冷え性や生理不順、むくみに便秘...「自分の体質だから」とあきらめていませんか? その悩み、毎日の食事などを少し意識すれば解決するかもしれません。ヒントとなるのは中医学(中国伝統医学)のセルフケア。そこで、東洋と西洋の医学に精通した医学博士・関隆志さんの初著書『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』(すばる舎)から、中医学をベースにした「不調を治す食事&運動の考え方」を連載形式でお届けします。
「苦味」は毒素を体外に排出し、「辛味」は痛みをやわらげる
現代の栄養学では、糖質(炭水化物)やたんぱく質など栄養素をもとにして食材を分類するのが一般的ですが、中医学では、それとはまったく違った独自の分類方法を採ります。
その分類の際に基準となる代表的な要素が、「食材の味」です。
中医学においては、その食材が持つ味が異なると、体へ与える作用が異なることがあることを発見しました。
具体的には「苦(く)・辛(しん)・甘(かん)・酸(さん)・鹹(かん)」という五味(ごみ)に、薄味を意味する「淡(たん)」を加えた「六味(ろくみ)」で分類するという考え方です。
六味は、それぞれが特定の五臓に作用することがあると考えられており、辛は肺、甘は脾、酸は肝、苦は心、鹹は腎、淡の味がする食材は脾と五臓全般に影響することがあるとされます。
順番に解説しましょう。
まず最初の「苦味」とは、これはそのまま、にがうりや茶葉などが持っているような苦味のことです。この味を持つ食材は、便やむくみ、毒素などの不要物を体外に排出し、体の熱をとったり、乾燥させたりする作用があると言われています。
次の「辛味」とは、より一般的な読み方では「から味」のことです。生姜や唐辛子に代表されるからい味のことです。この味を持つ食材は、体を温め、ストレスなどで滞った気や血を巡らせ、痛みをやわらげる効果があるとされています。
「甘味」は言葉のイメージそのまま、砂糖やはちみつ、果物などの甘い味のことを指します。この味を持つ食材は、気力を補うとともに、消化を促進します。また、さしせまった痛みをやわらげる作用もあるとされます。
同様に「酸味」もイメージしやすいですね。レモンや梅、ざくろなどの持つ酸味、あるいは渋味のことです。この味を持つ食材は、たとえば汗や下痢が止まらないなど、体の"ゆるんだ"状態を整え、体液の過剰分泌を抑制する作用を持っているとされます。
五味の最後となる「鹹味」は、難しい漢字が使われているのでイメージしにくいかもしれませんが、これは「塩からい味」のことを意味しています。塩や昆布、海苔、エビなどが代表で、この味を持つ食材は、体内にできた固いもの(たとえば、筋肉などが凝って固くなっているところ)を柔らかくしたり、便通をよくしたりする効果があるとされています。
そして、前述したように「淡味」とは「あっさりとした薄味」のこと。食材としてはハトムギ、冬瓜、白菜などがあります。淡味の食材は排尿を促し、体内の滞っている水分を排出するとされています。また、食欲促進の効果もあるとされます。
ちなみに、食材によっては複数の味を持ち合わせているものもあります。
また六味による分類では、食べたときの味とは違う分類をされている食材もあります。すべての食材が、食べたときの味と体に対する働きが一致するわけではありません。その点には注意してください。
うまく味わえないときには、心が疲れているのかも...
味は、舌で感じとり、舌は食べるための器官であるだけではなく、臓器の心とも密接に関係していると言われています。
そのため、味覚が衰えているときには、胃腸の働き(脾)が弱っていたり、精神や情緒の状態、いわゆる「メンタルヘルス」に問題が生じていることがよくあります。
もしいま、あなたがうまく食べものの味を感じられていないのなら、十分な休息や睡眠をとり、胃腸や心や精神の状態をいたわるようにしましょう。
あるいは、半日~1、2日程度の短期間の断食をしてみるのもおすすめです。断食をすると、胃腸が休まり、味覚がリセットされるとともに、精神の状態もリセットされることがよくあるからです。
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理論よりも実践がメイン。4章にわたって体質・体調に合わせたレシピやツボを刺激するエクササイズが写真付きで紹介されています