急にくる「下痢」や長く続く「便秘」に悩んでいる女性も少なくないはず。そこで、排便トラブルのスペシャリストである大腸・肛門機能の専門医による話題の書籍から「排便の正しい知識と対処術」をご紹介!目指すべき理想の便「するするバナナ」についてや、多くの人が誤解して陥りやすい「うんこトラップ(罠)」、またその予防・対処術としての「うんトレ」のエッセンスを、連載形式でお届けします。
※この記事は『うんトレ ― 誰にも言えないうんこのトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(神山剛一・医療監修/方丈社)からの抜粋です。
がんこな便秘、自己診断はやめておく
ここでは何らかの理由により直腸が正常にしぼまないために排便ができない「直腸性便秘」について紹介します。これは従来"便秘"と呼ばれている「通過時間遅延型便秘(弛緩性便秘)」や「痙性便秘」などとはまったく異なるもので、直腸まで便が降りてきているのに、次のような理由で便が出せません。
・直腸の収縮力が弱い(脊髄神経障害が関係していることが多い)
・腹圧がかけられない(腹筋や横隔膜などの筋肉の衰え)
・骨盤底筋の衰え(腹圧がかけられても、骨盤底筋が下がり、直腸が便を押し出すのを支えられない。同時に、肛門を閉じたり、緩めたりする肛門括約筋も衰えていることも)
・直腸や、その手前のS状結腸の位置や形のどこかに問題がある
こうした理由が、いくつか重なって排便を妨げていることもあります。
理由の中で、「直腸や、その手前のS状結腸の位置や形のどこかに問題がある」は、「直腸瘤」「S状結腸瘤」「直腸重積」などで、排泄トラブルの専門医を受診し、排便造影検査など専門的な検査、診察をしないと判断がつかないことが多いです。
とくに臓器の配置など体の構造上、「直腸瘤」「S状結腸瘤」は女性に多く、子宮を摘出する手術の後などに起きるケースがよく見られます。腹圧をかけても、力んでも、"瘤"の突出部分に入り込んだ便が排出しにくくなる症状です。
また、「直腸重積」は昨今、患者さんが増えていて神山先生がとくに注意を促すもので、直腸壁にひだができてしまい、そのひだの間に入り込んだ便が排出しにくくなります。なぜひだ状になってしまうのか、原因は解明されていません。人により、いくつかの原因や生活習慣が重なって、このような状態を起こすと考えられています。
上図の通り、健康な人の直腸が風船のようだとすれば、直腸重積の人の直腸はジャバラに伸縮する提灯のようなのです。「直腸重積」が見られる人は、同時に肛門括約筋が弱っている人が多く、中には便漏れを起こす場合もあります。
「直腸瘤」「S状結腸瘤」「直腸重積」はいずれの場合も、通過時間遅延型便秘(弛緩性便秘)だと考え、便がお腹にたまっていると思っている人も多いそうです。そこで下剤を乱用したり、踏ん張りすぎると症状が悪化することがあります。そもそも下剤の乱用や踏ん張りすぎが「直腸瘤」「S状結腸瘤」「直腸重積」を引き起こしている可能性もあるのです。
そして、「直腸重積」などの症状を放置すると、肛門括約筋がさらに弱くなったり、便意を感じなくなったりすることがあります。便の性状を整える下剤は、直腸性便秘の改善には必ずしも役立ちません。
ただし、「するするバナナ」をめざして便を育て、直腸にため、本物の便意で出すリズムをつくると、改善する可能性があります。うんトレを実践すれば可能性は高まります。なぜなら神山先生の患者さんを調べたところ、排便困難や残便感を訴えていた人も、直腸に挿入した類似便を排出してみる検査で60%以上出せた人が8割を超えていました。
それはつまり、出す力がなくなってしまっているわけではないので「出やすい便をつくり、ため、本物の便意で出す&日々のうんトレ」が大事だということです。
排便困難を感じて困っていたら、また、食事やトイレに行くタイミング、運動などのセルフケアだけでリズムがつくれなかったら、まず専門医を受診して、直腸性便秘ではないかを調べるのも一手です。排便障害の専門的な治療ができる受診先については、「排便機能検査」または「肛門機能検査」が可能な施設で検索してみましょう。
かわいいイラストを使って「排便の正しい知識と対処術」が分かりやすく解説されています