血液をろ過する、体内環境を一定に保つ、血圧を調整する...などの機能をもつ腎臓。ここには何千種類もの成分を仕分けて尿を作り出す「尿細管」という器官がありますが、この機能が低下すると、尿を濃縮して作ることが難しくなるため、体内の水分量は減る傾向があります。いったいどのような症状が起こり得るのでしょうか? 東京慈恵会医科大学附属病院腎臓・高血圧内科診療部長の横尾 隆先生に聞いてみました。
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尿細管障害を防ぐには日頃の脱水症状予防が肝心
朝食前と夕食前に体重を測り、その体重差が+プラス0.5~1㎏あり、この状態が1週間から10日程度続くと、尿細管障害の可能性が高くなります。
「体内に余った水分は、浮腫(むくみ)として体内にたまります。夜寝るとそれらの水分が腎臓に集まりますが、尿細管障害で尿を濃くできないために、夜間に尿が作られ、尿意を感じて目が覚めるのです」と横尾先生。
チェックポイントは、日中にそれほど水分をとっていないのに、夜間に尿意で起きてしまうことです。夜間頻尿とは夜間、排尿のために起きなければならない症状をいいます。医療機関を受診しても、尿細管障害だけでは検査で異常は見られません。
医師から女性の場合は過活動ぼうこう、男性の場合は前立腺肥大症と診断され、薬を出されると同時に「寝る前の水分を控えるように」と言われます。これが脱水に拍車をかけ、さらに尿細管の機能低下を進行させるので注意しましょう。
「トイレの回数は1日7回以上が目安です。日中、トイレにあまり行かず、夜間頻尿を自覚している人は、尿細管の機能低下が疑われます。健康な腎臓は、水分をとり過ぎれば尿として排出しますが、尿細管障害に陥っているとうまくいかず、夜間頻尿につながるのです。尿細管障害を防ぐには、日頃からの脱水症状予防が肝心となります」
【健康診断で「異常なし」と判定されても、こんな人は要注意!】
☑チェックリスト
□あまり汗をかかないので、水分は控えめにしている
□夜中にトイレに行きたくなって目が覚めるので、水分は控えめにしている
□血圧が高いので降圧剤を飲んでいる
□疲れやすい、疲れが取れない
□過活動ぼうこう(の疑いがある)と診断されたことがある
□トイレに行くのは1日に2、3回くらいだ
□尿の色が変だと感じたことがある
□靴や指輪がきつくなった、むくみやすい
脱水症状が続くことで腎機能は低下します。夏場の水分を控えるようなことは、腎臓にとってよくありません。また、高血圧症の治療薬の中には、脱水症状につながりやすいものもあります。腎臓を守るには、日頃の習慣の中で何が脱水に結びつくかを知り対策を立て、小まめな水分補給を行いましょう。
サウナとホットヨガに要注意!
腎機能の低下には脱水症状が深く関わります。そのため、サウナやホットヨガなど、人為的に多量の汗をかくときには注意が必要です。水分補給をしないと熱中症につながり、脱水症状で腎臓に大きなダメージを与えかねません。脱水にはくれぐれもご注意を。
横尾 隆(よこお・たかし)先生
東京慈恵会医科大学附属病院腎臓・高血圧内科診療部長。東京慈恵会医科大学卒、英国UCLへの留学などを経て2013年より現職。腎臓病の診断・治療のスペシャリストとして、腎臓の再生医療の研究にも尽力。