座り仕事で疲れたから背伸び~!それ、リハビリが必要な「筋膜の癒着」が進んでいるかも

現代人は、人生の半分の時間を「座っている」ことをご存知でしょうか?そして、この座る時間が「肩こり」や「腰痛」など体の不調につながっているとされています。そこで、約15万人の施術経験を持つカイロプラクティック健康科学士・木津直昭さんの著書『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』(文響社)から、ダメな座り方が体に与える影響と負担を軽減させる座り方を連載形式でお届けします。

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不定愁訴の根源にある「癒着」

長時間座り続けることは身体に大きな負担を及ぼし、さまざまな障害を引き起こしたり、寿命を縮めたりします。最近の研究では、座る時間が長いと、運動量と関係なく死亡率が増加するという恐ろしいエビデンスも発表になっているほどです。座り姿勢のままでろくに身体を動かさないでいる生活は、知らず知らずのうちに様々な悪影響を及ぼしているのです。

特に、臨床の場で多くの患者さんが訴えていらっしゃるのが、肩こりや腰痛などの症状、それも不定愁訴と呼ばれている病院でさまざまな検査を受けても原因が特定できない症状なのです。

こうした不定愁訴があるとき、身体のなかでは何が起きているのか。それは、長時間座ったまま動かさないでいたことから起きる「筋・筋膜の癒着」なのではないか、というのが、二十五年以上にわたって多くの患者さんをみてきた私の考えです。

筋(筋肉)はともかく、「筋膜」とか「癒着」といわれてもピンとこない方が多いでしょう。筋膜というのは、筋肉や腱、骨、関節、内臓などをそれぞれ覆っている膜のことです。さまざまな部位の連結を保ちつつも、各組織が別個に動くことを可能にしている重要な組織です。

筋膜をイメージするためには、グレープフルーツの厚い皮をむいた状態を思い起こしてみてください。果肉を包む甘皮は、白い繊維により厚い外皮と適度に連結されています。人体でいうと、甘皮が筋膜であり、外皮との間にある繊維が癒着のもとになる「線維性結合組織」です。各筋肉は筋膜によって独立して存在すると同時に、適度な動きが保たれています。

グレープフルーツなどの柑橘類でも、果肉と外皮が固くくっついてしまっているものがたまにありますが、癒着とはあのような状態だといえるでしょう。人体のなかで、筋膜間の線維性結合組織が必要以上に増えてしまい、筋膜間がくっついて動かなくなってしまったのが癒着です。癒着が起きた場所の周辺では、動けなくなった筋・筋膜の血行が低下し、退化して痛みやこりの原因になるわけです。

こうした筋・筋膜の癒着は、長時間同じ姿勢をとっているときに起こります。典型的な例の一つは、ケガをしたときです。捻挫したり、骨折したりといったケガをすると、痛みを恐れてじっと動かなくなります。このときに癒着が起こるために、ケガから回復したあとも、しばらくは患部周辺の柔軟性が戻らず、したがってリハビリが必要になるわけです。

日々のリセットエクササイズで「癒着」を取り除く

回復までに何日、何十日とかかるケガの場合に限らず、ほんの数時間でも癒着は起こります。

たとえば、朝起きたときには身体を後ろに反って腕をうーんと伸ばしてストレッチをしたくなるでしょう。ほんの数時間、パソコンに集中したあとでも背伸びをしたくなるのが普通です。これは、そのわずかの時間に生じた背中から肩にかけての筋・筋膜の癒着を取り除き、隣接する組織がスムーズに動きを取り戻すように、無意識のうちにやっていることなのです。癒着は短時間でも起こるのです。

そう考えると、同じ座り姿勢、それも身体に負担をかける不適切な座り方を一日十時間、それをさらに十年......と続けることがいかに恐ろしいことかおわかりいただけるでしょう。もしこの間に癒着を取り除くための適切な処置をしていないとすれば、そうとうに癒着が進行していることになります。そして、その癒着が背骨や骨盤をゆがめ、悪い座り姿勢を固定化していくのです。

年齢とともに身体が固くなるというのは、まさにこの筋膜癒着の積み重ねによるものです。数日間程度の癒着であれば、簡単なストレットでリセットすることもできるかもしれませんが、何週間、何カ月、何年、何十年にわたって積み重ねられた癒着を取り除くには、適切な治療が必要になります。

当然、癒着に起因する痛みやこりを取り除くことも簡単ではないわけです。

肩こり、腰痛が劇的に改善する「究極の座り方」記事リストはこちら!

座り仕事で疲れたから背伸び~!それ、リハビリが必要な「筋膜の癒着」が進んでいるかも 053-syoei-suwarikata.jpg5章にわたって、原因から実践、予防法まで、あらゆる場面の「座り方」をイラスト・写真付きで分かりやすく解説しています

 

木津直昭(きづ・ただあき)

KIZUカイロプラクティックグループ代表院長。カイロプラクティック健康科学士、マットピラティスインストラクター。これまで四半世紀に渡り約15万人に施術した経験を持ち、人体構造に精通。近年、行動姿勢研究会を立ち上げ、姿勢セミナーや健康寿命を延ばすための座り方コンサルティングも行なっている。

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『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』

(木津直昭/文響社)

「病院でも肩こりや腰痛が治らない」「治っても治療をやめると再発してしまう」とお手上げ状態のあなたに読んでほしい「座り方」の教本!人体構造のプロが教える、体の不調を改善できる座り方を知れば、肩こり、腰痛ともおさらばできるはず。

※この記事は『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』(木津直昭/文響社) からの抜粋です。
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