「鼻うがい」をやってみたい人に。市販の「鼻うがい」の器具の選び方

皆さん「鼻うがい」って聞いたことありますか? 医学博士・堀田修先生は「上咽頭のウイルスを洗い流してくれるこの『鼻うがい』こそ、ウイルスなどの感染予防の新定番になるはず」と言います。そこで、堀田先生の著書『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)より、鼻うがいのチカラや、「痛くない」「手軽な」やり方をご紹介します。

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市販の鼻うがい器具を利用する

「上咽頭洗浄」は、頭を60度くらい後ろに傾けて、スポイトなどを用いて両方の鼻にそれぞれ1~2回、2~4mlの食塩水を注入すればいいので極めて簡単です。

市販されているものでは、30mlほどの点鼻容器が便利でしょう。

上咽頭のケアが目的であれば上咽頭洗浄で問題ないのですが、新型コロナウイルス感染症対策のためには、鼻腔もしっかり洗う本格的な鼻うがいがより効果的といえます。

本格的な鼻うがいをするには、100~250mlの食塩水が必要です。

鼻うがい容器は、100円ショップやインターネットなどでドレッシングポットとスポイトを購入して、自分で作れば安上がりです。

関連記事:ウイルス対策にも! 知っておきたい「お手軽鼻うがい」と「本格鼻うがい」2つのやり方

自分で作るのは面倒だという人は、市販されている鼻うがい器具を活用しましょう。

現在、さまざまなタイプの鼻うがい器具が販売されているので、自分に合ったものを選ぶことができます。

鼻うがい器具を選ぶときのポイントは容量です。

容器に入れられる食塩水の量によって「低容量(100ml以下)」「中容量(100~200ml程度)」「高容量(200ml以上)」の3つに分けることができます。

私がおすすめする8種類の鼻うがい器具を、容量ごとに3つのグループに分けて、それぞれの特徴と私自身が実際に使ってみた感想も加えて解説します。

3つのグループ分けは次の通りです。

①低容量:ハナノアa(20ml)、ハナノアb シャワータイプ(50ml)
※いずれも1回の使用量

② 中容量:ナサリン(60ml×2)、ハナクリーンS(150ml)、ハナオート(190ml)

③ 高容量:フロー・サイナスケア(200ml)、サイナス・リンス(240ml)、EMSハナ通り(250ml)、ハナクリーンα・ハナクリーンEX(各300ml)


市販されている鼻うがい器具とその特徴

【器具商品名(製造販売)】ハナノア※(小林製薬)
【容量】20ml(a)、50ml(b)
【タイプ】ハンディタイプ

【器具商品名(製造販売)】ナサリン(エントリージャパン)
【容量】60ml
【タイプ】注射器型ピストン式

【器具商品名(製造販売)】ハナクリーンS ※(東京鼻科学研究所)
【容量】150ml
【タイプ】ハンディタイプ

【器具商品名(製造販売)】ハナオート※(日光精器)
【容量】190ml
【タイプ】電動式(3段階水圧調整)

【器具商品名(製造販売)】フロー・サイナスケア(フロー・サイナスケア)
【容量】200ml
【タイプ】ハンディタイプ

【器具商品名(製造販売)】サイナス・リンス(ニールメッド)
【容量】240ml
【タイプ】ハンディタイプ

【器具商品名(製造販売)】EMS ハナ通り(名優)
【容量】250ml
【タイプ】ハンディタイプ

【器具商品名(製造販売)】ハナクリーンα、ハナクリーンEX ※(東京鼻科学研究所)
【容量】各300ml
【タイプ】ピストン式

※=日本製


低容量= 手軽に使えるのがメリット

「ハナノアa」「ハナノアb シャワータイプ」

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低容量の鼻うがい器具には、「ハナノアa」(20ml)と「ハナノアb シャワータイプ」(50ml)(いずれも小林製薬株式会社)の2種類があります。

鼻腔と上咽頭をしっかり洗うという点では「ハナノアb シャワータイプ」が優れています。

これらの鼻うがい器具は容量が少ないので、上咽頭を洗うためには強めの注入圧で洗浄液を押し出すことがポイントです。

なお、どちらも副鼻腔の洗浄には容量が足りないため、慢性副鼻腔炎の補助療法には向いていません。

高容量の鼻うがいでしばしば見られるような、鼻うがいの後に洗浄液が鼻腔にタラーッと流れてくる違和感は少ないでしょう。

ハナノアのメリットは、何といっても低容量ならではの使いやすさです。

1日何回使用しても苦になりません。

特に「鼻うがいは怖い」という初心者にはおすすめです。

「ハナノア専用洗浄液 レギュラータイプ(500ml)」という洗浄液も販売されています(洗浄器具は付いていません)。

ミントの香りがして使用感が良く、花粉症対策として優れていますが、価格はやや割高です。

風邪予防のために毎日使用するのであれば、自分で食塩水を作るのがおすすめです。

1回分は水50mlに対して食塩0・5g(親指と人差し指で塩ひとつまみ)が目安です。

ちなみに水50mlに対して食塩約1g(親指・人差し指・中指の3本の指で塩ひとつまみ)を溶かせば、約2%の高張食塩水になります。

中容量= 使いやすい工夫が魅力

「ナサリン」

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「ナサリン」は、スウェーデンで開発された注射器型の鼻洗浄器です。

