育児と介護の家族を支える職場の制度を片っ端から使う/介護破産(20)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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前の記事「認知症の母親を週5回デイサービスに通わせて仕事を続ける方法/介護破産(19)」はこちら。

「仕事は辞めない」という意識を持つ

休暇制度を使って最も辛い時期を乗り越えたのは、ユミコさん(仮名、50歳)。同居の母(享年68歳)が亡くなる2008年までの8年間、介護と育児、そして仕事が重なった。「職場には育児と介護の家族を支える休暇がそろっていたので、片っ端から使いました」(ユミコさん)

母は肝臓病が悪化して入退院を繰り返していた。子どもはまだ小学生と保育園児で手がかかる期間。平日は週2回、18時に終業するとともに病院に直行した。ようやく退院がかなった母だが、介護が必要となる。要介護度は5。平日の週5回、朝昼2回の食事の世話を中心に訪問介護を入れた。夕方は自費でヘルパーを依頼し、母と子どもたちの食事をつくって食べさせてもらった。「元気な頃の母は私が仕事を続けられるように、子育てをサポートしてくれたので、母の介護で仕事を辞めたくなかった。その分、母に恩返ししようと、疲れていても病院通いだけは続けました」(ユミコさん)

病院通いを続けたのは、少しでも多くの時間を母とともに過ごすことが一番の親孝行だと思ったから。病院から帰ってきて遅い食事を取り、母の洗濯物と一緒に洗濯機を回すのはいつも夜中になってしまった。朝は5時半には起床。睡眠不足が続いた。

自宅での介護がはじまってからは、1時間単位で取得できる有給休暇を活用した。おかげで会社を休むこともなく介護を続けることができたという。「『いつでも戻っておいで』という、上司のひとことがなければ、今の私はなかったと思います」
こう振り返るのはマユミさん(仮名、35歳)。

実家に住む父が末期がんと診断された。自営業で母は働き、祖母の面倒を看なければならない。近くに住む姉は子育てに追われている。「父の世話ができるのは自分しかいないと思い込み、会社を辞めて実家に戻りたいと上司に伝えました。父は手術後すぐに抗がん剤治療に入ったので、退院したら介護が必要でした。あと何年生きられるかわからない、といった状況でしたので、できる限りのことはしてあげたいと思い、当時保育園に通う娘を連れて実家に帰りました」(マユミさん)

ところがそのとき、「うちの会社には介護に関する制度があるよ」といって介護休業を勧められた。
ひとまず、介護休業を2か月取得。そのあいだ、家族と父を介護するための態勢を整えた。
仕事の引き継ぎを兼ねたミーティングでも、「いつか自分も同じ立場になるかもしれないから」といって、送り出してくれた。「そのときも職場に迷惑をかけてしまったという思いから、辞めるつもりでいましたが、休みに入ってから上司が『いつでも戻っておいで』とよく声をかけてくださったので踏みとどまりました。その言葉がなければ仕事から気持ちが離れてしまい、本当に辞めてしまったかもしれません」(マユミさん)

会社の制度があっても、「介護はまだ当分先の話だから、詳しいことは理解していなかった」とマユミさんがいうように、社員に認知されていないことがある。会社を辞めないことを前提に、制度を使う風土づくりが従業員の側にも求められる。

 

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

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