまうからではないかと考えられています。
また、プロゲステロンの分泌量が増えている間は、基本的に女性の身体は妊娠に向けた準備を進めています。
そのため、エネルギーを確保しようと、本能的に甘いものを求めてしまうのではないか、ともいわれています。
さらに、生理直前になってプロゲステロンが低下していくと、今度は〝幸福ホルモン〞の異名を持つセロトニンの分泌も低下するため、どうしても精神的にイライラしがちです。
甘いものを食べると精神的にほっとする作用があるため、つい甘いものが食べたくなるのではないか、とも考えられています。
いずれにせよ、女性はこれほどホルモン分泌量の変化の影響を受けて生活しているのですから、本当に大変ですね。
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