現代人は、人生の半分の時間を「座っている」ことをご存知でしょうか?そして、この座る時間が「肩こり」や「腰痛」など体の不調につながっているとされています。そこで、約15万人の施術経験を持つカイロプラクティック健康科学士・木津直昭さんの著書『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』(文響社)から、ダメな座り方が体に与える影響と負担を軽減させる座り方を連載形式でお届けします。
病院へ行っても「肩こり」「腰痛」が治らない本当の理由
慢性的な肩こりや腰痛、足腰のしびれ、足のむくみといった症状は、苦しいだけでなく、その根本原因がわかりにくい。それがいっそう患者さんの悩みを深くしているように思えます。
実のところ、こうしたつらい症状の原因がわからないのは、医療現場にいる専門家も同じである、といったら驚かれるでしょうか。
私のもとに治療に訪れた患者さんからよくこんな話を聞きます。
病院に行って、たとえば首が痛いと訴える。するとお医者さんは「首のレントゲンを撮ります」といいます。「腰が痛い」といえば「腰のレントゲンとMRI検査が必要です」といいます。
ところが、一般的な慢性腰痛などはレントゲンでもMRI検査でも異常は見つかりにくく、当たり前ですが患者さんは本当に痛いし、苦しいのです。けれども、専門家である医師が検査機器を駆使しても、やはり痛みの根本原因は見えてこない。これはどういうことでしょうか。
医療関係者も、そして痛みで苦しむ当事者も、症状の出ている部位(パーツ)に目がいってしまっています。腰が痛ければ腰のMRIやレントゲン検査を行い、首が痛い時は、首を検査すればいいと考えるわけです。たしかにその部位は患部であるので、よく診たほうがいいことはいうまでもありませんし、重篤な障害が隠れていることもあると思います。
しかし、間違えてはならないのは、患部を診てわかるのは原因から生じた症状(状態)、つまり「結果」に過ぎない場合が多いということ。もし、レントゲン検査で腰の椎間板が少しつぶれていると言われた場合も、それは現在の状態が把握できただけで、椎間板に負担をかけてきた原因は日常の座り姿勢によることが多いのです。
「ストレスや運動不足が原因です」といわれても......
多くの方が悩んでいる痛みやしびれ等の原因は単純ではありません。
身体は足先から頭のてっぺんまでつながっています。痛みというものの原因を各部位(パーツ)で捉えている限り、根本的な治療にはならない。それは、30年の臨床経験、延べ15万人以上の患者さんの身体が教えてくれたことです。
こうした原因のわからない症状を、医療の世界では「不定愁訴」と呼んでいます。
この不定愁訴は、主訴(痛み等の訴え)はあるが、客観的所見(画像診断や生化学検査で発見される異常)に乏しいのが特徴です。そして、患者さんへの説明としては、「加齢」「ストレス」「運動不足」の三つの「原因」のいずれかでかたづけられることが多いと聞きます。
「いろいろな病院に行ってみたけれど、どこでも『ストレスや運動不足が原因です』といわれるばかり。もううんざりです」そんな不満を訴える患者さんを、私はこれまで数えきれないほど見てきました。
では、これら「原因がわからない症状」はいったいどこからきているのでしょうか。
そこには身体の「ゆがみ」が大きく関与しています。では、その「ゆがみ」はどこからきているのでしょう。
それは姿勢です。
「さまざまな健康上の問題の原因は身体のゆがみ、姿勢にある」といった内容の本は、すでにたくさん出ています。読者のみなさんは、身体のゆがみ、姿勢と聞いて「またか」と思ったかもしれません。
あるいは、「骨盤のゆがみを治すとか、美しい姿勢を作るとかいった本をいままでに何度か読んだり、実際にエクササイズなどを実践してみたりした。でも効果がなかったよ」という人もいるかもしれません。
こうした書物でよく取り上げられる姿勢やエクササイズ、具体的には立ち方や歩き方ももちろん大切です。しかし、すでにおわかりかと思いますが、原因のわからないつらい痛みや症状、つまり不定愁訴にとって重要なファクターは、「座り姿勢」にあるのです。
座り姿勢の重要な理由は、ただ一点、座っていると頭、顔の位置がカラダの重心(軸)より前に行きやすいということです。
これが、腰痛や肩こりの原因になるのです。
5章にわたって、原因から実践、予防法まで、あらゆる場面の「座り方」をイラスト・写真付きで分かりやすく解説しています