「よく眠れない」といったことは、加齢に伴う生体リズムの乱れなどで起こりがち。
でも、単に寝つきが悪いのではなく、脚の不快感で目が覚めてしまうことはありませんか?
今回は、東邦大学呼吸器内科准教授で睡眠時呼吸障害センター長の髙井雄二郎先生に「むずむず脚症候群」の治療法について教えていただきました。
むずむず脚症候群では、脚の不快感で夜ぐっすり眠ることができず、日中は強い睡魔で活動量が低下しやすくなります。
ただし、うつ病や不眠症など睡眠に関わる別の病気のこともあるので診断が重要です。
夜眠れない、日中に強い睡魔に襲われるといった症状に気付いたら早めに睡眠障害の治療を行う医療機関へ。
「むずむず脚症候群は、うつ病などの薬の服用でも発症することがあります。また、カフェインなどの嗜好品でも発症します。 つまり、誰もがなり得る病気といえるのです。原因を確かめた上で、適切な治療を行うことが重要になります」と髙井先生は注意を促します。
治療では、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などの薬や、カフェイン、アルコール、ニコチンなど、むずむず脚症候群の原因となるものをまずやめます。
鉄欠乏性貧血などの別の病気はきちんと治療を受け、眠りやすい環境を整え、就寝前の軽い運動、入浴後のストレッチやマッサージなどを行います。
それでもむずむず脚症候群の症状が改善しないときには、薬による治療を受けることになるのです。
「重症度が高いときの内服薬『プラミペキソール』は、長期的な投与で約30%の患者に重症度が増してしまうと報告されています。痛みやしびれの強い患者への内服薬『ガバペンチン』は、ふらつきの副作用があり、貼るタイプの『ロチゴチン』も皮膚症状の副作用があります。薬も万能とは言えません」
「こむらがえり」とは?
夜中に脚がつる「こむらがえり」が 眠りを妨げることがあります。
こむら返りは、ふくらはぎなどの筋肉が収縮して痛みを伴います。
筋肉細胞のミネラルバランスが崩れることで、筋肉が勝手に収縮するようなことが起こると考えられています。
つまり、こむら返 りは筋肉細胞に関わるのです。
一方、むずむず脚症候群は、脳の神経伝達物質がうまく伝わらないことで 筋肉が動いてしまうため、こむら返りとは原因が全く異なります。
ちなみに、 こむら返りも降圧薬や骨粗鬆症予防薬などで発症しやすくなります。
薬の服用をしていて症状が出たときには主治医に相談しましょう。
こむら返りの予防は、運動前後の軽いストレッチ、ミネラル分を含むこまめな水分補給、そしてマッサージといわれています。
主な検査と治療
■検査
終夜睡眠ポリグラフ検査
睡眠中に医療機器を装着して一晩測定し、睡眠状態と身体症状を調べる検査です。
睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群な どの診断につながります。
■治療
薬物以外の治療
規則正しい生活と寝る前の軽い運動、入浴後のストレッチやマッサージ、ノンカフェインなどが指導されます。
薬物治療(ドーパミン作動薬)
保険適用の内服薬「プラミペキソール」と貼り薬の「ロチゴチン」の2 種類があります。
貼り薬を処方されるケースが多いのですが、皮膚のかゆみに悩まされる人も。
薬物治療(GABA系神経薬)
保険適用は「ガバペンチン(エナカルビル)」。
もともと抗てんかん薬でしたが、むずむず脚症候群の薬として薬事承認されました。
高齢者ではふらつきの副作用があります。
ま た、腎不全の人には使えません。