加齢とともに目の違和感や不快感を訴える方は多いですが、それは「逆さまつ毛」が原因かもしれません。年だから仕方がない......とあきらめている方いるかもしれませんが、放置していると視力障害を引き起こすこともあります。「逆さまつ毛」とはいったい何が原因で起こるのでしょうか?どういう症状なのでしょうか?
加齢で起こる逆さまつ毛の種類って?
逆さまつ毛とは何らかの原因でまつ毛が眼球に触れている状態のことをいいます。加齢性の逆さまつ毛には、どのような種類のものがあるのでしょうか?
■睫毛乱生(しょうもうらんせい)
まつ毛の生える方向や配列が乱れて、まつ毛の一部が角膜に触れる。原因は慢性的な炎症などと考えられ、加齢に伴って増えるとされている。
■眼瞼内反(がんけんないはん)
まぶたそのものが大きく眼球側に倒れ込んでしまうことで、まつ毛が角膜に触れる。原因は、主に加齢に伴いまぶたの周りの筋肉や腱膜などが緩むことで、まぶたの張りを保つバランスが崩れ、まぶた自体が眼球側に倒れることにある。多くは下まぶたに発症し、下まぶたを下に引っ張ったり、マッサージをしたりすると一時的に改善するのが特徴。
※睫毛乱生と眼瞼内反が混在している場合も多い。
逆さまつ毛の自覚症状はどんな感じ?
逆さまつ毛になると、まつ毛が眼球を刺激するために、目がチクチク・ゴロゴロする、涙や目やにが出る、目が充血する、光が異常にまぶしく感じるなどの症状が出て、違和感や不快感を常に伴います。
□眼の表面を刺激される違和感や痛みがある
□涙がたくさん出る
□目やにが出やすい
□光に敏感になる
□充血がある
□下まぶたを下げたりマッサージしたりすると、一時的に症状が和らぐ
特に「眼瞼内反」は放置していると、角膜炎から角膜潰瘍を引き起こし、角膜が白く濁ったり、傷ついた角膜から細菌などに感染して、視力障害を引き起こしたりする危険もあるので、注意が必要です。
これらの症状に思い当たったら、まずはかかりつけ医を受診し、必要に応じて呼吸器内科の専門医を紹介してもらいましょう。早期発見・治療で、進行も抑えられます。
逆さまつ毛の診察と治療って?
逆さまつ毛の診察では、まぶたの形状、まつ毛が角膜に接触しているかどうか、角膜がどの程度傷ついているかなどを調べます。
・「睫毛乱生(しょうもうらんせい)」の場合
まつ毛の生える方向や配列が乱れる「睫毛乱生」の治療では、程度によって単にまつ毛を抜くこともありますが、早ければ2週間ほどで再発してしまいます。
根本的に治療する場合は、局所麻酔の後、電気分解術などでまつ毛を根元から破壊して、永久的に脱毛します。
・「眼瞼内反(がんけんないはん)」の場合
「眼瞼内反」の治療は、手術が効果的です。まぶたの縁を切開した後、緩んだ筋肉や腱膜を切除する、ぬい縮めるなどしてまつ毛の向きを調整します。健康保険が適用され、局所麻酔をした後、30分弱の日帰り手術で治すことができます。
◆眼瞼内反の手術方法の一例
1.皮膚を切開する
2.眼輪筋(眼の周囲を取り囲む筋肉)をはがす
3.緩んだ眼輪筋をつまみU字型に縫合して縮める
4.皮膚を縫合する
手術後は内出血が起こることがありますが、2週間以内には治まり、傷跡も経過とともにほとんど分からなくなるので、元の生活が送れるようになります。角膜を保護する目薬もありますが、根治療法ではありません。
顔の表情にも影響するまぶたの手術は、機能改善だけではなく、術後の見た目も重要になります。まぶたの手術を専門に行っている眼科や形成外科を選ぶことが大切です。最も怖いのは角膜の傷が深くなることで生じる「角膜潰瘍」です。放置していると失明する危険もあるので、早めに眼科を受診してください。
取材・文/古谷玲子(デコ)