「認知症かも...」と思ったときにまず家族がするべきこと/介護破産(13)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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「認知症」とは何かを知っておこう

認知症で最も多いのは「アルツハイマー型」で全体の60%。脳梗塞など脳血管障害によって起こる「脳血管性」、大脳皮質などの神経細胞内に不要なタンパク質がたまる「レビー小体型」の認知症がそれぞれ約15%を占め、三大認知症と呼ばれている。

認知症の症状の一つに「物忘れ」があるが、誰でも加齢にともない記憶力は少しずつ悪くなる。「具体的な内容を忘れる」のは物忘れ、「出来事そのものを忘れる」のは、アルツハイマー型認知症による記憶障害という違いで比較できる。たとえば、冷蔵庫に牛乳を入れておき、「1週間前に買っておいたのを忘れていた」というのは自然な物忘れで、自分が買ったことを忘れていたらアルツハイマー型認知症の疑いがある。

家族が「認知症かもしれない」と思ったら、ふだん診てもらっているかかりつけ医を受診して具体的に心配な点を相談してみよう。より詳しい検査が必要な場合は、かかりつけ医が専門の医療機関を紹介する流れになっている。かかりつけ医がいない場合は、市区町村にある「地域包括支援センター」に相談して、医療機関を紹介してもらおう。

早めに受診させようと急ぐと、頑なになり病院に行きたがらないという声をよく聞く。在宅訪問の医師に来てもらうなどの方法があるので、困ったことがあったら一人で抱え込まないで、必ず「地域包括支援センター」に相談すること。

また、地域の民生委員のなかには認知症の相談に乗ってくれる人が増えている。人と面と向かって話しづらいという場合や、込み入った話はかえって近所の人には知られたくないというときには電話相談が便利。認知症専門ダイヤルを設置する自治体が増えているので、市区町村の広報、ホームページなどで確認しよう。

家族が知っておきたいのは、認知症の人はいきなり何もかもできなくなるわけではないということ。適切な治療を受け、あきらめないで生活力を高めれば進行を遅らせることも十分可能だ。「物を盗られた」などといい出したり、夜間、外に出ていってしまうなど、家族が困る症状が出てきても、適切なケアと医療で改善する可能性がある。

厚生労働省研究班が2012年時点で65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症は462万人、軽度認知障害(MCI)は約400万人と発表した。

MCIとは、記憶障害があっても手助けなく日常生活は送れる状態、つまり認知症ではない状態をいう。たとえば、行き慣れたスーパーでの買い物はできても、一人での旅行は難しい。食事の支度はできても、ビデオ録画などの操作ができなくなるような状態をいうことが多い。

MCIの段階で食事や運動を含めたライフスタイルを改善することで、認知症の進行を遅らせることができる。

 

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
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