「最近、なんだか眠れない」と悩んでいませんか? 1万人を治療した睡眠専門医の白濱龍太郎さんは、眠りを妨げる原因の一つは「いびき」だと、言います。その白濱さんが新提案する「いびき改善メソッド」が集約された著書『睡眠専門医が考案した いびきを自分で治す方法』(アスコム)から、いびきを治す方法をご紹介します。
舌の筋トレのすごい効果
いびきの悩みを抱える皆さんに真っ先に実践していただきたいのが、いびき解消メソッドのSTEP1です。
筋トレで舌の筋肉を鍛えることによって、舌根沈下の抑制を目指すのです。
現状よりも舌を強化できれば、寝ているときでも舌がのどの奥に落ちずに、口の中にとどまってくれやすくなります。
いくら舌の筋肉を鍛えても、寝ているときには身体中の力が抜けてしまうから、あまり効果がないんじゃないの?
そんな疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、心配には及びません。
2009年に、ブラジルのサンパウロ医科大学の睡眠研究チームが、舌(を中心にした口周り)のトレーニング(本書でいうところの舌の筋トレ)を続けることが、いびきの軽減につながることを突き止め、その研究の成果を論文で発表したのです。
現在では、医学的に効果が認められる行為であると認識されています。
この研究チームは、睡眠時無呼吸(いびき)の悩みを抱える31人のモニターを集め、なにもしない15人のグループと、舌のトレーニングを継続して行う16人のグループに分類。
この16人のグループには、舌の運動、発音、顔の筋肉を動かす運動などを毎日決められた時間・回数行ってもらいました。
そして3カ月後に効果を測定したところ、運動を行ったグループでは、実に39%の人々が、この舌のトレーニングを実践する前よりも、睡眠時無呼吸(いびき)の症状が軽減されたそうです。
(Guimaraes KC et al,Effects of oropharyngeal exercises on patients with moderateOSAS Am J Respir Crit Care Med 179,962-966 2009)
舌を中心としたトレーニングが、口蓋咽頭(こうがいいんとう)および口蓋舌筋(こうがいぜっきん)の筋線維(きんせんい)を増加させ、舌の姿勢が上気道構造に大きな影響を与えることを確認し、いびきの頻度、いびきの強さ、無呼吸指数(1時間あたりの10 秒以上の呼吸停止回数)、レム睡眠中の無呼吸低呼吸指数(1時間あたりの10秒以上の異常呼吸回数)、日中の眠気(ESS:Epworth)が改善され、睡眠の質(Pittsburgh questionnaire)が飛躍的に向上したことを証明してみせました。
毎日続けることで、舌は強くなる
私はこの論文を参考に、「誰でも抵抗なく毎日実践できること」と、「オリジナルの方法と変わらない効果が見込めること」を意識し、簡略化したアレンジバージョンを考案しました。
それが、いびき解消メソッドSTEP1の舌の筋トレです。
あれもこれもとなると、なかなか続けられなくなってしまいますので、必要かつ十分というギリギリのラインを念頭に置き、左記5つの運動に絞り込みました。
①舌の前後運動
口を開けて舌を前に突き出して5秒キープ、ひっこめて5秒キープ(ひっこめるときは舌の先端を上の歯の裏にくっ付けて、そのまま後ろに引っ張る感じで)を3セット繰り返す。
②舌の上下運動
口を開けて、舌を上あご(なるべく口蓋全体)に押し付けて10秒キープ、舌を下あご(口腔底-こうくうてい)に押し付けて10秒キープを3セット。
③舌の回転運動
口を閉じたまま口の中でゆっくり舌をぐるっと回転させる(3回)。舌で歯の表面と歯茎を舐めまわす感じで。
④舌、あごの運動
口を大きく開けて「あーいーうーえーおー」と言いながら、顔と口の筋肉を大きく動かす。これを3回繰り返す(※舌やあごを痛めないように、無理のない範囲で)。
⑤頬の運動
口を閉じて頬を大きく膨らませて5秒キープ、すぼめて5秒キープを3セット繰り返す。
伸ばす、縮める、曲げる、広げる、回すなど、いずれも舌に適度な負荷をかけて筋肉の強化を促進してくれる動きです。
個人差はありますので、実践した誰もが劇的な変化を遂げるとは言い切れませんが、この5つの運動を一定期間継続すれば、かなりの確率でいびきの軽減をもたらしてくれるでしょう。
この舌の筋トレは、毎日コツコツ積み重ねて行うことがなによりも大事ですので、一日のなかの、どの時間帯にやっていただいても構いません。
ただ、就寝前のほうがルーティンとして習慣化しやすいと考え、本書では夜に行うことを推奨しています。
お布団に入る直前でも良いですし、歯磨きの後、あるいはお風呂に入っているときでもOKです。
ちなみに、医療先進国のアメリカでは、自分の意思に関係なく強制的に舌を動かすことにより、気道を開存させる方法が生み出されています。
具体的にいうと、ペースメーカーのような刺激電極を舌に埋め込んで、寝ているときに呼吸と同期し、電気的な収縮を起こすシステムです。
舌下神経への電気刺激によってオトガイ舌筋群を収縮させ、気道を開存させます。
日本ではまだまだ一般的ではありませんが、非常に画期的な方法ですので、私も自分のクリニックで導入できるかどうか検討しているところです。
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