お金の専門家「副業はやるべき!」・・・どうして?/一生お金に困らない(8)

将来の不安を感じさせる「お金」の問題。そんなお金に人生を振り回されないためには、「知恵が必要」だと経済コラムニストの大江英樹さんはいいます。そこで、大手証券会社で長年にわたり個人の資産運用業務に携わってきた大江さんの著書『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』(すばる舎)から、将来の不安をなくせるお金に関する知恵と備えるべき年代別ポイントを連載形式でお届けします。

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サラリーマンにとってのパラダイム変化

サラリーマンにとって、仕事とは「会社に仕えるもの」です。

学校を出てから定年を迎えるまでのほぼ40年近くを、仕える先は変わっても"会社の仕事"をこなすことがすべてだったと言ってよいでしょう。

そんな時代の中で「副業」を行うということはどこか会社に隠れてこっそりやるもの、というイメージが強かったことは事実です。

そもそも、多くの会社において副業は禁止されていました。

「そんな余裕があるのなら会社の仕事にもっと精を出せ」とか、「会社の機密について情報漏洩のリスクがある」といったことがその理由でした。

ところが、2019年の3月に「モデル就業規則」の改正が厚生労働省から発表されたことによって、それまでは原則禁止であった副業が会社に事前に届出を行うことで可能となりました。

この背景にあるのは「働き方改革」で、この改正はそうした社会の状況に合わせ、明らかに副業容認へと舵を切ったと言えます。

しかしながら、これによって副業を認める会社は増えつつあるものの、まだ全体では3割強に過ぎない(*5)のが現状です。

(*5)「兼業・副業に対する企業の意識調査」(2019)株式会社リクルートキャリア

さらに一方では、企業側の考えかただけではなく、社員の側にもまだ保守的な傾向が見られます。

私もさまざまな企業で50代の社員に向けたライフプランセミナーでお話をすることがありますが、そんな時、社員のみなさんの声を聞くと「兼業・副業は認められたけど、そんなことをしていたら会社から評価を下げられるのではないか」とか「会社の仕事だけで手一杯なのに、退社後も副業をやっていたら、とても身体が持たない」といった意見も多いからです。

社員のみなさんのそういう気持ちもわからないではないですが、せっかく副業を認めてくれたのであれば、それは積極的に活用すべきだと思います。

5年ほど前に出版され、ベストセラーになった『ライフ・シフト』(*6)という本があります。

(*6)リンダ グラットン・アンドリュー スコット『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』東洋経済新報社(2016年)

この本の副題は「100年時代の人生戦略」というもので、「人生100年時代」という言葉が流行り出したのは、この本がきっかけになったと言ってよいでしょう。

この本が主張していることは単に「長生きするから頑張れ」ということではなく、100年という長い期間を考えると、その間に何度かシフトチェンジをすべきだと私は解釈しています。

つまり年齢には関係なく、人生においては何度かパラダイムチェンジ(根本的転換)をすべきではないかということなのです。

そう考えていくと、「副業」というのはサラリーマンにとってはまさにパラダイムを変えるきっかけになるのではないだろうかと思っています。

まして、不確実な未来に向けて収入の多様化というのは必須であり、そういう観点からも副業はできればやったほうが良いと言えるでしょう。

私が副業を勧める三つの理由

私が副業を勧める最大の理由は、「収入を多様化しておく」ことによって、コロナ禍のような突発的な事態が起きても、あるいは勤めている会社の業績が悪化してリストラに見舞われるといったことになっても生活を維持できる可能性が高いからですが、より強固な多様化は夫婦で別々に稼ぐことでしょう。

