夜間頻尿を訴える人は男女ともに加齢に伴って多く認められています。夜間の排尿時に転倒して、骨折などのけがをする危険が増え、寝たきりの原因になることもある夜間頻尿。いったいどういう病気なのでしょうか? 東京慈恵会医科大学准教授の鈴木康之さんにお聞きしました。
夜間頻尿の原因は?
夜間頻尿は排尿のために就寝中に1回以上起きなければならないという悩みがあり、日常生活に支障を来している状態です。
加齢に伴って男女とも多く認められる症状で、日中に眠気をもたらし、仕事や家事に影響を及ぼすなど生活の質を低下させます。また、夜間の排尿時に転倒して、骨折などのけがをする危険が増え、寝たきりの原因になることもあります。
夜間頻尿の原因には多くの病気が複雑に絡み合っているといわれています。最も多いのは「夜間多尿」で、24時間尿量のうち夜間就寝中の尿量が33%以上になることをいいます。
■夜間頻尿の主な原因
・加齢による心臓や腎臓の働きの低下や尿量を減少させる抗利尿ホルモンの分泌の低下などによる夜間尿量の増加
・尿をためたり、出したりする機能が衰える排尿障害
・睡眠障害
過度な水分摂取の他、加齢とともに心臓や腎臓の働きが低下したり、夜間に尿を作らないようにする抗利尿ホルモンの分泌が低下したりして引き起こされます。また高血圧、糖尿病、心疾患、睡眠時無呼吸、メタボリックシンドロームなども関連しているといわれています。
その他、尿をためたり出したりする機能が衰える排尿障害や、睡眠障害なども原因に挙げられます。
排尿自体は「体中の老廃物を出す」という大事な役割があるので、夜間頻尿に神経質になり過ぎないことも大切です。
■排尿のメカニズム
診察では関連する病気の有無の他、内服薬の内容、水分の摂取状況について聞かれます。診断に有効なのが排尿時刻とそれぞれの排尿量などを自分で記録する「排尿日誌」です。昼夜の排尿回数、1回の排尿量などから、膀胱にためられる尿量の状態や夜間多尿の有無を知ることができます。
排尿の際、「尿の勢いがなくなってきた」「尿の色が乳白色や赤褐色になっている」などに気付いたら、深刻な病気の可能性もあるので、早めに泌尿器科を受診する必要があります。
■排尿日誌をつけよう!
1~3日間の記録で、排尿の状況が客観的に把握でき、原因を知る手助けにもなる。尿量を量る容器は、不要なペットボトルの上側を切って目盛りをつけたものが便利。
排尿量と回数などの基準値
1日の排尿量:1ml × 24時間 × 体重
例えば体重40kgの場合は、1×24×40=960mlが基準値だが、尿路感染や結石予防のためには2割増しくらいが良いとされている。1日2500ml以上は多尿。
●1回の排尿量の基準値:200~400ml程度
●1日の排尿回数の基準値:7回以下
夜間頻尿の治療は原因ごとに適切に行う必要があります。
糖尿病、心疾患など原因となる病気があれば、まずはその治療を行います。「膀胱に尿をためる」「血流を良くする」「抗利尿ホルモンの分泌を促進させる」などの薬物を使って治療する方法もあります。
■夜間頻尿の主な治療法
・原因となる病気の治療
・飲水習慣の改善、運動療法、
・睡眠障害の対策
過度の水分摂取を避ける、規則正しい生活を心がける、適度な運動をする、就寝環境を整えるなど生活習慣を見直すことで改善するケースも多いとされています。
睡眠障害には睡眠薬も有効ですが、安易に頼るより、原因を取り除くことが先決です。
■快適な睡眠を取るためにできること
1. 就寝4時間前からのカフェイン摂取を避ける
2. 規則正しい生活と適度な運動を心がける
3. 就寝前1~2時間はぬるめの入浴、軽い読書やストレッチなどでリラックスする
4. 目覚めとともに日光を浴びて体内時計を整える
5. 寝酒は睡眠の質の低下と中途覚醒を招くので控える
6. 温度、湿度、明るさ、音などに配慮して眠りやすい寝室環境を整える
※8時間睡眠にこだわらなくてよい。よく寝ていても昼間に強い眠気がある、強いいびき、脚のむずむず感がある場合は睡眠時無呼吸やむずむず脚症候群の可能性があるので、専門医へ。
生活習慣を見直すことは夜間頻尿だけでなく、脳卒中や心筋梗塞などの予防にも繋がります。
取材・文/古谷玲子(デコ)