手や指に、痛みや腫れなどの違和感を覚えた経験はありませんか?
「手や指の病気の多くは、腱や靭帯、関節などが変形する変性疾患と呼ばれるものです。患者の8割は女性で、年齢的には50代がピークになります。しかし、手や指の違和感は放置しやすく、60歳前後になって関節が変形したり、痛みが増したりして病院を訪れる方が多いのです」とは、四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリーセンター長の平瀬雄一先生。あなたの手指の痛みや腫れについて、さっそくチェックしていきましょう。
【手や指の代表的な病気はこの3つ】
更年期以降に起きる手指の病気の代表的なものには、「手根管症候群」「腱鞘炎」「変形性関節症」があります。
こちらのチェックで該当する項目があった人は、早めに受診しましょう。
●タイプ1 【手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)】
親指から薬指の親指側の半分までが痛んだり、しびれます。夜間や早朝に痛みが増す、細かい物をつまみにくい、親指の付け根が痩せる、手を振ると痛みが和らぐなどの特徴も。
しびれや痛みが出ます
親指の付け根がやせる
手首を曲げて1分以内にしびれがひどくなる場合は、病気が疑われます
<なりやすい人は?>
・閉経前後の女性
・手首を骨折したことがある人
・家事や仕事などで手を使いすぎている人
・透析療法を受けている人 など
<治療は?>
・安静
手の使い過ぎをやめて安静にします。場合によっては、装具で手首を固定します。
・薬物療法
初期段階ではステロイド剤と局所麻酔薬の混合液の手根管内(手首の部分)への注射や、ビタミン剤の内服が効果的。
・手術
痛みやしびれの原因である正中神経(手の平側の親指から薬指の親指側の指先と、親指の筋肉までのびる神経で、これらの指の感覚と親指の動きなどを司る神経)を圧迫している靭帯を切り離し、圧迫を取り除きます。入院は1日~短期間。数週間以内に症状はなくなります。
●タイプ2【ばね指(手指の腱鞘炎)】
主に指に症状が現れます。指の曲げ伸ばしが困難、曲がった指を戻そうとするとばねのように"カクン"と戻る、指の付け根の下辺りに痛みや腫れなどの症状が出ます。
靭帯性腱鞘が厚くなると、腱と靭帯性腱鞘がこすれて炎症が起こります。腱も腫れて、靭帯性腱鞘の中をスムーズに通れなくなり、指がばねのように伸びてしまいます。
<なりやすい人は?>
・更年期以降の女性
・家事や仕事などで手をよく使う人
・糖尿病治療中の人
・透析療法を受けている人 など
<治療は?>
・安静
患部を安静にします。場合によっては装具で指を固定することもあります。
・薬物療法
痛みが強く、日常生活に支障が出ている場合は、ステロイド薬と局所麻酔薬を腱鞘内に注射します。
・手術
局所麻酔をして皮膚を切開し、炎症を起こしている腱鞘を切り開く手術をします。切開するのは腱鞘の一部なので小さな傷で済みます。
●タイプ3【ドケルバン病(手首の腱鞘炎)】
親指側の手首にある腱鞘と腱がこすれ合い、腱に炎症が生じて発症。親指の付け根の手首に痛みと腫れが生じ、親指を広げたり反らしたりすると強い痛みが走ります。
痛みや腫れが生じます。
親指を内側に入れて握りこぶしを作り、手首を小指側に曲げると痛みが生じます。
<なりやすい人は?>
・更年期以降の女性
・家事や仕事などで手をよく使う人
・糖尿病治療中の人
・透析療法を受けている人 など
<治療は?>
・安静
患部を安静にして刺激を少なくします。場合によっては湿布をしたり、装具で手首を固定することもあります。
・薬物療法
痛みが強いときはステロイド薬と局所麻酔薬を腱鞘内に注射して、炎症や痛み、腫れを抑えます。
・手術
腱鞘での腱の通りをスムーズにするため、局所麻酔をして皮膚を切開し、炎症を起こしている腱鞘を切り開きます。
次の記事:「指の第一関節、第二関節が腫れる、曲がる、痛むは要注意!/手指の痛み改善法(3) 」はこちら。
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平瀬雄一(ひらせ・ゆういち)先生
四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリーセンター長。東京慈恵会医科大学卒業。埼玉手の外科研究所形成外科部長などを経て、2010年より現職。