一度に全身のがんをチェック!?人気急上昇「PET検査」の欠点とは

「2人に1人がかかる」と言われるほど身近な病気である「がん」。ただ、断片的な情報は知っていても、検診や予防、基礎知識など「実はよくわかっていないのよね」という人も多いのではないでしょうか? そこで「がんにまつわる気になる疑問」を、最新の知識を備えたがん治療のスペシャリスト・明星智洋先生に尋ねた注目の新刊『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)から一部を抜粋、最新の「がんの知識」を連載形式でお届けします。

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体内の糖分量でがんがわかる!? 大人気のPET検査は検診に使える?

――先生、今回の取材にあたって「PET検査」という画期的な検査方法があると聞いたんですが、PET検査ってどんなものなんですか?

明星先生 よくご存じですね。PET検査は、Positron Emission Tomography という検査の略で、体内の糖分の量を見てがんの有無を検査していくというものです。

――糖分を見る?どういうことですか?

明星先生 がん細胞は増殖するときにたくさんのエネルギーを使うので、糖分を取り込もうとするんです。その性質を利用して糖分の多い箇所を見ていくんですよ。

――そういうことですか!でも、どうやって糖分の量を見ていくんですか?

明星先生 PET検査では、まずFDGという物質を注射します。その数時間後に全身のレントゲンを撮影すると、糖分を多く取り込む場所が赤く光るんです。その箇所を見てがんかどうかを判断していくもので、一度に全身をチェックできます。

――それはすごい!画期的と言われるはずです!

明星先生 はい、今非常に人気になっていて、PET検査を受けたいという人が増えています。ただですね、PET検査にはいくつかの欠点があるんです。

――どんな欠点ですか?

明星先生 たとえば、普段から糖分を取り込んでいる脳や心臓、血流が豊富な腎臓や造影剤が流れ込んでいる膀胱は、何の異常がなくても赤く光ってしまうので、これらの部位にがんがあっても見つけることができないんですよ。

――もともと糖を貯めているところも反応してしまうんですね。

明星先生 そうなんです。他にも糖尿病患者さんもすでに血糖値が高く、他の患者さんと比較して全体的にFDGが集積してしまうので、PET検査は不向きです。

――糖尿病の人にも向かないと......他には何かありますか?

明星先生 もう一つ大きな欠点として、1センチ以下の小さながんを見つけられないという弱点があります。

――小さいがんが見つけられない!?つまり、早期発見は難しいということですか?

明星先生 そういうことになります。アメリカの核医学・分子イメージ学会の発表では、健常者にPETを使ったとしても、がん発見率は約1%程度だと言われています。

――えっ、たった1%!?

明星先生 はい、しかもですね、治療の必要のない非常にゆっくりなタイプのがんなどを発見してしまい、過剰治療につながるリスクがあると警告されています。そしてさらにもう一つ、被ばくのリスクもあります。

――え、被ばくしてしまうんですか!?

明星先生 実はPETはCTなどと比べても使う放射線量が多く、施設ごとに1年間に検査できる回数が決まっているほどです。PETの設備がある病院では、1日に検査できる回数が大体1~3回程度のところが多くなっています。そのため1ヶ月以上先まで予約が埋まっていることも珍しくありません。検診や人間ドックでPET検査を希望される場合は、早目のスケジュール調整を行う必要があるでしょう。

――そうやって考えていくと、PET検査は定期検診には向かなそうですね。

明星先生 そもそもなのですが、PET検査は基本的にがんと診断されたあとの全身への広がり、つまりステージを決めるために行われるのが正しい使い方なんです。

――そうなんですか!?

明星先生 ええ。ステージを決める以外にも、ある部位に腫瘍があった際に、それが悪性なのか良性なのかを判断するのに使ったりします。たとえばお腹の中や胸の中にできた腫瘍は簡単に診ることができないので、PETを参考にする場合があるんです。

――そんな使い方も!

明星先生 さらに、悪性リンパ腫というリンパ節が腫瘍化する病気では、抗がん剤治療でリンパ節を縮小させるのですが、治療がよく効いたとしてもリンパ節が消えてなくなるわけではありません。

――リンパ節は誰にでもあるものですもんね。

明星先生 そのとおりです。どんなに小さくなってもゼロになることはないんですね。目安として、1センチ以上のリンパ節は悪性の可能性が高いのですが、たとえば治療前に10センチを超えるような大きなリンパ節が、治療で縮小したとしても2センチ程度で縮小が止まってしまうことがあります。この残ったリンパ節に生きたがん細胞がいるのか、はたまたリンパ節の死骸だけが残っているのかを判定するためにもPET検査は有用なんです。その判断によって、がん細胞が残っていれば、追加で化学療法を行うし、逆に残っていなければ、それで治療終了にする手がかりになります。

――そうやって聞くと、最新のものだからいいというわけではなく、適材適所ということですね。ちなみに、いくらくらいかかるものなんですか?

明星先生 施設によって異なるとは思うのですが、全身を診るのに1回10万円くらいと考えてもらえればと思います。

――あらら、かなりお高い......。

明星先生 診断目的では保険適用外ですので、基本的には医師からすすめられた場合にのみ使っていただくのがいいのかなと思います。

 

【まとめ】
PETは本来、がん診断後に使われるのに適した検査。
検診で使うのはおすすめできない。

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明星智洋(みょうじょう・ともひろ)

江戸川病院腫瘍血液内科副部長 兼 感染制御部部長。東京がん免疫治療センター長。MRT株式会社 社外取締役。1976年岡山県生まれ。高校生の時に、大好きだった祖母ががんで他界したことをきっかけに医師を目指し、熊本大学医学部入学。その後、医師国家試験に合格。血液悪性腫瘍およびがんの化学療法全般について学ぶ。血液専門医認定試験合格、がん薬物療法専門医最年少合格。専門は、血液疾患全般、がん薬物療法、感染症管理。現場と最新の医療情報を知る医師の観点から情報を発信している。

 

松本逸作(まつもと・いっさく)

作家、ライター。年間ベストセラーランキングに入る実用書やビジネス書をはじめ、サブカルやグルメを扱ったウェブ記事、漫画原作など、多岐にわたる媒体・ジャンルでマルチに活躍。


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『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』

(明星智洋、松本逸作/すばる舎)

予防法は?早期発見するには?身近な人がかかったら?最適な治療法は? そんな疑問を、最先端の治療に携わり、数多くの有名人も治療してきた名医が、現場の知識と最新の研究もふまえ「おすすめの病院」まで教えてくれます。対話形式でわかりやすい構成が魅力の「がん」に備える入門書として最適の一冊です。

※この記事は『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(明星智洋、松本逸作/すばる舎)からの抜粋です。
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