「ハッピーターン」の亀田製菓がはじめた介護離職者が復職できる「ハッピーリターン制度」/介護破産(22)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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介護経験を武器に新たな職への挑戦を

一度離職した従業員が、介護を終えて再び元の勤め先に戻れる。そんな支援制度が、近年広がっている。

奨学金貸与事業などを担う日本学生支援機構は、介護理由で辞めた職員の再雇用制度を2016年4月にはじめた。介護を終えて職場に戻りたい場合、3年以内だと退職時相当の給与で復帰できる。「ハッピーターン」などで知られる菓子メーカーの亀田製菓は、介護や育児などで辞める従業員が復帰希望を登録できる「ハッピーリターン制度」を2015年11月にはじめた。

「2、3日で勘を取り戻せた」「マニュアルの整備で以前より働きやすい」
こんな体験談が並ぶのは、外食チェーン「すかいらーく」の採用サイト。離職したパートの人たちの再雇用を広げるため、職場に復帰した人の生の声を伝えている。しかし、すかいらーくのように再雇用の仕組みを設ける企業はまだ一部だ。多くの介護離職者は、新たな生活の糧をどう得るかに悩む。

新たな職場でやりがいを見出すためには、新たな仕事探しをどう進めたらよいのだろうか。前出の和氣さんが感じるのは、転職時に年収や肩書のハードルを下げられず、自らチャンスをつぶす人が意外に多いことだ。「再就職の際、前職の肩書や年収などの待遇を比較しないこと。また、知り合いから職を紹介されても、親の年金があるうちは安心してしまうのか、チャンスを逃すケースがあります」

ワーク&ケアバランス研究所の和氣美枝さんは続けてこうアドバイスする。「これまでのキャリアがあればすぐに再就職できそうに思えますが、実際は厳しい。再就職に結びつけるには、『介護者だからできない』を言い訳にしないこと。転職時に誰もが行なうように、自分のスキル(能力)を棚卸しし、何が自分の武器かを客観的に判断することが大事です。むしろ介護経験を武器にして、仕事をステップアップする人もいます」

再就職活動では、面接官から「介護休職中に、あなたは何を会得しましたか」と問われることがある。答えに窮してしまう人もいるが、和氣さんは「介護でもビジネススキルを養うことはできるので、あきらめないで」と助言する。

たとえば、介護中は主治医、ケアマネジャーやヘルパーらたくさんの人と関わる。そうした人たちとやりとりするのはマネジメント能力、親に代わって要望を簡潔にまとめて伝えるのはプレゼン能力だ。介護でもビジネスでも、通じ合うものはある。

異業種へ転職すると前職のスキルは通用しないことが多い。しかし、介護経験を新しい職場で活かせたケースもある。転職先の会社が自分に何を求めているのかを判断し、そのニーズにこたえるために何ができるかを考えることが大切だ。介護経験も積み重ねていくと、実績につながる。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

 

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