50代〜60代の約6割、70歳以上の7割以上がかかっているとされる「下肢静脈瘤」。日本では約4800万人の患者がいるともいわれています。でも、この病気は良性の病気ですから、必要以上に怖がらなくて大丈夫。セルフケアをすることで、症状の改善が期待できるのです!
今回は、お茶の水血管外科クリニック院長・広川雅之先生に「下肢静脈瘤の治療法」についてお聞きしました。
症状改善は簡単! ストッキング&体操
下肢静脈瘤には、血管がボコボコと膨れる「伏在型静脈瘤」、コブはあまり目立たない「側枝型静脈瘤」、毛細血管が青く網の目のように見える「網目状静脈瘤」などいくつかの種類があります。手術は下肢静脈瘤のタイプによって使い分けられることもあります。
中でも、2014年に保険適用された高周波やレーザーによる血管内治療は、特殊な方法を用いて1〜2mmの傷だけで弁が壊れた静脈を切除していきます。体への負担が少なく日帰り治療が基本になるため、現在、治療の中心になっています。1〜2年以内に、麻酔が不要で医療用の糊を用いた「グルー治療」が保険適用になる見込みです。ご自身にとってどの方法が良いのかよく考え、最適な療法を選びましょう。
下肢静脈瘤になりやすいのは、①長時間の立ち仕事を続けている人、②親や兄弟姉妹に下肢静脈瘤の人がいる人、③中高年の人、④妊娠出産の経験がある人、⑤女の人、⑥運動不足の人、が上位を占めています。加齢に伴い下肢静脈の弁が壊れやすいので予防に励みましょう。また、すでに症状が出て発症の疑いのある人は、まずは血管外科で受診しましょう。
「脚が痛いのは下肢静脈瘤のせいと思って受診されたが、実は、変形性膝関節症の痛みだったということもあります。まずは医療機関を受診して、きちんと診断を受けることが大切です」
下肢静脈瘤のいろいろな治療法
麻酔の必要なし! 短時間で体への負担も少ない『硬化療法』
注射で静脈に薬剤を入れる治療法で麻酔は不要です。薬剤で塞がった静脈が硬くしこりのようになるため、この名称がついています。しこりは半年程度で自然に消失します。比較 的軽症の網目状静脈瘤などが対象。 現在はより進化した「フォーム硬化療法」(保険適用)が主流です。
昔から行われている根治手術 『ストリッピング手術 』
ストリッパーというワイヤーを静脈に通して、静脈を引き抜く治療法です。100年以上も前から行われています。以前は全身麻酔で入院が必ず必要でしたが、麻酔方法の進化で、 短期入院、あるいは日帰りで行われるようになっています。下肢静脈瘤の根治手術として現在も有効な治療法です。
保険適用になり、最も多く行われています『血管内治療』
カテーテルを静脈の中に入れて、レーザーや高周波電流で内側から焼いて塞ぐ治療法です。「血管内焼灼術」ともいわれます。2011年に保険適用になっています。局所麻酔で 日帰りで行えるので、体に優しい治療です。下肢静脈瘤治療の標準治療になっています。
達人のツボ
「グルー治療」とは?
グルー治療は、医療用の糊(グルー) を注射で注入し静脈を内側から塞ぐ治療法です。局所麻酔は不要で、レーザーのような熱も使用せず、単に薬剤を注入して静脈をくっつけるだけ。海外では盛んに行われ、日本でも1~2年以内に保険適用になる見通しです。
肺血栓塞栓症の原因は脚にあった!?
肺血栓塞栓症は、肺の動脈が血栓で詰まる病気で、命に関わることがあります。この血栓は足の深部静脈で作られます。足で生じた血栓が、血流に乗って心臓から肺動脈に流れ込んで血管をふさぎます。
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取材・文/安達純子