認知症の母親を週5回デイサービスに通わせて仕事を続ける方法/介護破産(19)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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「一人暮らしの家を引き払い、母(60代)と住む家を借りました。兄弟が、要介護度が低くても使えるサービスを教えてくれて、そのサービスを利用するために今のところに引っ越してきました」
こう語るのは、ミキさん(仮名、31歳)。都内の病院に理学療法士の管理職として勤務する。母はサービスを利用する5年ほど前に若年性アルツハイマー型認知症と診断された。母の世話をしていた父が脳梗塞で倒れて入院。退院したら母とは実家で同居できないと兄弟で話し合い、独身のミキさんが母を引き取って同居、実家に戻った父は兄弟が面倒を看ることになった。ミキさんが仕事に出ているあいだ、誰もいないミキさんの家に、母を一人で留守番させるのが心配だったが、要介護1でも利用できる介護サービスは「デイサービスに週2回通う程度」と限られている。

にもかかわらず、ミキさんの母親が週5回デイサービスへ通うことが可能になったのは、「小規模多機能型居宅介護」というサービスを利用しているからだ。「小規模多機能型居宅介護」は、2006年度からスタートしたサービス。デイサービス(通い)を中心に、必要に応じてショートステイ(泊まり)、訪問介護(訪問)を組み合わせたケアプランを立てることができる。

利用するには施設に直接申し込み、施設のケアマネジャーと相談しながらケアプランを立てるが、利用料は要介護5でも1か月3万円程度と低料金なのが魅力の一つ。このほかに、食事代や、宿泊代はかかるが、介護者が急な発熱などで世話ができないときなどに、ショートステイを利用するといった使い方ができるのはとても大きい。

ミキさんの一日はこうだ。7時半に出勤してまもなく迎えの車が来て、母は施設で一日過ごす。ミキさんが仕事から戻る19時少し前には母も自宅に帰るようにすることで、母が一人で過ごす時間をなくした。夕食は施設で済ませてくるので、帰宅後に慌てて支度をする手間も省けたという。さらに、土日はほかの兄弟が母の面倒を看て、ミキさんを介護から解放する。「施設ではリハビリを兼ねて、食後の食器の後片付けや針仕事など、家事を行うので母も楽しく過ごすことができて安心です。わたしも息抜きに旅行に行きたいと思ったら、いつでもショートステイを使えるので、とても楽です」(ミキさん)

じつはミキさんは一度、介護離職をしようと辞表を提出したことがある。上司がひきとめ、落ち着くまで介護休業の取得を勧めて、1か月間休養した。そのあいだ、兄弟と話し合い介護のプランを立てた。仕事に復職するときは、いったん管理職の立場から離れて仕事でも負担を減らしてもらった。「わたしの頭のなかは辞めることでいっぱいだったのですが、上司から『こんな制度がある』と勧められたのがよかった。復職してからも、負担のかからない立場で仕事ができるように配慮してくれたのと、同僚も理解してくれたことが大きかった」(ミキさん)

ミキさんが勤める病院を経営する法人では、介護や子育てをしながらでも仕事を続けられるように、人事制度を整えている最中だったという。上司や同僚も、介護について知識があり、家族の負担について理解があったことが幸いしたとミキさんは振り返る。介護離職を食い止めるためには、親の住む自治体で使えるサービスを確認することが大事。「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「小規模多機能型居宅介護」が自宅近くになくても「ショートステイを繰り返し使う方法もある。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

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