ひざの調子が悪い人にとって、痛みが増す寒い季節がやって来ました。年齢を重ねてひざが痛いと、「年のせいだから」と勝手に判断をしていませんか? 痛みが続くようならば、医療機関で適切な診断と治療を受けることがなによりです。そこで今回は、東邦大学医療センター大森病院 人工関節治療センターの中村卓司(なかむら・たかし)先生に「変形性膝関節症のセルフチェックとひざの仕組み」についてお聞きしました。
ご存じですか? 「変形性膝ひざ関節症」
ひざ関節の軟骨がすり減る、なくなるなどでひざが変形し、痛みや腫れをきたす
患者数は約2000万人
(自覚症状のある人)で、女性は男性の1.5〜2倍
セルフチェック
①②は初期段階、③④は少し進行している段階、⑤⑥はかなり進行している段階。
あてはまるものがあったら、専門医を受診して相談してみましょう。
寒い時期に悪化するひざ
体重増も要因
寒い季節には「ひざが痛い」と感じることが増えます。
気温が低いと血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉も縮んで動きが鈍くなるため、ひざに痛みを抱えている人は悪化しやすいのです。
そんなひざの痛みに悩む人は、加齢とともに増加傾向になっています。
典型的なのは、いすから立ち上がるときや階段を上り下りするときに痛みが走るようなケースです。
その代表的な原因が、変形性膝関節症です。
「ひざの関節の骨と骨の間にある軟骨や半月板がすり減ることで、関節が徐々に変形し、変形性膝関節症の痛みが生じるようになります。軟骨が2mm以上すり減ると痛みにつながります」と中村卓司先生は説明します。
ひざの軟骨は、太ももの大腿骨とすねの脛骨のそれぞれの表面に3~4mm程度、カバーのようについていて、滑るような仕組みでひざを動かしています。
軟骨には痛点がないので、上下でこすれ合っても痛みは感じません。
軟骨がすり減って動きが悪くなると、靱帯や半月板に負荷がかかります。
靱帯や半月板には神経が通っているため痛みを感じるのです。
「高齢になって脚の筋肉が弱くなるとひざへの負荷が大きくなります。筋肉はひざのサポーターの役割も担っているからです。そのため筋肉量が減ると変形性膝関節症になりやすいのです」と中村先生。
筋力の低下に加え、両ひざが外側に曲がったO脚も、関節に負荷をかけます。
O脚は、子どもの頃の正座などの習慣で引き起こされることがあり、年齢の高い方でのO脚は少なくありません。
一方、体重が増えることもひざへの負担を重くします。
「体重が1kg増えると、ひざには3kgの負荷がかかるといわれています。つまり、体重の3倍の負荷がひざにかかるのです。2kg体重が増えるとひざへの負担は6kgにもなります。肥満気味の方は、体重を落とすだけでも、ひざの痛みの軽減につながります」と中村先生はアドバイスします。
もともとひざの調子が悪いのに、寒くなって痛みが増すとますます歩くのが億劫になりがちです。
家にじっとしていると運動不足に拍車がかかり、体重が2~3kg増えるようなことにもつながります。
体重が3kg増えるとひざへの負担は、なんと9kgです。
「ひざに不調を抱えている人が自己流で運動をすると、かえってひざに負担をかけることもあります。医療機関を受診する、あるいは、主治医に相談してから運動を行うようにしましょう」と中村先生。
ひざはこのようになっています
ひざ関節は太ももの大腿骨とすねの脛骨をつなぎ、それぞれの表面に3~4mmの軟骨がカバーのようについています。
加齢に伴い軟骨の弾力性が失われてくると表面がすり減り、関節が変形していきます。
これが変形性膝関節症です。
軟骨には痛みを感じる神経が通っていないため、1mm程度すり減っても痛みは感じません。
2mm以上すり減ると、関節の左右にある半月板や骨と骨をつなぐ靱帯に負荷がかかります。
半月板や靱帯には、痛みを感じる神経が通っているため痛いと感じるのです。
この状態が進行すると大腿骨や脛骨もすり減って変形してしまうのです。
そして、歩行困難などの重い症状につながります。
《X線検査で見ると》
変形性膝関節症は、立った状態でひざのレントゲン検査をすると大腿骨と脛骨の変形がはっきりと分かります。必要に応じてMRI検査を行うなど、詳しい検査を行った上で治療法が決められます。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史