「2人に1人がかかる」と言われるほど身近な病気である「がん」。ただ、断片的な情報は知っていても、検診や予防、基礎知識など「実はよくわかっていないのよね」という人も多いのではないでしょうか? そこで「がんにまつわる気になる疑問」を、最新の知識を備えたがん治療のスペシャリスト・明星智洋先生に尋ねた注目の新刊『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)から一部を抜粋、最新の「がんの知識」を連載形式でお届けします。
見つけやすいがん、見つけにくいがん
――検診をしていても発見しづらいがんってあるんですか?
明星先生 はい、残念ながらがんには検診などで比較的発見しやすいものと、しづらいものがあります。たとえば大腸がんは早期発見しやすいがんの一つで、大腸カメラをして1年前には異常がなかったのに、今年いきなりがんが出てきた、ということは稀です。たいていは小さなポリープから徐々に大きくなり、悪性のがんになっていきます。つまり定期的な大腸カメラを行っていれば大腸がんの早期発見は可能です。
――大腸がんは見つけやすいんですね。胃がんはどうなんですか?
明星先生 胃がんに関しても基本的には発見しやすいです。ただし、スキルス胃がんといわれるⅣ型胃がんの場合は進行が早く、毎年胃カメラをやっていても発見できないことがあります。
――えっ、胃カメラでも発見できないんですか!?
明星先生 胃がんの中でも10%ほどの珍しいがんなのですが、やっかいなことに初期段階では潰瘍などわかりやすい症状が確認できないことがあります。そのため、気づいたときにはがんが進行して転移していた、ということの多いがんです。
――怖いですね......症状でわかったりしないんですか?
明星先生 胸焼け、下痢、胃の不快感や食欲不振、また急な体重の減少があることもあるので、おかしいなと思ったら受診をおすすめします。
――他にも見つけづらいがんにはどんなものがあるんですか?
明星先生 代表的なものはすい臓がんや胆管(たんかん)がんです。腹部超音波ではなかなか見つけることができず、造影剤という薬剤を入れた「造影CT」で初めて発見できるようなものです。がんが進行するまで症状があらわれにくく、黄疸(おうだん)が出てやっと診断されることが多くなります。
――早く気づくにはどうすればよいでしょう?
明星先生 定期的なCTと腫瘍マーカーのチェックが必要になってきます。
――CT検査じゃないと見つからないがんは多いんですか?
明星先生 はい、たとえば肺がんも会社の健診で行うような通常の胸部レントゲンでは腫瘍がそれなりに大きくなってからでないと写りません。腫瘍が数ミリ程度の小さいうちに発見するためにはCT検査が優れているんです。ちなみに肺のCTだけだったら5分以内に検査は終了します。
――5分で! 早いですね。
明星先生 喫煙者などリスクが高い方は、ぜひ毎年受診することをおすすめします。ちなみにですが、急性白血病は発症してから1~2週間で悪化する進行の極めて早いがんです。
――たったの1~2週間ですか!?
明星先生 はい。このような疾患の場合は、毎年検診を受けていたとしても早期発見はできません。体に不調が出た場合には、ただちに受診をしてください。
【まとめ】
すい臓がん、胆管がん、Ⅳ型胃がんなどは見つけづらいが、毎年の腫瘍マーカーやCTで発見確率は上がる。ぜひ定期検診を!
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