【70代のお金プラン】コストを下げて、合わせて生きる/一生お金に困らない(13)

将来の不安を感じさせる「お金」の問題。そんなお金に人生を振り回されないためには、「知恵が必要」だと経済コラムニストの大江英樹さんはいいます。そこで、大手証券会社で長年にわたり個人の資産運用業務に携わってきた大江さんの著書『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』(すばる舎)から、将来の不安をなくせるお金に関する知恵と備えるべき年代別ポイントを連載形式でお届けします。

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70代は「合わせる時代」

70歳は「古希」です。

この言葉は、唐の詩人杜甫の詩に出てくる一節、「人生七十古来稀なり」がその由来で、当時70歳というのは、相当な長寿であったのだろうと思います。

70歳という年齢について、『論語』(孔子の言葉を集めた書物)ではこのように語られています。

「七十而従心所欲 不踰矩」(七十にして、心の欲する所に従えども矩を踰えず:自分の心の思うままに行動しても、人の道を踏み外すことがなくなった)

確かに孔子や杜甫の時代、70歳というのは、まるで仙人のような境地だったのかもしれません。

ところが今や人生100年時代です。

70歳ではとてもそんな境地にはなれないでしょう。

恐らくまだ元気で執着も一杯あるはずですから、心の赴くままに行動すると危ない人がたくさんいるかもしれません。

今の時代やこれからの時代、70代ではどう考えて行動するのが良いのでしょう。

私は70代をひと言で表すと「合わせる時代」だと考えています。

私自身が来年には70歳を迎えるにあたって、そういう考えかたで行動しようと思っているからです。

では"合わせる"とは一体どういうことか?

何に何を合わせるのかを考えてみましょう。

自分の体力に合わせる

現代の70代の人達を見ていると、見た目や体力について恐らく個人差が一番大きいのがこの年代なのではないかという気がしています。

60代までは多少の差があっても概ね元気で、見た目もそれほど変わりません。

80代になってくると今度はかなり体力的にも見た目も衰えが目立ちますから、こちらも逆にそれほど差はなくなっていくでしょう。

でも70代は本当に差が大きいのです。

どう見ても50代ぐらいにしか見えない人もいれば、80代後半ぐらいかなと思うほど老けている人もいます。

人はそれぞれの人生でのさまざまな経験によって、精神的、身体的なダメージなどに違いが出てくるわけですが、それが一挙に表面化してくるのが70代なのでしょう。

したがって、自分の体力に合わせた生活をすれば良いと私は思います。

無理に若者と張り合って活発に活動する必要もなければ、元気なのに年相応に振る舞うべきだとして、おとなしくする必要もありません。

どちらにしても無理をすることはあまり好ましいことではありませんので、この姿勢は70代の生活を送る上では最も基本的なスタンスではないかという気がしています。

自分の容量に合わせる

作家で書誌学者でもある"リンボウ先生"こと、林望氏の著書に『臨終力』(*1)というのがあります。

(*1)林望『臨終力』ベストセラーズ(2011年)

この中で林氏は面白いことを書いておられます。

それは、60歳以降は「貯蓄」ではなくて「減蓄」の時代だというのです。

この考えかたに私は強く共感し、講演する時などではあちこちで引用させてもらっているのですが、「減蓄」とは一体何か?

この言葉は林氏が発明した言葉で、氏の説明によると「資産を蓄えるのではなく、減らすということ、すなわち60歳になったらお金のかからない身軽で質素な暮らしを心がけ、死ぬ時に向かって貯えた資産を次第に切り崩しながら生きていく」ということだそうです。

十分な資産があれば60歳からでも良いでしょうが、今の時代であれば、私はそれを70歳からやっていけば良いのではないかと思っています。

さらに私はこのようにも考えています。

減らすのはお金の蓄えだけではなく、知識の蓄えも減らしていけば良いのではないかと。

つまり自分が今まで経験してきたこと、学んだことで得た知識や知見を若い世代に伝えていくということです。

お金にしても知識にしても、歳を取ってくると、それを受け入れる容量は減ってきます。

もちろんお金はあるに越したことはないでしょうし、減らしていくというのは不安に感じることでしょう。

でもそれまでに自分の終の住処を考え、高齢者施設への入居費用を自分の保有する金融資産で賄い、生活費を公的年金で賄えるプログラムを作っていれば、後はそれほど心配することはありません。

何しろ公的年金は死ぬまで受取れる仕組みだからです。

むしろ年齢とともに活発な活動はしづらくなるので、それほどお金を使うこともなくなるでしょう。

知識や知見も自分が持っていてしっかりと覚えているうちに活用できれば値打ちはありますが、段々そういうものも失われていきます。

つまり自分の容量は徐々に小さくなっていくのです。

それに合わせて若い世代に移転していけば良いと思います。

世の中の流れに合わせる

これは何も「世間に対して何でも迎合しなさい」ということを言っているわけではありません。

どうしても年齢が高くなってくると頑迷固陋になりがちなので、気を付けるべきだということなのです。

世の中はどんどん便利になってきています。

私の両親はもう、とっくに他界していますが、妻の両親は80代半ばで健在です。

今の住まいは遠く離れたところにいるため、せいぜい年に数回しか会うことができません。

そこで両親にはiPadを持ってもらい、ほとんど毎週のようにFacetimeを使って映像での会話を30分程度やっています。

両親も遠く離れた娘との会話は楽しみでしょうし、こちらも顔や姿が見えるので安心です。

こういう新しいツールを利用することについて、歳を取っているからというだけの理由で拒否するのは実にもったいない話です。

いつまでも好奇心を失わず、新しい世の中の流れに合わせることで、楽しく合理的な生活を送ることができますし、生活コストも大きく下がります。

妻の両親の例で言っても、会うことができればそれに越したことはありませんが、毎週のように行き来することは時間的にも金銭的にも大変です。

だからこそ使える便利なツールはどんどん使っていくべきなのです。

「老後が不安」という人のほとんどは恐らく晩年の生活、すなわち70代からの生活とそのために必要なお金に対して漠然と不安を感じているのだろうと思います。

前節でお話しましたが、最も不確実な部分である医療・介護等の資金は退職金や自分が保有する金融資産を取り崩さずに確保しておけば良いのです。

>「保険よりも現金」資産の考え方がガラリと変わる老後の三分法とは

そうすれば、あとは生活サイズの問題です。

ここでお話したように、年齢に応じた「合わせる」生活をすることでそれなりに生活コストを下げていくことも可能でしょう。

しかも社会保険によるさまざまな行政サービスは高齢者になるにしたがって手厚くなります。

ほんのちょっとした生活意識を変えるだけで、年金+高齢期の社会保険によって豊かな70代以降の生活を行うことは十分可能だと知っておくべきでしょう。

【最初から読む】保険に入りすぎてはいけない理由

【まとめ読み】「一生お金で困らない」記事リスト

165-c.jpg前半3章でお金に対する考え方や知識を、後半3章で実際のお金をどう扱うかの具体的な年代別戦略モデルを資産運用のプロが徹底解説しています

 

大江英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャルプラニング技能士。大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金法が施行される前から確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。主な著書に『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版)『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などある。

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『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』

(大江英樹/すばる舎)

お金の持つ本質的な意味と、働き始めてから定年後までの年代別対策法など、「一生もののお金の知識」が身に付く一冊。公的年金と社会保険の真実や、今の生活、老後に必要な具体的な金額もわかります! お金の大原則を知ることができれば、将来の不安は解消されるはずです。

※この記事は『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごし方』(大江英樹/すばる舎)からの抜粋です。

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