しかしながら、リスク管理としての「収入の多様化」という目的以外にも副業をすることでいくつものメリットが出てきます。

(1)自分の好きなことができる

会社の仕事が自分の好きなことと全くイコールであれば、こんな幸せなことはありませんが、多くの場合、そういう人は稀でしょう。

嫌いな仕事とまでは言わないにせよ、指示されたことが気に入らなくても、ある程度の義務感でやらざるを得ません。

ところが、副業の場合は必ずしも嫌な仕事をする必要はありません。

いや、必ずしもどころか、本当に自分の好きなことだけを仕事にすれば良いのです。

例えば自分の趣味を何らかの方法でマネタイズできないだろうかと考えるだけでも楽しいものです。

私の本業は「経済コラムニスト」ですから、経済をテーマとした執筆や講演活動を行っていますが、一方では京都のことを研究したり、京都へ行ったりするのが好きで、京都商工会議所が主催する「京都観光文化検定」の一級資格を持っています。

そんな趣味を生かして今までに何十回も「おとなの京都講座」とか「お一人様の京都」というセミナーを開催しましたし、最近ではお隣の滋賀の文化や観光にも興味を持ち、積極的に出かけるとともに「おとなが楽しむ近江路」というセミナーも開催しています。

(2)定年後に向けた準備となる

副業をやることのメリットの二つ目は、それをやることで定年後に向けた準備ができるということです。

もちろんどんな種類の副業なのかによって変わってきますが、在職中は副業としてやってきたことが、定年後に本業に変わるということは十分にあり得ます。

前述したように副業の多くは「自分がやりたいこと」、「自分の好きなこと」ですから、それがそのまま定年後の仕事として続けられるのであれば、こんな幸せなことはありません。

現実に私の知人でも会社に申請をして、本業の知見を生かしたコンサルティングの仕事をしている人がいますが、彼は定年後も続けて今の副業をやり続けたいと言っています。

少なくとも定年後も同じ会社で再雇用を続けるというパターン化された働きかたよりもはるかに生き生きとして働けるのではないでしょうか。

(3)新しい人脈ができる

会社以外の仕事を副業としてやることによって、それまでになかった新しい人脈ができることも大きなメリットと言えるでしょう。

基本的にサラリーマンの多くは人脈と言っても社内の人しかいません。

もちろん営業関係であれば、社外に知り合いは多くなりますが、そのほとんどは顧客ですから「人脈」と言うには必ずしもふさわしくありません。

広報とか購買部門であれば、外部との接触もありますが、いずれもこちらが依頼される立場ですからフラットな関係にはなり得ません。

ところが副業をやっていく中で、従来とは全く異なる分野の知り合いができ、場合によってはビジネスパートナー化することもあります。

それにもし仮に副業自体がそれほどうまくいかなかったとしても、それによって知り得た人脈が今後の新しい仕事につながるということもあります。

私自身、現役時代の最後は、証券会社とは言っても全く畑違いの年金にかかわる分野でしたので、それまでとは全く異なる分野の人と多く知り合いになりました。

また、外部から講演の依頼や取材の依頼もありましたが、それで得た報酬はすべて会社に納め、自分のポケットには入れませんでしたから、副業とは言えませんでしたが、それでも日常業務とは全く違った仕事を一定割合でやっていたことは確かです。

そして、その頃の人脈が定年後の仕事につながったケースもたくさんあります。

【最初から読む】保険に入りすぎてはいけない理由

【まとめ読み】「一生お金で困らない」記事リスト

165-c.jpg前半3章でお金に対する考え方や知識を、後半3章で実際のお金をどう扱うかの具体的な年代別戦略モデルを資産運用のプロが徹底解説しています

 

大江英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャルプラニング技能士。大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金法が施行される前から確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。主な著書に『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版)『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などある。

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『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』

(大江英樹/すばる舎)

お金の持つ本質的な意味と、働き始めてから定年後までの年代別対策法など、「一生もののお金の知識」が身に付く一冊。公的年金と社会保険の真実や、今の生活、老後に必要な具体的な金額もわかります! お金の大原則を知ることができれば、将来の不安は解消されるはずです。

※この記事は『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごし方』(大江英樹/すばる舎)からの抜粋です。

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