大人用が60ml、子ども用が35mlという容量です。

メーカーの推奨は片方の鼻2回ずつですが、風邪予防には左右それぞれ1回ずつで十分でしょう。

注射器型でピストン式のため、注入圧が自分で調節できます。

ピストンの先端部がやわらかいシリコン素材でできていて、鼻孔に入れたときの密着性に優れています。

鼻うがい器具の中では唯一の注射器型で洗浄液が逆戻りせず、使用感はほかの鼻うがい器具と一線を画します。

子どもは、このタイプのものが興味をもちやすいかもしれません。

鼻うがい器具としては非常に優れていますが、それだけにやや値段が張ります。

「ハナクリーンS」

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「ハナクリーンS」(150ml)は、細部にわたって工夫が施されています。

例えば、ボトル内の洗浄液の温度が分かるようにボトルに温度計が付いていたり、ノズルが収納できるなど。

ノズルの先端も日本人の鼻孔に合わせたサイズで、外国製に比べると小さめで使い勝手はかなり良いです。

ただし、慢性副鼻腔炎対策としてはちょっと中途半端な量です。

一度に2回鼻うがいを行えば、理屈のうえでは超高容量相当の300mlになりますが、その場合は1回目と同じ範囲をもう一度洗っているだけ、ということになります。

また、専用の洗浄剤として「サーレS」が販売されています。

150mlの温水に「サーレS」1包を溶かして使います。

「サーレS」の成分は塩と香料(メントール、ペパーミント)で、重曹は含まれていません。

この「ハナクリーンS」と先ほど紹介した「ハナノアa」「ハナノアb シャワータイプ」は日本製で、いずれも洗浄剤(液)に香料が含まれています。

海外製の鼻うがい器具に付属する洗浄剤には、香料は含まれていません。

日本の鼻うがい器具メーカーが「鼻づまり対策(爽快感)」を強く意識して商品開発していることがうかがわれます。

この鼻うがい器具も品質はお墨付きですが、それだけに価格はやや高めでしょう。

「ハナオート」

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鼻うがい器具は、手でボトルを押したりピストンを押したりするタイプが一般的ですが、電動タイプの鼻洗浄器として「ハナオート」があります。

これは3段階の水圧調整が可能で、連続した水流(約20秒)による鼻うがいができます。

付属のスプーン1杯分の食塩を水に溶かして洗浄液を作ります。

細い水流で鼻の奥のつまっている場所を集中して洗浄でき、花粉症など「鼻づまり」のユーザーを念頭に置いている印象です。

水圧を第2段階以上にすると上咽頭も洗浄できます。

「ハナオート」の容量は190mlです。

「ナサリン」や「ハナクリーンS」など、ほかの中容量の器具に比べれば容量が大きめですが、副鼻腔の洗浄には向いていないため中容量の鼻うがい器具と位置づけて良いと思います。

電動式ながら軽量で、持ち運び可能なほどコンパクトなサイズです。

日本製の鼻うがい器具に共通していえることですが、ノズルの先端が外国製に比べて小さめなので、日本人の鼻にはフィットしやすくなっています。

高容量= 副鼻腔炎にも対応できる

「フロー・サイナスケア」

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「フロー・サイナスケア」(200ml)は、オーストラリア製の鼻うがい器具です。

オーストラリアでトップシェアを誇り、使いやすさが特徴です。

開口部は、次に紹介する「サイナス・リンス」に比べて大きく作られています。

間口が大きいと洗浄剤が入れやすく、使用後の洗浄が簡単でボトル内部の乾燥が早いというメリットも。

その反面、ボトルからの圧がキャップの先端に集中するため、キャップを閉めるときにボトルをしっかり握ると、キャップの先端から洗浄液が漏れ出てしまうので注意が必要です。

これくらいの容量があれば、副鼻腔も十分に洗浄できます。

なお、鼻うがいをした後に副鼻腔に洗浄液が残っていると、前屈して頭の位置を下げたときに頭の奥に違和感が出ることがあります。

時間がたてば自然に流出してしまいますが、ベッドに横たわったときなどに鼻腔にタラーッと流れてきたら、一度ティッシュで鼻をかめば問題ありません。

洗浄剤は、1回の鼻うがいにつき1包で、塩に重曹と乳酸が入っています。

別売の洗浄剤は自分で食塩水を作るよりも割高ですが、ほかの鼻うがい器具でも使えるので便利です。

「サイナス・リンス」

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「サイナス・リンス」(240ml)はアメリカ製で、子ども用(120ml)も発売されています。

