日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」

最近、「百歳長寿」が話題になっています。長生きをするなら、できるだけ健康な状態を保ちたいものです。さまざまな秘訣のなかで、毎日、無理なくできることの一つが、発酵食を摂ること。発酵食を見直してみると、おいしくて、種類も豊富、そして腸の調子を整えるカギにもなります。「腸の健康は、元気で長生きにつながります。長寿=腸寿です」と唱える腸の専門医、松生恒夫先生にお話を伺いました。

日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」 2003p016_01.jpg

世界でも類を見ない発酵大国・日本

日本は世界のなかでも発酵食品が豊富にあります。

みそ、しょうゆ、酒、みりん、酢など日本料理に欠かせない調味料は全て、カビの一種、麹菌を使って発酵させたものですから、和食の源は発酵にあるといっても良いでしょう。

また漬物に代表される発酵食品が各地にあります。

それぞれに味わいがあり、種類は数え切れません。

「これまで、麹菌で発酵したごぼうや米が腸内のビフィズス菌を増やすことは分かっていました。その仕組みの一端が判明したのは、2016年、広島大学の加藤範久教授の研究です。米麹菌から出るたんぱく質分解酵素が、ビフィズス菌を著しく増やすことが、動物実験で証明されたのです。さらに注目したいのは、ごく少量にもかかわらず、しっかりとビフィズス菌を増やすこと。麹菌は、日本の食卓に大変なじみが深いものです。麹菌から、新しい機能性食品や医薬品などが開発されることも期待されています」 

松生先生は、身近な食べ物として、日本の食卓によく並ぶ漬物にも注目しています。

「昔は、なすやきゅうり、白菜など季節に合わせた野菜を漬物で食べていました。この漬物も発酵食品の一つで、乳酸菌が腸の働きを良くするのに一役買ってくれます。乳酸菌は野菜の発酵でもできます。植物性の乳酸菌は、動物由来の乳酸菌よりも消化に強いことが分かっています。生きたまま腸に届くことで、腸内を酸性に傾け、それが善玉菌であるビフィズス菌の働きを助けると考えられます」

主な発酵食品

みそ日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」 2003p016_03.jpgみそ汁やみそ漬けなど、和食には欠かせない保存食品であり、麹で発酵させた発酵食品。材料別に、米みそ、麦みそ、豆みそがあり、地方によって味わいの異なるみそが生産され、好まれている。昔は、たんぱく源としても重宝された。

しょうゆ日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」 2003p016_05.jpg
穀物を塩漬けにしてつくる醤(ひしお)の一種で、しょうゆは大豆、小麦、食塩を麹菌、乳酸菌、酵母菌などで発酵させてできる液体調味料。濃口、薄口などの種類があり、用途によって使い分けられる。調理中に味付けするほか、刺身などに直接つける。

漬物日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」 2003p016_02.jpg多くは野菜を塩漬け、ぬか漬け、酢漬けなどにして長期保存させつつ、味や風味を良くしたもの。香の物とも。地方により独自の漬物がある。一時期は、減塩の観点から摂り過ぎを注意されたが、最近、発酵食品として注目されている。

納豆日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」 2003p016_04.jpg納豆は、納豆菌によって大豆が発酵してできる。発酵によりできるネバネバのなかには「ナットウキナーゼ」が含まれ、血液をサラサラにする効果がある。また、カルシウムが骨に吸着するときに必要な「ビタミンK」も発酵によりできる。

日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」 2003p016_06.jpg穀物や果実など糖分が含まれる原料をアルコール発酵させ、さらに酢酸発酵させたものが、酢。日本では米酢が伝統的に使われている。りんご酢、ワインビネガー、バルサミコ酢なども。強い酸味があり、健康志向のなか注目されている。

甘酒日本は世界でも類を見ない発酵大国⁉ 知っておきたい「身近な発酵食品」 2003p016_07.jpg「米麹の甘酒」と「酒かすの甘酒」の2種類がある。米麹は、みそや日本酒をつくるために米を麹菌で発酵させたもの。酒かすは米麹を酵母などでさらに発酵させたもの。どちらの甘酒も腸の善玉菌を増やす食物繊維やオリゴ糖が含まれる。

そのほかにも...
最近人気の発酵バターは、日本で一般に知られるバターに乳酸菌を入れたもの。独特の香りが出る。生ハムやサラミも肉を熟成させる期間を経て、発酵による香りづけがされている。また日本酒はもちろん、ビールやワインなども発酵食。

【松生クリニックの症例】甘酒で腸内環境・免疫力up!

「慢性便秘症で来院している患者さんに、市販の缶入り甘酒190mlを毎日飲んでもらいました。その結果、19人中18人に『便通の改善(楽に排便できる)』、『排便回数が増加した』、『薬の量を減らせた』などの改善が見られました。便の形状やにおいも良くなった傾向がありました。甘酒は腸の働きを促進するといえるでしょう。動物実験では、甘酒が腸内環境を改善するデータが出ていますが、人間でも同じ効果があるようです」

取材・文/三村路子 イラスト/コウゼンアヤコ

長生きや健康にも深い関係のある発酵食に関する記事リストはこちら

 

松生恒夫(まついけ・つねお)先生

1955年東京生まれ。松生クリニック院長。医学博士。腸疾患治療の第一人者。『「腸寿」で老いを防ぐ一寒暖差を乗りきる新養生法』(上写真・平凡社新書)など著書多数。

61KlpIgjVEL012.jpg「腸寿」で老いを防ぐ一寒暖差を乗りきる新養生法

(松生恒夫/平凡社新書)

今回の特集で「腸寿」についてご紹介くださった松生先生の著作。

不調を訴える人、特に腸のトラブルを抱える人が急増するなか、長寿の要である「腸」を健康に保つためにはどうすればよいかを教えてくれる一冊です。

この記事は『毎日が発見』2020年3月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP