「そうだったんですね」黙って私の話を聞いたあと、男性は口を開いた。
「......こんなことを言っても、すぐには信用してもらえないかもしれません。でも、私は、自分が体験したことと、心理カウンセラーとしての経験で、あなたの悩みの解決策を見つけられるかもしれませんよ」
「え、ほんとうですか?」
思わず男性の顔を見ると、彼は私を安心させるように優しく微笑んでうなずいた。
「はい、私が15年前に来た同じ場所で、同じようにつらい思いをして叫んでいる人がいた。そんな偶然、めったにあることじゃないですよね。ですから、もしよろしければ......、ぜひ私にサポートさせていただけませんか。これも、お世話になった神社のご縁ですから、料金はいただきません。ただ、もし悩みが解決したらお願いがあるんです。あなたの経験がほかの人のお役に立てることがあると思います。そんなとき、私のお客さまに事例としてご紹介させていただいてもいいでしょうか?」
男性の提案を聞いた瞬間、私の中で何かが変わる予感がした。
「あ、そういうことでしたら......。お願いします!」
普段は優柔不断な私が、その場で迷わず「yes」と言ったことに、私自身が一番驚いた。
男性は「私は、大和(やまと)と言います」と、"心理カウンセラー"と書いてある名刺を差し出した。
私は、あわてて「あ、幸子と言います」と自己紹介をし、今後のことを決めるためにお互いの連絡先を交換した。
「今日はもう、次の約束に行かなければなりません。次回は、ここではなく、私のカウンセリングルームでお会いしましょう。連絡します!」
そう言った大和さんは、最後に、
「幸子さんの悩みの正体は、"リトル・ミー(小さな私)"が答えを知っているかもしれませんね」
と、言い残して去っていった。
「リトル・ミー?」なんのことだかわからなかったけど、「今、抱えている悩みが解決するかもしれない」という大和さんの言葉には、不思議な説得力があった。








