いったい何を信じたらいいんだ?「がんの代替医療」のクリニックを巡った結果は.../僕は、死なない。

「病気の名前は、肺がんです」。医師からの突然の告知。しかも一番深刻なステージ4で、抗がん剤治療をしても1年生存率は約30%だった...。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。残酷な現実を突きつけられても「絶対に生き残る」と決意し、あらゆる治療法を試して必死で生きようとする姿に...感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。過去の掲載で大きな反響があった本連載を、今回特別に再掲載します。

※本記事は刀根 健著の書籍『僕は、死なない。』から一部抜粋・編集しました。 
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

【前回】「がん宣告から1カ月。まだ生きている」がんに勝つため、僕が辿り着いた場所は...

いったい何を信じたらいいんだ?「がんの代替医療」のクリニックを巡った結果は.../僕は、死なない。 僕は、死なない17.jpg

情報を集めろ

10月3日、セカンドオピニオンの結果を報告するために掛川医師に会った。

掛川医師はがん研有明病院と帯津三敬病院からの返事に目を通すと言った。

「で、刀根さんはどうしますか?当院で治療を続けられますか?」

「もう少し考えさせてください。あといくつか病院を回りたいのですが、また診療情報提供書を書いていただくことはできますか?」

「かしこまりました」

掛川医師はいやな顔もせず、うなずいた。

「2通、お願いします」

今度は代替医療を行なっているクリニックに行くつもりだった。

その一つの候補は、僕が今の食事の参考にしている本を書いたドクターが診ている病院で、彼はたくさん書籍を書いている有名なドクターだった。

そのドクターのいるクリニックにかかるには診療情報提供書が必要、とホームページに書いてあった。

「えー、刀根さんは千葉県にお住まいですよね」

「はい、そうですが」

「もしよろしければ、がんセンターの柏病院をご紹介することもできますよ。ここよりは柏のほうが近いでしょう?」

眉間にシワを寄せたまま、掛川医師は言った。

「ありがとうございます。そうなったときに考えてみます」

掛川医師はきっと誠実でいい人なんだろうな、僕はそう思った。

彼が醸し出している無力感のようなオーラは、彼の誠実さの裏返しのように感じた。

誠実な人だからこそ患者を助けようと一生懸命に努力を繰り返したが、全て跳ね返された。

がんに勝つことはできない。

学習された無力感。

彼の無言のオーラはそう語っているように、僕には感じられた。

「次回の予約は僕のほうから連絡させていただきます」

僕は言った。

「はい、かしこまりました。納得のいくまでお調べください。ただし、なるべく早く治療は始めたほうがいいと思います」

掛川医師は渋い顔をしながらも、うなずいた。

とにかく情報だ。

代替医療のクリニックを回って情報を集めるんだ。

僕は本を書いた医師や生還者の体験談に出てくるクリニックにアポイントをとりまくり、たくさんのドクターたちに会いに行った。

「コロイドヨード」という特殊な薬剤を使っているクリニックのドクターは医師というより天才科学者みたいな感じで、気さくで親切に話を聞いてくれ、自分の治療を説明してくれた。

「やってみなければわからないけど、もし効くとしたら、3カ月くらいかな?」

「3カ月って?」

「うん、あなたのがんならそのくらいで消えるよ」

「ホントですか!」

もしそうなら年明けにはがんが消えていることになる。

「検討します!」

僕はクリニックから興奮気味に出た。

「これはいけるかも!」

と期待はふくらんだ。

帰りに喫茶店で同行した姉に意見を聞いてみた。

「どうかな、僕は、いけると思うんだけど!」

彼女は渋い顔で言った。

「うーん、効く人には効くと思うけど、あなたには効かないと思う」

がーん!

姉は医療関係者じゃないし、ましてやがん治療の専門家でもない。

でも、子どもの頃から妙にカンが鋭く、肝心なときにその直感が外れたことはほとんどなかった。

「うむむ......」

これは姉の言うことを受け入れよう。

がっかりだ。

「オーソモレキュラー」という栄養療法でがん治療をしているクリニックのドクターには、掛川医師が書いてくれた診療情報提供書を持っていき、書類を読んでもらってから話を聞いた。

ドクターは医師というより、やり手のビジネスマンといった雰囲気の人だった。

「がん細胞の栄養源は、唯一ブドウ糖なのです。だから、ブドウ糖を身体に入れない。これ、単純なことなのですよ」

ドクターは大学の講義のように理路整然と解説を始めた。

「食べ物は身体の中で様々な栄養素に分解されます。だから身体の中でブドウ糖に変換されるものを極力減らしていくのです」

「砂糖を摂らないということですか?」

「ええ、もちろん砂糖は厳禁です。他にも糖質の食べ物、お米とか小麦粉、パンや麺類とかも摂りません」

「玄米もですか?」

自分が毎日食べている酵素玄米を思い出した。

「ええ、そうです。玄米も糖質ですからね。他にもりんごやバナナ、にんじんも糖質が高いので、一切摂りません。あ、イモ類もです」

「じゃあ、食べるものがなくなっちゃいます」

「代わりにお肉を食べるのです。動物性のたんぱく質を摂ることで、栄養を摂るんですよ」

「お肉、ですか?いや、でも、どんながんの食事の本でも肉は止めろって書いてあるんですが」

「考え方が違うんですよ。それは古いですね。これからはこちらの考え方が主流になると思いますよ」

「うむむ......」

「刀根さんはボクシングをやられていたのですよね」

「ええ、まあ」

「じゃあ、全然楽ですよ。ボクサーの食事よりこっちの食事法のほうが全然楽だと思います」

「そうなんですか......でも、ゲルソン療法がありますよね。あれって結構実績がありますが、それはどう考えたらいいのですか?」

ゲルソン療法とは、マックス・ゲルソンというドイツ人の医者が考え出した野菜と果物中心の食事療法で、ヨーロッパやアメリカを始め、かなりの歴史と実績を誇っていて、どの食事療法もゲルソンの考え方がベースとなっていた。

もちろん肉食は厳禁だった。

「ゲルソン療法は野菜中心なので普段の食生活に比べてかなりの低糖になります。肉を食べるとか食べないとかそういったことではなく、全体に糖質が制限されるのでがんに効果があるんだと思います。ゲルソン療法をもっと科学的に効率よくしたものが栄養療法だと思ってください」

「そうなんですか......」

「それと当院では食事指導と高濃度ビタミンC点滴を併用して行なっています。ビタミンCはその組成が糖と似ているため、がん細胞が糖と間違って細胞内に取り込むのです。するとビタミンCが酸化をして過酸化水素を発生し、がん細胞が破壊されていくのです。ですから栄養療法でがん細胞を飢餓状態にして、ビタミンCを吸収しやすい状態にするのです」

「なるほど......」

理にかなっている。

「今日、血液検査をしていきますか?」

ドクターが聞いた。

血液検査をするということは、このクリニックで治療を開始することだった。

「ありがとうございます。今日のところはちょっと考えさせてください」

僕はそう挨拶をすると、クリニックを後にした。

今まで信じてやってきた食事法の全く正反対の理論だった。

いったい何を信じたらいいんだろう?

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかるなど絶望的な状況の中で、ある神秘的な体験し、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。ほかの著書に、人生に迷うすべての現代人におくる人生寓話『さとりをひらいた犬 ほんとうの自分に出会う物語』がある。オンラインサロン「みんな、死なない。」および刀根健公式ブログ「Being Sea」を展開中。

この記事は『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』(刀根 健/SBクリエイティブ)からの抜粋です。

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