老後資金に「2000万円の準備を...」と言われても、すぐに作れる人はなかなかいません。そこで、社会保険労務士歴20年の岡久さんが著した『2000万円もってないオレたちはどう生きるか―60歳からのリアル』(自由国民社)から、老後の不安を解消できる60歳からの生き方のヒントを連載形式でお届け。人生のシミュレーション、今こそやるべきです。
老化の最大の原因は「糖化」だった
これまでは体を老化させるものとして、「酸化」があげられてきました。体内の「活性酸素」によって細胞が損傷して老朽化していくという説です。酸素は生きていく上で不可欠なものですが、体内に取り入れた酸素の二~三パーセントが活性酸素に変化します。
その活性酸素によって細胞が攻撃されると、細胞膜の脂質が「酸化」し、栄養と老廃物の交換がスムーズにできなくなります。また、細胞の核が損傷すると細胞が死滅したり、LDLコレステロールが酸化されると血管の老化を招きます。
このように活性酸素は細胞を傷つけたり酸化させたりして、老化を促進するということがわかっています。簡単に言うと「酸化」とは「サビ」のことで、体内を錆びつかせることになるというわけです。
酸化と同時に起こるのが「糖化」という現象で、最近より悪い影響を与えるということがわかってきたのです。
「糖化」とは簡単に言うと「コゲ」という意味で、体内が焦げ、タンパク質と糖質が結びついて劣化すると考えられています。
さらに「糖化」によって、「AGE」という悪玉物質が体内に大量に作られるとされています。この悪玉物質は全身のあらゆる個所に老化の害をまき散らします。
肌のシミやシワ、くすみだけではなく、がんや動脈硬化、骨粗しょう症、白内障からアルツハイマーまですべてAGEが原因のひとつとなっているのです。
活性酸素より怖い老化の元凶「AGE」
「AGE」(Advanced Glycation End-Products)は「終末糖化産物」と訳されますが、ブドウ糖などタンパク質と結合して生まれる物質の最終反応物のことで、高熱が加わると大量に生産されます。これが老化の元凶として確認されていて、その影響力は活性酸素をはるかに上回るといわれています。
AGEは食品にも含まれており、代表的な料理はから揚げやトンカツ、ステーキ、ホットケーキ、パンケーキ、トーストなど誰でも食べているメニューなのです。
その生成過程はホットケーキなら、小麦粉・卵・牛乳などたっぷりのタンパク質に砂糖が加わり、それをフライパンで"高熱で焼く"ことになり、AGE化しやすくなるのです。見た目はこんがりとフワフワに焼き目ができてとても美味しそうですが、ここには悪玉"老化"物質であるAGEがたっぷり含まれているのです。
このAGEが溜まりやすく老化しやすいのが、コラーゲン繊維という場所です。コラーゲン繊維は肌や関節の軟骨を作る役目があり、いろいろなところにAGEが溜まるとさまざまなトラブルを引き起こします。
血管に溜まれば動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まり、骨なら骨粗しょう症、脳ならアルツハイマーの原因になるといわれています。さらに皮膚に溜まればシワやシミ、たるみの原因になり、髪の毛の場合にはつやが消えてパサパサになってしまいます。
老化の元凶「AGE」は発がんの恐れも有している
老化の元凶「AGE」は食べ物によって含有量が大きく異なります。そこで避けておきたいものを三つ挙げておきます。
1.フライドポテト
2.ベーコン
3.フランクフルトソーセージ
フライドポテトには国際研究機関から発がん性が認められている「アクリルアミド」という物質が含まれています。
アクリルアミドは食材を百二十度以上で加熱すると生ずる成分で、きわめて多くの食材(天然の食材)に含まれているため、これを完全に排除するのは不可能に近いといわれています。
特にじゃがいもやとうもろこしなどの糖質が多く含まれる食品を高温で加熱すると生じるので、極力注意しなければなりません。
アクリルアミドは、国際がん研究機関(IARC)によって「ヒトに対しておそらく発がん性がある」というグループ2Aに分類されているので、老化防止というだけでなく極力食べないほうがよいのです。
調理法や調味料によって「AGE」の量が変化する
ここで食材の選び方だけでなく、調理法にも注意しておかなければならないことがあります。調理のし方によって「AGE」の含有量が大きく変わってくるからです。
もっとも危ない調理法は高温で調理することで、オーブンや窯で焼く料理は要注意なのです。もちろん食べてはいけないというわけではありませんが、その調理法ばかりを使ったメニューを食べ続けていると悪影響があるといわれています。
食材内のAGEを増やさないためには、生で食べるのがベターです。加熱しないと食べられない食材でも、「低い温度で短時間に加熱」が基本で、AGEは加熱の温度と時間に比例して多くなります。
食材別に実例を見ると次のようになります。
・鮭...生→揚げる(二・五倍)
・鶏むね肉...生→煮る(一・五倍)、生→焼く(七・五倍)、生→揚げる(十倍)
・フライドポテト...揚げる(自宅)→外食のフライヤー(二倍)
調理法としては「ゆでる」「蒸す」「煮る」がお勧めで、なぜなら水を使用する料理は百度以上になることはないからです。
味付けにも注意が必要です。調味料の中ではしょうゆや味噌、シーザードレッシングなどにAGEが多く含まれますが、日頃使用する分には問題ありません。
ただし、しょうゆは大豆たんぱく質の糖化が進んでいるので、魚のしょうゆ漬け焼や砂糖も加える照り焼きなどは、一挙に六倍以上もAGEが増加しますので注意してください。また、酢やレモンにはAGEを減らす効果があるので、かけたり漬けたり浸したりして活用するとよいでしょう。
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