「あいうえおの歌」覚えられる? 認知機能に働きかける「絵本読み聞かせプログラム」の練習にチャレンジ

厚生労働省が発表した2016年国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な原因の1位は「認知症」です。患者はますます増えると予想され、認知症予防は急務です。そんな中、注目したい活動が、老年医学の研究拠点・東京都健康長寿医療センター研究所が展開している絵本読み聞かせ世代間交流プログラム「りぷりんと」です。

海馬の委縮を抑制する効果が見られたこのプログラムは、認知機能の維持以外にも参加者によい影響をもたらしています。この研究のプロジェクトリーダー・藤原佳典先生にお話を伺いました。

「あいうえおの歌」覚えられる? 認知機能に働きかける「絵本読み聞かせプログラム」の練習にチャレンジ pixta_41095544_S.jpg前の記事「認知症予防につながると話題! 「絵本読み聞かせボランティア」って何?(1)」はこちら。

 

認知機能の維持だけでなく地域の見守りにも発展

読み聞かせの活動は認知機能の維持だけではなく、地域の子どもたちや親との世代間交流、そして地域の見守りに発展しています。

「現在、少子高齢化・核家族化が進み、世代間で交流する機会が減少してきています。そこでこのボランティア活動を通じて、絵本の楽しさを子どもたちに伝えるとともに、世代間交流の場になればと考えています。

実際に子どもたちにアンケートを取ったところ、読み聞かせで聞いた絵本を図書館で借り直した、高齢者に対するイメージが変わったという回答がありました。活動している側も、手紙をもらってうれしくて部屋に飾ったり、街で子どもたちに話しかけられていっそう頑張ろうと思うなど活力にもなっています」(藤原先生)

近隣のスーパーマーケットで子どもが「りぷりんとの人だ!」と話しかけてきたり、お母さんから「子どもからよく話を聞いています。いつもありがとうございます」と感謝されたりして付き合いが始まることもあるそう。

りぷりんとが活動している地域では、活動していない地域に比べて「支え合いが生まれる地域の緩やかなつながり(近隣の人への信頼感)」が生まれることも分かっています。地域で顔見知りが増えることで自然と"見守り""助け合い"の心が広がっているのです。

「昔は地域の人同士で交流しあって、みんなで子どもを見守っていたので、安心して暮らすことができましたが、現在ではそれがなくなってしまいました。これからは、この活動がその役割を果たしていければと願っています」(藤原先生)

 
認知症予防にも!プログラムの研修の一部にチャレンジ

◆レッスン1 時間を体で覚える

認知機能は時間の認識から衰えるといわれます。
1分がどれくらいの長さか、自分の認識のズレを確認しましょう。長さを体で覚えると、読み聞かせの際に時間配分にゆとりが生まれます。

1. タイマーを用意し、座って目をつぶる。
2. 目をつぶったまま1分間の計測スタート。
3. 1分たったと思ったらタイマーを止めて目を開け、計測時間を確認。

◆レッスン2「あいうえおの歌」を暗唱する

まずは歌詞を音読して覚えましょう。それから下記のように空白を入れた歌詞を用意して練習し、レベル1ができたらレベル2へ。声を出すことで発声練習にもなります。(「五十音」を基に東京都健康長寿医療センター研究所・鈴木宏幸作成)

 

「あいうえおの歌(五十音)」 北原白秋
あめんぼあかいなアイウエオ
浮藻(うきも)に小蝦(こえび)もおよいでる
柿の木、栗の木カキクケコ
きつつきこつこつ枯れけやき
ささげに酢をかけサシスセソ
その魚(うお)浅瀬で刺しました
立ちましょラッパでタチツテト
トテトテタッタと飛び立った
なめくじのろのろナニヌネノ
納戸にぬめってなにねばる
鳩ぽっぽほろほろハヒフヘホ
日向(ひなた)のおへやにゃ笛を吹く
まいまいねじまきマミムメモ
梅の実落ちても見もしまい
焼栗茹で栗ヤイユエヨ
山田に灯(ひ)のつく宵の家
雷鳥(らいちょう)は寒かろラリルレロ
蓮花(れんげ)が咲いたら瑠璃の鳥
わいわいわっしょいワヰウヱヲ
植木屋井戸換(が)えお祭りだ

<レベル1>
あめんぼあかいなア□□□□
浮藻に小蝦もお□□□□
柿の木、栗の木カ□□□□
きつつきこつこつ枯□□□□
ささげに酢をかけサ□□□□
その魚浅瀬で刺□□□□
立ちましょラッパでタ□□□□
トテトテタッタと飛□□□□
なめくじのろのろナ□□□□
納戸にぬめってな□□□□
鳩ぽっぽほろほろハ□□□□
日向のおへやにゃ笛□□□□
まいまいねじまきマ□□□□
梅の実落ちても見□□□□
焼栗茹で栗ヤ□□□□
山田に灯のつく宵□□□□
雷鳥は寒かろラ□□□□
花が咲いたら瑠□□□□
わいわいわっしょいワ□□□□
植木屋井戸換えお□□□□

<レベル2>
あめんぼあ□□□□□□□□
浮藻に小□□□□□□□□
柿の木、栗□□□□□□□
きつつきこ□□□□□□□□
ささげに酢□□□□□□□□
その魚浅□□□□□□□
立ちましょ□□□□□□□□□
トテトテタッタ□□□□□□
なめくじの□□□□□□□□
納戸にぬ□□□□□□□□
鳩ぽっぽほ□□□□□□□□
日向のお□□□□□□□□
まいまいね□□□□□□□□
梅の実落□□□□□□□□
焼栗茹□□□□□□□
山田に灯□□□□□□
雷鳥は寒□□□□□□□
蓮花がさ□□□□□□□
わいわいわ□□□□□□□□□
植木屋井□□□□□□□□

 

取材・文/中沢文子 撮影/島本絵梨佳

 

 

<教えてくれた人>
藤原佳典(ふじわら・よしのり)先生

東京都健康長寿医療センター研究所研究部長。京都大学大学院医学研究科修了(医師・医学博士)。社会参加と地域保健研究チームのリーダーとして世代間交流や地域包括ケアなどに関する研究を進めている。

この記事は『毎日が発見』2019年1月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP