『「小さな私」の癒し方 幼少期の記憶で人生は9割決まる』 (心理カウンセラーmasa/KADOKAWA)第2回【全8回】
「なんだか生きづらい」「いつも同じようなことで悩んでしまう」と感じることはありませんか? もしかしたら、その原因は幼い頃の記憶にあるのかもしれません。書籍『「小さな私」の癒し方 幼少期の記憶で人生は9割決まる』(KADOKAWA)は、過去の経験、特に幼少期の記憶が、今のあなたの感情や行動に深く影響を与えていることを優しく解説します。「あの頃の小さな私」が抱えていた悲しみや不安、満たされなかった気持ちに気づき、理解することで、長年の心の痛みが少しずつ癒されていくはずです。より穏やかで自分らしい生き方を手に入れるためのヒントが詰まったこの本の中から、ありのままの自分を受け入れるための方法をご紹介します。
※本記事は心理カウンセラーmasa著の書籍『「小さな私」の癒し方 幼少期の記憶で人生は9割決まる』から一部抜粋・編集しました。
「15年前、まだ私が20代の半ばのころ、母がうつ病になりました。3年ほど、母の状態は悪くなる一方でした。薬の量や種類が増えて、最終的にお医者さんから、"もしかしたら、一生このままかもしれない"と言われてしまったのです」
男性は、ここでいったん、言葉を切ってこちらを見る。
私は、話の続きを聞きたくなり、小さくうなずいた。
「私は、正社員の仕事を辞めて、コンビニでバイトをしながら母の介護をしていました。でも、先が見えない一番つらい時期に、大学時代から7年付き合った彼女にもフラれ、自分の人生はどうしてこんなふうになっちゃったんだと苦しみました。そして、気がついたらここで思いをぶつけていたんです」
そうだったのか。
私の驚いた様子を見て、男性はまた笑顔になった。
「ところが母は、私がここであなたと同じように、"どうにかしてください!"と叫んだあと3ヶ月で、通院の必要がないほどに回復しました。私は今、心理カウンセラーとして独立して、以前の私と同じように"人生がうまくいかない"と悩む人のサポートをしています。それで、今日はたまたま近くに用事があったので、ここの神さまにお礼を言おうと立ち寄ったんです」
男性は、「だから、"どうにかしてください!"と叫んでしまいたくなる人の気持ちがわかるんですよ」と言って優しい笑顔を浮かべた。
男性は私の様子を気遣いながら問いかけてきた。
「差し支えなければ、いったい何があったのか、お聞かせいただけませんか?」
温かみのある話し方に安心した私の口からは、自然と言葉が出てきた。
「......パート先の人間関係でイヤなことがあって......。お局さんみたいな人がいるんです」
「そうでしたか」と、男性は大きくうなずいた。
その仕草に勇気づけられ、勢いづいて私は話を続けた。
「主人に相談しても、ぜんぜん聞いてもらえないし、子どもたちも最近では、"お母さん、うるさい"と言うばかりなんです」
私の目を見ながら、「わかります」と言うように、男性はうなずく。
「でも実は、パート先の問題は、今に始まったことじゃなくて......。私、なかなか断れないせいか、よくいろんな仕事を押し付けられたり、1人で残業させられたりして、ソンな役割ばかり回ってくるんです」
いっきに話して、私はホッと一息ついた。