紀元前から使われていた!世界最古の調味料「お酢」の豆知識

どの家庭にも常備されている調味料の一つといえば、酢。世界で最も古い調味料ともいわれ、栄養が多く含まれている健康食品としても知られています。東京農業大学教授で醸造食品に詳しい前橋健二さんにその歴史や効能をお聞きしました。

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紀元前5000年前にはあった酢。日本には奈良時代に伝来

酢はアルコールが発酵したもので、紀元前5000年ぐらいからありました。自然に果実や樹液などが発酵してアルコールができ、酢酸菌が入ってお酢になったと考えられています。その後、醸造酒が造られるようになり、これに酢酸菌を加えてお酢を造るようになりました。
 
日本で酢が調味料として使われるようになったのは、奈良時代です。大阪の和泉(いずみ)酢が発祥で、中国から入ってきました。日本では、酒を造り、できた醪(もろみ)を放置するという方法で酢を造っていました。そのころ、酢は高級品で、高貴な人が膳に塩と酢、醤(ひしお)、酒をのせ、刺し身などにつけて食べていたのです。
 
江戸時代になってから、庶民にも広まりました。広まった理由は酒粕を原料にした粕酢ができたためです。
 
酒粕が原料なので安価な上、各地で醸造されるようになりました。押しずしや握りずしに使われ、庶民の口にも入るようになりました。

 

全世界で4000種以上!酒のあるところに酢あり

酢は、大きく醸造酢と合成酢に分けられ、醸造酢はその原料から、穀物酢、果実酢に分類されます。穀物酢は、米、麦などの穀類が原料となります。
 
海外では果実酢が多く、ワインの産地ではワインビネガーや、りんごが原料のシードルからアップルビネガーが造られています。麦が原料のモルトビネガーは、ビールがよく飲まれるイギリスやドイツなどで造られます。つまり、お酒の種類と同じ数の酢があるということです。

ちなみに黒酢は玄米が原料です。 酢の産地は西日本に多く、醸造元それぞれにこだわりの造り方があります。京都の飯尾醸造の富士酢は無農薬の米をぜいたくに使っています。

鹿児島の「坂元醸造」の黒酢は、5万本超の壺で造っています。壺に蒸し米、地下水、米麹を入れて1年以上発酵・熟成させるのです。太陽熱で壺が温められ、中に対流ができ、酢酸菌によってアルコールが酢酸になり、酢ができます。精白していない米にはぬか部分があるので、黒くなるのです。一つ一つの壺を管理し、手間がかかっているため、酢の出来には安定感があります。壺には酢酸菌がすみ着いているので、種菌を添加しなくても上質な酢ができます。

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黒酢の熟成が進む壺。坂元醸造には5万2千本の壺がある。

 


【抜粋】毎日が発見_7月号_紙版_ページ_015_画像_0002.jpg壺の表面に浮いた酢酸菌の膜。

 
【抜粋】毎日が発見_7月号_紙版_ページ_015_画像_0003.jpg壺にじょうごを使って蒸し米を入れる様子。これに地下水、米麹も加える。

 

また、でんぷん質がある食材なら、酢はできます。このため、地域の特産品を使った酢が造られています。梨やいちご、紫いもなどをアルコール発酵させ、酢酸菌を加えて酢にします。特殊なものでは、レタスやキャベツの酢もあります。これらはアルコールを添加しています。

 

アミノ酸をたっぷり含む酢。1日15ml摂取で毎日元気に

酢にはアミノ酸が多く含まれますが、中でも米が原料のものには特に多く含まれています。黒酢に多く含まれるグルコン酸は、腸内細菌の栄養になり、腸内環境を整えます。

どの酢にも酢酸は4.2~4.5%含まれていて、主な効用は、次の3点です。

1.血管を拡張して血圧を下げる
2.グリコーゲンの再補充を促進し疲労回復に効果がある
3.代謝を良くし、内臓脂肪を減らす

このため、1日15mlぐらい摂るといいといわれています。
微量ですが、ペプチドも含まれます。ペプチドにも血圧の上昇を抑える効果があります。

酢はカルシウムを溶かすので、酢で調理したものはカルシウムの吸収が良くなります。しじみのみそ汁に酸を感じないくらいの少量の酢を入れると、しじみのカルシウムが溶け出して汁のカルシウム量が増えるという実験結果もあります。

また、この性質を掃除に利用することもできます。そのほか、除菌効果、殺菌効果もあり、まな板などは、使う前に酢でふくと、清潔に使えます。冷蔵庫の中など食品の近くを清掃する際にも、有効です。

酢は、油にも水にもなじみやすい調味料です。健康効果も報告されている身近な健康食品なので、毎日、少量でも料理に使ってみましょう。

 

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撮影/吉田篤史 写真提供/坂元醸造

 

<教えてくれた人>

前橋健二(まえはし・けんじ)さん

1969年生まれ。東京農業大学大学院農学研究科醸造学専攻修士課程修了。東京農業大学教授。醸造食品や調味料のおいしさと味覚を研究。共著書に『旨みを醸し出す 麹のふしぎな料理力』(東京農大出版会)。

この記事は『毎日が発見』2019年7月号に掲載の情報です。

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