足の指の間がかゆい、水ぶくれができる、皮がむける...これらはすべて水虫の症状です。日本人の5人に1人が水虫に感染しているといわれています。水虫の原因は「白癬菌(はくせんきん)」というカビ(真菌・しんきん)です。白癬菌による感染症を「白癬」といい、実はこのカビ、足だけでなく手や頭など体のいろいろなところに棲みつくことができるのです。
そんな白癬菌の性質や特徴、治療法や予防法を、白癬治療の第一人者、仲皮フ科クリニック院長の仲 弥先生に伺いました。
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なりやすいのは男性?女性? 靴は捨てる?
日常生活を送る上で、知らず知らずのうちに感染してしまう白癬菌。どのような人が感染しやすいかなど、みなさんの気になる質問にお答えします。
Q:男性と女性で白癬になりやすいのはどちらですか?
A:白癬の患者数の男女比は6:4です。
患者数で見ると男性の方が多くなります。これは男性がなりやすい体質だということではなく、男性の方がなりやすい環境にいる人が多いということです。靴を長時間履いていると靴の中の湿度が高くなり、高温多湿を好む白癬菌の活動も活発になります。そのため仕事で長時間靴を履いている人が多い男性の方が、女性に比べて患者数が多くなるのです。
しかし昨今は女性の社会進出が進み、女性の白癬患者も昔に比べて増えています。また、冬に履くブーツにより足が高温多湿の状況に置かれ、冬に白癬の症状で来院される方も多くなりました。できるだけ足の通気性を良くするため、オフィスではサンダルに履き替えるなど工夫をしてみてください。
Q:白癬菌に感染しやすいのはどのような人ですか。
A:汗をかきやすい体質の人や指が太めの人は感染しやすいです。
白癬菌は高温多湿のところに棲みつきやすいため、汗をかきやすい体質の人は感染しやすくなります。特に足や手のひらが常に湿った状態の人は感染しやすくなります。
また、足の指が太めの人も同じです。指が細くすっと伸びている人は指と指の間にすき間があり通気性が良いのですが、指が太いとすき間がない分だけ指の間の湿度が上がりやすく、白癬菌好みの環境をつくり出してしまうのです。
Q:足の水虫だと診断されました。靴は捨てた方がいいですか?
A:靴は捨てなくて大丈夫です。
これはよく聞かれる質問ですが、靴を捨てるなんて不経済なことをしなくても大丈夫です。白癬菌は足からはがれ落ちたアカの中に潜んでいますので、ぞうきんなどで水拭きして靴をよく乾燥させることで除去することができます。スリッパやサンダルも同じです。靴は毎日同じものを履くのではなく、2~3足を履きまわすことをおすすめします。
Q:家族に水虫の人がいます。洗濯物を一緒に洗っても感染しませんか?
A:洗濯を一緒にしても感染しません。白癬菌は水で洗い流すことができます。衣服に付いている白癬菌は、洗濯機で洗えば水で流れて除去できますので、洗濯を一緒にしたからといって感染することはありません。
お風呂も同じです。水虫の人の後にお風呂に入っても、湯船で感染することはありません。
ただし、足ふきマットなどは湿った状態にあるため、白癬菌の温床になりやすいので、家庭内感染を防ぐために個々で専用のものを用意したり、こまめに洗うなどしましょう。
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取材・文/ほなみかおり
慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部皮膚科医長、同・皮膚科専任講師を経て、1996年に仲皮フ科クリニック(埼玉県川越市)を開業。真菌のエキスパートとしてメディアに多数出演。埼玉県皮膚科医会会長、日本臨床皮膚科医会参与(前副会長)、日本皮膚科学会代議員、埼玉県皮膚科治療学会理事、日本医真菌学会評議員、日本皮膚科学会認定専門医。