年齢を重ねるたびに増える体の不調。それは筋肉の使い方が悪いことが原因かもしれません。そこで、ラグビー日本代表選手を支えたアスレチックトレーナー・佐藤義人さんの著書『1分間だけ伸ばせばいいー2つの筋肉を伸ばして体の悩みを改善ー』(アスコム)から、明日から体が軽くなる「筋肉のしつけ方」を連載形式でお届けします。
筋肉をしつければ、腰、ひざ、肩の関節の痛みがなくなる
動かなくなっている筋肉をしつけると、正しい姿勢を取り戻せるだけでなく、筋肉の使い方が悪いことで引き起こされていた、体のさまざまな不調も、改善されていきます。
腰やひざ、肩などの関節の痛みがその例です。筋肉の使い方が悪くなると、関節への負担が大きくなったり、関節が正しいポジションで動けなくなったりします。
たとえば、腰の痛み。腰を痛める理由のひとつは、腰椎を無理に動かすからです。
上半身を前後左右に倒す、ねじるという動きのなかで、前に倒す動き以外は、背中、とくに第12番胸椎を軸にした動きになります。ねじる動作における腰椎の可動域は、わずかに5度。つまり、多裂筋が動かなくなって胸椎の動きが悪くなると、ねじる動作だけでも腰椎に負担がかかり、痛める原因になるのです。
かかと重心の姿勢になって、体の前側の筋肉の使い方が悪くなると、ひざ関節に負担がかかるようになります。前太ももの上部を使い過ぎると、本来ひざ関節を守るためにはたらく、ひざの上の筋肉まで動きが悪くなります。動かなくなれば筋力が衰えるため、さらにひざ関節を守れなくなります。
背中が丸まって肩が前に入った姿勢が続くと、肩の関節が正しいポジションで動かなくなります。腕を上げたり、回したりするたびに、腕の骨の先端と肩の骨がぶつかり続ければ、いずれ痛みがあらわれることになります。それが四十肩、五十肩の原因のひとつです。
関節の痛みは、さまざまな理由が考えられますが、悪い姿勢をつくっている筋肉をしつけると、少なくとも関節への負担は減り、関節が正しいポジションで動けるようになります。
筋肉の使い方が変わると、こりやしびれもなくなる
いまや若い世代まで悩まされているという肩こり、首こり。
腰痛やひざ痛と並んで国民病ともいわれていますが、原因のひとつは、やはり悪い姿勢をつくる筋肉の使い方にあります。
多裂筋が動かなくなると、背骨を正しいポジションで維持できなくなります。背中が丸まって頭が前に出ると、約5キロといわれる頭を支えるために、僧帽筋(そうぼうきん)を中心とした背中から首にかけた筋肉が、必要以上にはたらかなければいけません。
筋肉は、必要以上に使われて緊張状態が続くと硬くなります。それが「張っている」とか「こっている」という症状です。背中から首にかけて筋肉がガチガチに硬くなった状態が肩こり、首こりなのです。筋肉が硬い状態が続くと、こりの症状はさらに悪化します。
というのは、筋肉が硬くなると血流が悪くなり、疲労物質が蓄積されるようになるからです。ほぐしたり、たたいたりしてもこりの症状がなかなか改善しなくなると、やがて痛みにつながります。
筋肉が縮んだまま動かなくなると、筋肉の近くを通っている血管や神経を圧迫することにもなります。それが、しびれの原因になることもあります。
血管が圧迫される症状の例が、長時間の正座のときに起きる足のしびれ。神経が圧迫される症状の例が、ひじを壁にぶつけたときに起きる腕から手の先まで起きるしびれ。みなさんも経験があるのではないでしょうか。
姿勢が悪くなると、そうした症状が、動かなくなる筋肉の近くで頻繁に起きるようになります。また、筋肉の使い方が悪くなって関節が正しいポジションで動かなくなると、関節の近くにある神経が体を動かすたびに刺激されることもあります。
こりやしびれなどの症状も、動かなくなっている筋肉をしつけ、正しい姿勢を取り戻すことで、きっときれいに消えていくことでしょう。
伸ばし方のポイントや症状別のプログラムなど、ストレッチ方法は写真付きで分かりやすい!