こちらもアメリカでトップシェアを誇る製品だけあり、使いやすいと思います。

高容量なので副鼻腔を洗浄できますが、「フロー・サイナスケア」と同じように、鼻うがいをした後に前屈して頭の位置を下げると頭の奥に違和感が出ることも。

これは副鼻腔に洗浄液が残っているためです。

時間がたてば自然に流出しますので問題はありません。

洗浄剤は、1回の鼻うがいにつき1包で、洗浄剤のみでも販売されています。

塩と重曹が入っており、ちょっと割高ですが、ほかの鼻うがい器具でも使えます。

「EMSハナ通り」

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ドイツ製の「EMSハナ通り」は、鼻孔に入れるノズルがボトルの下に付いていて、自然圧を利用して低圧でゆっくりと鼻を洗浄します。

鼻腔と副鼻腔に広く洗浄液を行き渡らせるには、低圧の方が良いという海外の論文もあります。

また、ボトル本体を握ると、強い圧を加えることができます。

慣れると問題ありませんが、強い注入圧での鼻洗浄に慣れた人にとっては、最初のうちは自然圧を利用する低圧の鼻洗浄には物足りなさがあるかもしれません。

「ハナクリーンα」「ハナクリーンEX」

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どちらも高容量では唯一のピストンタイプの鼻うがい器具で、手で持つか置いて使います。

ピストン式なので安定した水圧が得られて、どちらも容量が300mlと大きいため鼻を十分に洗浄できるのがメリットです。

特に花粉症の人や副鼻腔炎対策に向いていると思います。

デメリットは、置いて使う場合は設置場所が必要、パーツが多く他の鼻うがい器具に比べると手入れに手間がかかる、長いゴムチューブの中まで乾かすことが困難なことなどです。

本格的な鼻洗浄をしたい人向きで、価格も高めです。

新型コロナウイルス感染症を含めた風邪予防を目的として、毎日・いつでも・どこでもできる手軽に鼻うがいをしたい人には向かないかもしれません。

私の鼻うがい法は「複数をうまく使い分け」

ここまで、さまざまな鼻うがい器具について説明してきました。

海外では、高容量・高張食塩水を推奨する傾向がありますが(PiromchaiP2019)、どれが良いかは使用する目的で違ってきますし、個人の好みによっても異なります。

実際、複数の鼻うがい器具を使ったことがある患者さんに聞いてみても、最終的に選択した器具は人それぞれです。

価格も商品によってかなり違いますので、結局はその人のニーズに合ったものを選ぶのが良いと思います。

とはいえ、この本のテーマは「鼻うがいで新型コロナウイルスなどの風邪ウイルス感染を予防する」ことですので、そのためには「手軽に・違和感なく・安価で」毎日行えることが重要でしょう。

鼻うがいで新型コロナウイルス感染症を予防できるという明確なエビデンスは、まだありません。

現時点で、新型コロナウイルス対策としてどんな鼻うがいがベストなのかという正解はないのですが、参考として私自身が現在行っている方法を紹介します。

私は無精者なので、洗浄剤は市販で手軽なサイナス・リンス(240ml)用のサイナス・リンスリフィルを使用しています。

容器は、朝は原則として低容量、夜は入浴時に中容量で鼻うがいをしています。

また、私は1日に100人を超えるたくさんの患者さんと接してEATの治療を行っています。

これだけ接触が多いと感染リスクの高い毎日を過ごしていることになるので、生理食塩水ではなく高張食塩水での鼻うがいをしています。

低容量鼻うがいの場合は2分の1包(約2・4%食塩水)、中容量鼻うがいの場合は1包(約1・6%食塩水)を使用しています。

私は原則として1日に2回鼻うがいを実施していますが、職場であるクリニックには高容量の鼻うがい器具を常備していて、EATなどの治療中に患者さんの飛沫を浴びたときなどは、すぐに高容量で鼻うがいを行うようにしています。

【まとめ読み】『痛くない鼻うがい』記事リスト

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簡単鼻うがいで、感染症からしっかり身を守れる方法を、6章にわたって分かりやすく解説

 

堀田修(ほった・おさむ)
防衛医科大学校卒業、医学博士。医療法人モクシン堀田修クリニック院長、認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表、日本腎臓学会評議員。

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『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』

(堀田修/KADOKAWA)

新型コロナウイルスを撲滅するのは難しく、「いかに感染を防いで共存するか」に注目したいこの時代。マスク、手洗い、密を避ける、換気といった従来の予防策に加え、上咽頭のウイルスを洗い流してくれる「鼻うがい」こそ、感染予防の新定番になるはず。withコロナ時代における、注目の一冊です!

※この記事は『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(堀田修/KADOKAWA)からの抜粋です。
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