初対面の人との会話や大勢の前で話すと緊張しちゃう...それ、演劇の手法で簡単に撃退できます!3万人以上の俳優や声優を指導した演劇トレーナー・伊藤丈恭さんの著書『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』(アスコム)から、「他人と話すことが楽になる」メソッドを連載形式でお届け。あなたを悩ます「緊張」は必ずとることができます。
「自分なんかうまくいくわけない」というネガティブ思考が緊張しないためのコツ
本番前、緊張はどの時点でいちばん高まるのでしょうか。こんなテーマを本気で追究していたら、その時点を迎えるのが本当に怖くなってしまうので、これ以上の追究はしないこととします(笑)。ただ、これまでの経験上、本番前日の夜などは、否が応にも緊張が高まってしまうのは間違いがないところでしょう。
私自身、それなりに準備を尽くしていたとしても、「これで大丈夫」「きっとうまくいくだろう」という気持ちには到底なれませんでした。
そんなとき、どうすれば多少でも緊張がやわらぐのでしょう。
私は「どうせ自分なんかうまくいくわけない」と考えるようにしていました。
なんとネガティブな、と思われるかもしれませんが、そう考えることで、うまくいくかな、どうだろう......などといった葛藤がなくなるのです。「うまくやってやろう」などという向上心は、緊張感をあおるだけです。
ただ、練習だけは何度も何度もしました。同じセリフをひたすら言い続けたりもしました。
私にとって「どうせ自分なんかうまくいくわけない」は、最終結論というよりも、始めるための合図、つまり入口のようなものなのです。
「成功している自分を思い描けばうまくいく」という教えには落とし穴がある
自分を低評価することで緊張の度合いを小さくする考え方がある一方で、逆に「成功している自分を思い描けばうまくいくし、緊張もしない」という教えを耳にすることもあります。
はたしてこの教えはどこまで有効なのでしょうか。本当にこういった心持ちのおかげでうまくいった人っているのでしょうか?少なくとも私の周りにはそういう人はいません。
かくいう私も、成功している自分を思い描いてもうまくいかなかったひとりです。
成功している自分を思い描くと、どうしてもハードルが上がってしまう。気の弱い私はそれだけで「失敗できない」という思いにとらわれ、心も体もガチガチに固まってしまったものです。
また、この教えでは、途中で失敗したときの面倒まではみてくれません。プレゼンテーションにしろヴァイオリンの発表会にしろ、それなりの長さがあります。一か八かの一発勝負ではないのです。ということは出だしはうまくいっても、中盤や後半でミスをしてしまうことも考えられるわけです。
そんなピンチのとき、成功している自分を思い描いている人は、頭が真っ白になってしまうでしょう。
当然、緊張感もいっそう強くなり、「どうしよう!?」という思いが募り、気の利いた対処をすることがむずかしくなるはずです。
要するに「成功している自分を思い描く」という方法は、ミスに対して無防備なのです。
では、途中で失敗したとき、どうすれば新たな緊張に襲われずに済むのでしょうか。私のおすすめは、諦(あきら)めることです。「どうせ自分なんてうまくいくわけない」と。
これまた、なんとネガティブな......と思われるでしょうが、こう考えることで肩などに入った無駄な力がすっかり抜け、緊張とは無縁でいられるのです。
「どうせ自分なんかうまくいくわけない」は、練習中にも効くし、本番にも効くのです。
こう考えて本番に臨めば、ミスが出ても想定内なので、それなりの対処もできるはずです。
ちなみに漢語の「諦」は真理、道理を意味するそうです。つまり「諦める」は、語源的には決してネガティブではなく、物事を明らかにする、詳(つまび)らかにするという意味合いなのです。
これを知ってから、「諦める」はますます私のお気に入りになりました。
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