「生理前に甘ものが食べたくなる」「急に天然パーマになった」など、体に起こる不思議な現象。そんな体の仕組みを科学的視点から解説する書籍『医者も驚いた!ざんねんな人体のしくみ』(工藤隆文/青春出版社)から、特に女性にまつわる人体のメカニズムをご紹介します。
方向音痴の人は、なぜ必ず逆を行ってしまうのか
世の中には、方向音痴の人とそうでない人がいます。
方向音痴の人は、はじめて行く場所には地図を見ていてもなかなかたどり着けなかったり、行きはなんとかたどり着いたとしても帰り道がわからなくなったり、また、一度行ったことがある場所でも道順がなかなか覚えられなかったりと、ざんねんな体験を人生で何度もしていることでしょう。
そこへいくと、方向感覚の良い人は、はじめて行く場所でも、地図をさっと見ただけでどちらの方向へ行けばいいかが頭に入り、自分がいまどの位置にいるのかといった予測も、かなり正確にできます。
同じ人間なのに、どうしてこんな違いが起きるのでしょうか。
そもそも人間には、方向を感知する器官はついていません。
たとえば、平衡感覚については、耳の奥にある三半規管がその役割を果たしているのですが、そうした器官が方向感覚においては存在しないのです。
実は、動物によっては地磁気を感じる器官が発達している種もあるので、人間は動物の中では方向音痴な種だといえるでしょう。
人間の場合、空間関係は脳の海馬が処理していると考えられており、空間を把握するための情報のとり方や、その記憶の刻み方などの違いが、方向感覚の違いとなって表れているのではないかと考えられています。
とはいえ、21世紀の現代においても、方向感覚の違いがなぜ生まれるのか、詳しいことはよくわかっていません。
それにしても不思議なのは、方向音痴の人に限って、帰り道を歩き出すときに、たいがい反対方向へ行ってしまうことです。
たとえば、はじめてのお店で食事をしたあとなど、店を出て駅に向かうときに、たいがい逆に歩き出します。
いつも逆なのですから、思った方向と反対に歩きはじめれば正しい方向に行ける―つまり、ある意味方向感覚が良いのでは?という変な推測さえ成り立ってしまいます。
これについては、方向音痴の人は、方角的にどちらが正解という感覚がないため、無意識的に見覚えがあるほうへ歩き出してしまうからだと考えられています。
つまり、帰り道として正解の方向は、来るときにずっと背中を向けていた方向なので、映像として頭に残っていません。
そこへ行くと、駅と反対の方向は、歩いてくる間にずっと見ていた方向なので、映像として見覚えがある。
だから、ついついそちらに向かって歩き出したくなる、というわけです。
ちなみに、方向音痴については、こういう人がなりやすい・なりにくい、といった傾向もはっきりしていません。
ひと昔前、『話を聞かない男、地図が読めない女』という本が流行したこともあって、方向音痴といえば女性が多いと考えられるようになりましたが、実際に調査したところ、男女の間に明らかな差はない、という結論に至っています。
特に女性の場合、自分は方向音痴だと思い込んでしまっている人もいるようなので、一度苦手意識をはずしてみるといいかもしれません。
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