ひざの痛みは関節リウマチの恐れも...自己判断は禁物! 覚えておきたいひざの痛みの予防と治療

ひざの調子が悪い人にとって、痛みが増す寒い季節がやって来ました。年齢を重ねてひざが痛いと、「年のせいだから」と勝手に判断をしていませんか? 痛みが続くようならば、医療機関で適切な診断と治療を受けることがなによりです。そこで今回は、東邦大学医療センター大森病院 人工関節治療センターの中村卓司(なかむら・たかし)先生に「ひざの痛みの予防と治療」についてお聞きしました。

【前回】もう「ひざの痛み」に悩まない!「変形性膝関節症」セルフチェックとひざの仕組み

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関節リウマチの恐れも

自己判断は禁物

年齢を重ねてひざが痛いと、その原因は「年のせい」と思いがちです。

そもそも変形性膝関節症も加齢に伴い発症しやすいため、その病気に違いないと信じている人もいます。

「中には、60歳以降に発症した関節リウマチが原因のこともあります。高齢で発症する関節リウマチは増えているのですが、高齢でひざが痛むのは変形性膝関節症と、クリニックの先生方も思い込んでいることがあるのです」と中村先生は注意を促します。

やはり、自己判断は禁物です。

ひざの痛みが続くようならば医療機関を受診し、原因を突き止めて適切な治療を受けることがなによりです。

軽症の変形性膝関節症ならば、消炎鎮痛剤の内服や外用薬、関節内へのヒアルロン酸注射、運動療法などが行われるのが一般的です。

「ヒアルロン酸注射は、関節液の成分のヒアルロン酸を補うことで、痛みや炎症を和らげる作用があります。しかし、関節の変形が進んだ状態では、効果は期待できません。注射を続けても痛みが治まらないときには、手術といった別の治療の選択を考えるべきです」と中村先生は話します。

手術以外の方法では、保険適用外の「再生医療」を行う医療機関もあります。

自分の血液を培養し、ひざに戻して軟骨を再生する方法です。

自費診療で高額ですが、効果が全く得られないこともあるので、事前に治療のメリット・デメリットをよく聞いてから受けることが重要になります。

いまのところ、歩行困難などの重症の場合の治療の柱は、やはり、手術になります。

《よく似ている症状 ひざ関節のリウマチ》

指などの関節の痛みを伴う関節リウマチは、30代や40代の働き盛りの女性に多い病気です。が、60代以降に発症すると、ひざ関節や肩関節など大きな関節に痛みが出るため、変形性膝関節症と間違われるケースが少なくありません。ひざ以外の関節にも違和感がある場合は要注意といえます。

手術や器具の進歩で登山や旅行などもOKに

心筋梗塞や脳梗塞予防で血液サラサラの薬(抗血栓薬)を飲んでいると、「手術は適用外」といわれることがあります。

手術での大出血を防ぐため、手術の際に抗血栓薬の服用を止めなければならず、血栓が生じて脳梗塞などのリスクが上がるからです。

「当センターでは、出血の少ない技術の導入により、抗血栓薬を服用した状態で手術を行います。また、痛み止めの適切な使用で術後の痛みも最小限に抑えています。ご高齢の方でも安心して手術を受けられる体制を整えています」と中村先生は話します。

手術は、すねの脛骨を削る「高位脛骨骨切り術」や、人工関節に置き換える「人工関節置換術」が代表的な手術法です。

関節の変形の状態によって手術法が変わります。

また、ミリ単位で正確に骨を削るため、コンピューターナビゲーションシステムも導入されて、より精密で質のよい手術が行われているそうです。

「高位脛骨骨切り術は、O脚も治すことができますが、比較的年齢が低い方の適応になります。人工関節置換術は、人工関節自体の精度がよくなっているので、術後のスポーツや旅行など、アクティビティー(活動性)の高い生活にも適応できます」と中村先生。

いずれにしても、ひざの痛みを抱えて生活の質を下げないように、適切な治療を受けることが大切。

軽やかな足取りで毎日を過ごせるように、ひざの痛みは放置しないようにしましょう。

生活の質を下げないために

覚えておきたいひざの痛みの予防と治療

[食事]

適正な体重をキープする。肥満気味の人は減量を

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体重が1kg増えるとひざに3kgの負荷がかかります。食べ過ぎないようにし、肥満気味の人は体重を2~3kg減らす努力を。

[運動]

太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える

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(1)脚上げ体操
床から10cmくらいまで、片足のかかとをゆっくり上げる。反対の脚も同様に。10回×3本を1セットで、1日3回程度行いましょう。

(2)かかと上げ&止め体操
いすに座り、片足のかかとを床から20cmくらいあげて5秒止める。反対の脚も同様に。10回×3本を1セットで、1日3回程度行いましょう。

筋肉はひざを守るサポーターの役割を果たします。日頃から太ももの筋肉を鍛えておくとひざ関節への負荷を軽減できます。

[習慣]

温めて血行をよくする

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市販の関節サポーターの活用やひざ掛け、入浴でのひざのマッサージなどで血流をよくし、筋肉をほぐすとよいでしょう。

[習慣]

正座は避ける、トイレは洋式に

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正座や和式のトイレは関節を曲げた状態を続けることになり、ひざに大きな負担をかけます。いすや洋式トイレの活用を。

その他に
痛みがひどくなったら我慢せずに主治医に相談しましょう。

治療するなら

●ヒアルロン酸注射
関節液の成分のヒアルロン酸を関節内に注入することで、関節の滑りをよくして炎症を抑え、痛みを軽減します。重症の場合は効果は期待できません。

人工関節置換術
人工関節に置き換える手術で、近年人工関節の精度が非常に上がっています。20年以上も持ち、術後は登山などのハードな運動も楽しめます。

運動療法
主に太ももの筋肉を鍛え、ひざの関節を支える筋肉を強化します。身体状態によって運動強度は異なるため、方法は主治医や理学療法士に相談を。

高位脛骨骨切り術
すねの脛骨をミリ単位で削って関節のゆがみを正す治療法です。O脚も治ります。ただし、手術の適応は比較的若い方となっています。

その他にも
保険適用外でひざの再生医療も行われています。また、手術ではロボット支援下手術の開発も進んでいます。医療は日々進歩しているといえます。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>
東邦大学医療センター大森病院 人工関節治療センター
センター
中村卓司(なかむら・たかし)先生
1993年東邦大学医学部卒。米国留学などを経て、2012年に東邦大学医学部付属大森病院整形外科准教授・同人工関節治療センターのセンター長に就任、現在に至る。

この記事は『毎日が発見』2021年11月号に掲載の情報です。

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